岩波ブックレット(No.742)が発行された。
わたしはこの本が出たら読みたいと思っていたので、
7日に堺へ行く前に買って、新幹線の中で読んだ。
この本には、むずかしい法律関係のことなども、
とても分かりやすく書かれていて、是非紹介したいと思っていた。
数日後、坂本洋子さんからも本が送られてきて、
わたしの手元には、本が二冊になった。
ということで、
一冊は、ともちゃんに「とってもよい本だから読んでね」とプレゼント。
『法に退けられる子どもたち 』
(坂本洋子著/岩波ブックレット NO. 742/2008.11)
多様化する家族の現実に,法は対処できていない.そのために,自分自身では責任のとりようのないことで苦しんでいる子どもたちがいることをご存知だろうか.無戸籍,無国籍,婚外子相続差別──世界各国に比べても,日本の状況は深刻だ.この問題の歴史的背景を探り,子どもたちの立場から法改正の方向性を提言する.
ブックレットだから、税込みで504円と手ごろな値段。
書店でも買えるけれど、この運動に賛同するひとは、
ぜひ 「mネット・民法改正情報ネットワーク」にご注文を!
目次 はじめに
第1章 存在しないことにされる子どもたち
--離婚後300日問題
第2章 国籍を与えられない子どもたち
--無国籍問題
第3章 正統とされない子どもたち
--婚外子差別問題
おわりに
巻末付録 子どもと家族と法をめぐる問題の年表
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11月9日の中日新聞には、坂本洋子さんへのロングインタビュー。
離婚後300日問題による民法改正の議論がたかまっているなか、
とってもタイムリーな記事なので、あわせて紹介します。。
【核心】虚偽記載強制と同じ 離婚後300日問題 『mネット』 坂本洋子代表に聞く 子どものための民法改正を 中日新聞 2008年11月9日 再婚した今の夫の子なのに、離婚後三百日以内の出産だと、前夫の子として戸籍に記載される「離婚後三百日問題」。出生届を出せずに無戸籍となる子どもの不利益を改善しようと、行政の対応は柔軟化しているが、民法の規定は残ったままで、抜本解決には至っていない。早くからこの問題に取り組んできた「mネット・民法改正情報ネットワーク」の共同代表・坂本洋子さんに話を聞いた。 (聞き手、社会部・出田阿生) 「妻の貞操」盾に反対 筋違い ■救済たった1割 法務省は昨年五月、離婚後の妊娠を医師が証明できるケースに限り、救済できるとの通達を出したが、通達後に届け出たのは六百五十件(今年九月末現在)。救済される離婚後の妊娠は全体の約一割にすぎない。 全体の約九割を占める離婚前妊娠が救済されないのが一番の問題だ。 総務省は自治体の判断で、無戸籍児の住民票作成ができるとの通知を出した。厚生労働省は無戸籍の子にも行政サービス提供が可能と通知した。乳幼児健診や児童手当、児童扶養手当などが支給されやすくなったが、担当者の知識不足でサービスを受けられない事例も出ている。 外務省も旅券法施行規則を一部改正し、無戸籍でもパスポートが発給できるようにした。いずれも必要な対応だが、あくまで経過措置にすぎない。 誰が父親なのかは、生んだ母親が一番分かっている。しかも医学が発達し、妊娠日や妊娠日数を証明でき、DNA鑑定でほぼ百パーセント近い精度で父親を特定できる。 前夫の子でないと分かっているのに、父親でない前夫の戸籍に記載する手続きを取らせるのは、(犯罪である)公正証書原本不実記載を行政が強いているのと同じだ。 ■明治時代の遺物 問題の根本は、男性の血統を重視する家制度に基づいた、明治民法の考え方にある。男性は結婚中に妻以外の女性との間に子どもをつくっても「認知」という手続きで父親になれるし、離婚直後から再婚できる。 女性だけが半年間の再婚禁止期間が設けられ、出産も三百日規定で制限される。憲法で両性の平等をうたいながら、女性にだけ離婚後の結婚や性交渉、出産にハードルを設けている。離婚した女性と結婚する男性に対する差別でもある。 子の法的身分を早期に安定させ、父親の養育義務を明確にさせるためにつくられたのが民法七七二条。三百日という期間は明治時代の医学水準で設定された。 法の趣旨を考えれば、一部の政治家が主張する「妻の貞操観念」 といった反対意見は筋違い。本来の立法目的である「子の福祉」のために法改正するべきだ。 私たちは二〇〇七年二月に国会議員を対象に勉強会を開催した。 反応は大きく、公明党がプロジェクト・チーム(PT)を立ち上げ、自民党を動かして与党PTを設立。議員立法で離婚前妊娠も救済する動きが本格化した。 一部政治家の反対で法案提出が見送られているが、離婚前妊娠ケースの救済を今後の検討課題とする与党政調会長合意がされており、今後の動きに期待したい。 ----------------------------------------------- 坂本洋子(さかもと・ようこ) 1962年生まれ。熊本県南関町職員として戸籍実務に携わった後、国会議員政策秘書、情報紙編集長などを務める。2000年、民法改正運動を進める「mネット」を設立。 (2008.11.9 中日新聞) |
坂本洋子さんは、『法に退けられる子どもたち』の案内に、
「・・・・・・・・・本書では、いわゆる「離婚後300日問題」や国籍法による無国籍の問題、婚外子差別問題を通して、「法が描く家族像と、多様化する家族の現実」をジェンダーの視点から問い直してみました。
mネットでは、2005年4月に嫡出推定規定の相談を受けて以来、この問題に取り組んでまいりました。07年2月15日の国会議員の勉強会には、この規定に苦しむ無国籍の子どもと親が出席し、直接救済を求めました。・・・・・・・・・・・・・・・・・
「離婚後300日問題」は前進しましたが、多くの課題が未解決となっています。子どもたちの救済には、更なる法改正が必要です。
本書が、子どもの被る不利益やその歴史的背景を知り、法改正について考えるきっかけになることを期待しています」とよびかけてみえます。
以下は、関連の新聞記事いくつか。
ひとりでも多くの人に、この問題について考えてほしい。
【社会】無戸籍児が戸籍取得 離婚300日規定 DNAで親子認定 2008年10月15日 中日新聞夕刊 離婚後300日以内に生まれた子を「前夫の子」と推定する民法772条の規定のため、無戸籍状態になっている三重県亀山市の主婦小島典子さん(37)の長男悠(はるか)ちゃん(1つ)が戸籍を取得することになった。津家裁の認知調停で現夫の孝さん(46)と悠ちゃんの親子関係が認められ、3人で15日午後に亀山市役所に親子関係の確定証明書や出生届を提出した。 典子さんは2006年11月に前夫と離婚し、243日後の昨年7月16日に孝さんとの間に悠ちゃんが生まれた。亀山市は民法772条にある「離婚後300日規定」を理由に、これまで孝さんを父親とする出生届を受理しなかった。 典子さんは昨年11月、悠ちゃんと孝さんの親子関係を証明するために津家裁に認知調停を申し立てた。調停では、今年9月19日にDNA鑑定による親子関係が認められ、今月7日に確定した。 典子さんは「子どもの戸籍が認められることになり本当にうれしい。けれど世の中にはまだ無戸籍児がたくさんいる。今後も民法の改正を望んでいる」、孝さんは「やっと本当の家族になれたような気がする」と話した。 (2008.10.15 中日新聞) |
婚外子差別違憲 時代に合わせた国籍法に 2008.6.6 岐阜新聞 法律上の結婚をしていないフィリピン人の母と日本人の父から生まれ、父から出生後に認知された子供10人が日本国籍を求めた2件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷が子供らの国籍を認める原告側逆転勝訴の判決を言い渡した。 父母の非婚を理由として国籍を認めない国籍法3条1項について「合理的な理由のない差別」で憲法14条(法の下の平等)に違反すると判断している。 法律上の結婚ができない両親には、さまざまな事情があるのだろう。しかし、何も知らずに日本で生まれ育った子供に、その責任が押し付けられて良いわけはない。最高裁の判断は子供の人権へ配慮した内容であり、高く評価したい。 このように憲法違反と判断された3条1項を放置してはおけない。法務省は違憲判決を重く受け止め、国籍法の改正作業を始める方針を固めた。歓迎したい。 訴えていたのは8歳から14歳の男女で、全員がフィリピン国籍だ。父から認知を受け、法務局に国籍取得を届け出たが、認められなかった。 民法によると、原則的に、法律上の結婚をしている夫婦の子が「嫡出子」として、国籍を取得できる。そうでない両親の子は「婚外子」とされ、その出生後に父母が婚姻すれば、「嫡出子」の身分が与えられる。正式な婚姻を奨励するための制度だと説明されている。 国籍法3条1項は、父母の婚姻、その認知によって「嫡出子」の身分を取得した子の国籍取得について定めている。 この規定によると、父が日本人で母を外国人とする子が誕生後に父から認知された場合、その後に父母が結婚すれば日本国籍を認め、非婚の場合は認めないとされてきた。 この訴訟の背景にある問題点は二つある。一つは国際結婚によって生まれた子供の法的地位だ。国籍法は父親か母親が日本国民であるという血統主義を基調とし、日本との密接な結び付きを示す一定の要件を満たす場合に国籍を認める。 しかし家族生活や親子関係に関する国民意識、国際状況の変化は激しく、もはや3条1項の規定は時代遅れだ。 日本で生まれ、育っている子供たちが日本国籍を持てないことにより就職、結婚などの際に受ける社会的不利益は計り知れない。国籍法の規定は子供らの将来の生活基盤を奪う過酷な措置というべきだ。 もう一つの問題点は嫡出子制度の是非だ。国籍法の規定の仕方は、嫡出子と婚外子とで法的、社会的な差別があることを前提にしている。戦前の家族制度の尾を引く制度だと言ってもよい。 しかしドイツ、スウェーデン、スイスなどは嫡出子、婚外子の名称を撤廃し、父母の婚姻、認知による国籍取得という制度もない。最高裁判決は国際的な状況をも意識した判断といえるだろう。 判決で注目したいのは、3条1項が前提とする「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分」を排除する新解釈をして、子供たちを救済したことだ。法改正を待たずに救済の道を開くという、一種の法創造的な機能を最高裁が発揮したことになる。 これまで、立法は国会の役割だと遠慮してきたのが最高裁だった。しかし積極的な憲法解釈を示して、具体的救済を図るのは、最高裁の本来の姿といえる。 法務省は1日も早く改正作業に着手、時代の変化に合わせた血の通った法律になることを望みたい。 (2008.6.6 岐阜新聞) |
社 説国籍法違憲判決/大法廷でくみ取られたこと 区別ではなく、不当な差別ではないですか。子どもたちはそう問い掛けてきた。 同じ日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれ、日本で育った姉と妹でも、一方は日本国籍を持ち、一方は認められなかった。原告の小中学生10人の中にはそういうケースもあった。 国籍法の規定では、両親が結婚しているかどうかが子どもの国籍取得の分かれ目。自分ではどうしようもなかったことなのに、「婚外子」はさまざまな不利益を受けることになる。 こんな状態は改めるべきだという結論を、婚外子国籍訴訟の判決で最高裁が導き出した。子どもたちの疑問と願いが、大法廷でくみ取られた。 人種、信条、性別などによる差別を禁じた憲法の原則を、どれぐらい意識してわたしたちの普段の暮らしは営まれているか。そんなことにも思いを寄せて判決の意義を読み取りたい。 結婚観や家族についての考え方が多様化している。社会のその流れにも今回の判決は目配りしている。10人の子どもの差別の問題だけではなく、いわば暮らしの原形の変化が映し出されたことにも注目しておきたい。 1984年に設けられた国籍法の現行規定では、日本人の父と外国人の母の間に生まれた子を出生後に父が認知しても、父母が結婚していない場合は日本国籍が認められない。 この区別は現在では、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するというのが判決の結論。「国籍の取得は基本的人権の保障を受ける上で重要な意味を持ち、この差別で受ける不利益は看過しがたい」からだ。 最高裁が着目したのは80年代以降の流れである。「家族生活や親子関係に対する意識の変化や実態の多様化」「婚外子への法的差別を解消する諸外国の法的改正の方向」。国の内と外の変化の中に位置付け直して、「過去の区別」の「現在の差別」への変質を指摘した。 この間、父が日本人で母が外国人の子どもは約5000人(87年)から約1万4000人(2006年)に増えたという。原告の10人に限らない問題の奥行きを感じさせる。 子どもたちの世界での差別やいじめ。何よりも「なぜ違う扱いを受けるのか」と幼心に芽生える自分の存在への悩みを思えば、胸が痛む。法改正の作業を急がなければならない。 日本の最高裁は違憲審査に消極的とされてきた。国会に注文を付けることに慎重すぎるという批判である。大法廷が個別の法律を違憲と判断した判決は8件目。87年の5件目以降は途絶えていたが、02年から今回で3件になったことに、その転換の可能性を見いだしたい。 補足意見の一つではあるが、判決にこんな一節があった。「本来ならば与えられるべき保護を受けることができない者に保護を与えることは裁判所の責務であって、司法権の範囲を超えない」。共感を覚える。 国会の誤りを正す。最高裁が果たすべき役割についての論議が映し出されたことも、記憶にとどめておこう。 (河北新報2008年06月06日) |
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