みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

原爆症救済・国敗訴を受けて認定基準を見直すべき/危険な原発プルサーマル計画:MOX燃料到着

2009-05-30 10:45:10 | 地震・原発・災害
5月28日、原爆被爆者の原爆症認定を求める集団訴訟で、
東京高裁が、ひろく原爆症をみとめた。
これで国は18連敗とのこと。

被爆者はどんどん高齢化しており、亡くなる人も多い。

ごく最近、わたしの関係者も「入市被爆」していた、という
ショッキングな事実を知ったので、他人事とは思えない。
すでに亡くなったそのひとは、原爆直後に広島にはいったことを、
ごく身近な人にしか話していなかったという。

病気やガンで苦しみ続け、「もっと早く知っていればわたしも」と、
無念の思いの人も多いだろう。
薬害肝炎も、原爆症も、表に出ているのは、氷山の一角に過ぎない。
周りの目を恐れて「じつは被爆した」と話すこともできない多くの人がいることを、
わすれないでいたい。


【社説】原爆症認定 見直しも救済も急げ
中日新聞 2009年5月29日

 東京高裁も国の基準よりも広く原爆症を認めた。十八連敗となった国は基準見直しを迫られている。認定拡充は当然だが、高齢となって病気で苦しんでいる被爆者の救済にはスピードが欠かせない。
 原爆症認定却下処分を不服とした被爆者の集団訴訟で、先の大阪高裁判決は国が認めなかった四人を原爆症とする内容だった。二十八日の東京高裁判決も新たに九人を認定した。控訴審に入っても国の連敗は続く。
 地裁も高裁も判断ははっきりしている。東京高裁判決を受けて河村建夫官房長官が認定基準見直しの検討を表明したのは当然だ。
 被爆者は高齢者が多く、裁判だけでなく時間とも闘っている。救済に一刻の猶予も許されない。
 広島、長崎の被爆者は二十五万人余りにのぼるが、原爆症と認定されたのは五千人程度だ。基準のハードルが極めて高く、認められなかった三百六人が二〇〇三年四月から各地裁に提訴した。
 六地裁で立て続けに敗訴した段階で当時の安倍晋三首相が「基準を見直す」と発言し、昨年四月からは新基準に切り替わった。
 新基準は、爆心地からの距離など一定の条件を満たせば、がんなどの五疾病を積極的に認める。
 旧基準と比べると大幅な改善だが、肝機能障害や甲状腺機能低下症などは対象から外された。依然として被ばく放射線量にこだわった厳格な審査が続いている。新基準になってもハードルは高い。
 原爆症と認められれば月十三万七千円の医療特別手当が支給される。国は財政支出を抑えたいし、被爆者援護を拡充すれば、ほかの戦争被害の補償も考慮しなければならなくなる事情もあろう。
 判決の積み重ねにより原爆症と認められる範囲は見えている。国は被爆者団体の意見を聞きながら新基準をさらに広げた「新・新基準」を早急に設けるべきだ。
 基準見直しとともに、認定審査のスピードを上げなくてはならない。現在、八千人余りが審査結果待ちという。申請から三年以上も待っている人もいる。認定まで時間がかかっては被爆者に新たな苦しみをもたらす。審査制度の見直しも避けられない。
 北朝鮮が核実験を行った際、政府は「断じて容認できない」と厳しく非難した。原爆投下から六十四年を迎える。唯一の被爆国として原爆被害の実態を国際社会に訴え続けながら、被爆した国民をいまだに救済できないのは、恥ずかしく、悲しいことではないか。



社説:原爆症救済 政治決断迫られている
毎日新聞 2009年5月29日

 広島と長崎の被爆者が、国を相手取り、原爆症の認定申請を却下した処分の取り消しなどを求めていた集団訴訟の控訴審で28日、東京高裁が原告側勝訴の判決を言い渡した。一連の訴訟は306人が17地裁に提訴して争われてきたが、これで国側は事実上の18連敗である。
 判決は、爆風でガラスの破片を浴びたことに伴う「有痛性瘢痕(はんこん)」と呼ばれる疾病を高裁レベルで初めて認定したのをはじめ、認定基準で積極認定の対象外となっている肝機能や甲状腺の障害も幅広く原爆症と認定。基準外の原告9人を新たに救済する判断を示した。
 認定基準を緩和し、幅広い救済を図るべきだとする司法判断はすでに定着したとみられていたが、今回の判決によって救済対象を広げる流れに弾みがつきそうだ。
 同じ日、厚生労働省は肝硬変などを認定した大阪高裁判決について上告しない、と発表した。法令違反などの上告理由がないためだが、今回の判決についても大きく事情は変わらないはずだ。上告を見送り、すべての訴訟の終結を急ぐべきだ。
 認定基準の再見直しも避けられない情勢となった。政府は敗訴した原告を含めた一括救済には消極的といわれるが、基準の緩和は司法の妥協を許さぬ要請と言える。
 今後は、積極認定の対象を5疾病以外に広げなければならないことは言うまでもない。専門家が個別に総合判断する2段階方式では審査が遅延するなどの問題も生じ、改善が求められていただけに、この際、司法判断に従って、被爆が原因でないことを国側が証明できない限り、一律に原爆症として救済する道を開くべきだ。
 河村建夫官房長官が就任前、与党プロジェクトチームの座長として昨年4月の基準緩和に貢献したことも忘れられない。被爆者の高齢化が進む今、早期救済を目指すことに野党も異論はあるまい。麻生太郎内閣としての政治決断を急ぐべきだ。
 残念ながら政府は戦後、原爆の被害を過小評価するかのように、おざなりな被爆者対策で済ませようとしてきた。被爆者として健康手帳を手に入れることさえ容易ではなく、ましてや原爆症と認定するための基準は厳しく設定されてきた。認定基準は、司法府から批判されるたびに渋々緩和されてきたのが実情だ。
 しかし、今年4月には米国のオバマ大統領が核兵器を使った唯一の核兵器保有国としての道義的責任を明言した。北朝鮮の核実験を批判する声も世界的に高まっている。唯一の被爆国として、核兵器の廃絶を訴えるためにも、被爆者対策の充実は急務である。
(毎日新聞 2009年5月29日)


【社説】「原爆症」高裁判決 積極認定へ政治決断を '09/5/29
中国新聞 2009.5.29

 原爆症認定はどうあるべきか。流れを決定づけると位置付けられていた司法判断も、政府に厳しい内容だった。東京高裁はきのう、一審以上に積極的な被爆者救済を迫る判決を下した。昨年四月に導入された国の新たな認定基準の問題点も指摘している。
 多くの被爆者は、さまざまな病気を抱えている。その原因が放射線によるものかどうか、現代科学でも解明は難しい。
 ならば基準を機械的に当てはめず、関連が否定できない限り原爆症と認定すべきだ。それが一連の集団訴訟で司法が十八回続けて示したメッセージだろう。
 国の責任で保健や医療、福祉対策を講じる―とした被爆者援護法の趣旨にも沿っている。国は基準の再見直しを含め、救済の幅が広がるよう抜本的な対策を急ぐべきである。
 争点は、新たな基準でも認定されていない十人についての判断だった。判決では、肝硬変など九人の病気を原爆症とした。全部で三十人の原告のうち二十九人が認定されることになる。一審の東京地裁が原爆症とした二十一人を大きく上回っている。
 注目されたのは、甲状腺機能低下症と肝機能障害を原爆症と認めるかどうか、だった。新基準でも積極的に認定する疾病から外れていたからだ。高裁は、ともに放射線と関連があると判断した。
 確かに、新基準の導入で、それまでの「ふるい落とす審査」が大きく変わった。実際に原爆症と認定される被爆者が急増し、二〇〇八年度は二千九百六十九件になった。前年度の約二十三倍という数字である。
 それでも被爆者救済の観点から見ると、まだ不十分だ―と司法は指摘しているようだ。
 例えば体内に入った放射性物質が細胞を傷つける「内部被曝(ひばく)」や残留放射線の影響。東京高裁は、認定制度にはそれらを過小評価する危険があり「適格性を欠く」と批判した。一連の訴訟で、各地裁や高裁が何度も指摘した点である。そこを見直さない限り、救済の観点に立った基準はできまい。
 原爆投下から六十四年。広島、長崎に続く三度目の核の悪夢が、繰り返されることはなかった。「ノーモア」を訴え続けた被爆者がいたからこそ、ではないか。身をもって核兵器がいかに非人道的か世界にアピールしたことで可能になったのだろう。
 被爆者たちがそんな歴史的な役割を果たしてきたことは、もっと評価されるべきだ。しかし政府は司法に尻をたたかれないと、なかなか救済に動きださない。しかも後手で小手先が目立つ。そんな対応では、もう済まされない。
 原爆症をめぐる集団訴訟が〇三年に提訴されて六年余り。原告約三百人のうち六十人以上が亡くなった。被爆者の平均年齢も七十五歳を超えた。もはや猶予は許されない。国として、厳しい司法判断にどう応えていくか。思い切った見直しを迅速に進めるには、政治の決断が不可欠だろう。
中国新聞 2009.5.29



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おりしも、
プルトニウムを混ぜたMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料が、
つぎつぎに日本の原発現地に到着する。

ひとたび事故が起きれば、たくさんの被爆者を生み出すプルサーマルの反対運動に、
わたしは、20年ほど前にかかわっていた。
深夜、「夢の」高速増殖炉「もんじゅ」に運び込まれる燃料を載せた
大型トレーラーを追って、名神高速を走ったこともある。
「もんじゅ」の稼動が「夢と消えた」今、各地で稼動する原発で
MOX燃料を燃やして発電しようというのが、「プルサーマル計画」だ。

玄海原発プルサーマル計画:MOX燃料到着 抗議の声よそに搬入/佐賀
毎日新聞 2009年5月24日

 ◇市民団体「悔しい」
 コバルトブルーの船体にさびを浮かべた核燃料輸送船「パシフィック・ヘロン」が23日、九州電力玄海原発に到着した。同原発付近では反対派が待ちかまえ、「MOXを運び込むな」「見切り発車だ」と声を上げた。この日午前中に始まった陸揚げ作業は、同日午後2時半までに終了。「悔しい」。反対運動に取り組んだ市民団体の関係者からため息が漏れた。
 午前5時半すぎ、MOX燃料を積んだ輸送船が朝もやに包まれ、うっすらと姿を現した。
 周囲で海上保安庁の巡視船やボートが警戒の目を光らせる。原発が見渡せる橋や岬に陣取った報道関係者や反対派市民が注視する中、原発敷地内の専用岸壁に近づき、午前6時40分ごろ、九電社員が見守る中、全長約100メートルの船体がゆっくりと着岸した。
 昼前には、約100人の作業員によるMOX燃料の陸揚げが始まった。
 黒い円筒形の輸送容器(長さ約6メートル、直径約2・5メートル)に入れられたMOX燃料は、クレーンで船倉から持ち上げられた。その後、容器はトレーラーに載せられ、放射能漏れがないことを確認したうえで玄海原発3号機建屋に搬入された。
 「長い間、この日が来ないことを願っていた。悔しい」。MOX燃料の陸揚げ準備をする輸送船が見える橋の上で、プルサーマル反対運動に取り組んできた市民団体事務局の清流裕子さん(57)は無念さをにじませた。
 原発ゲート前には、早朝から県内や長崎県などから市民団体が集結。「No!プルサーマル佐賀ん会」共同代表の1人、野中宏樹さん(46)は「使用済み燃料の処理方法も決まっていない中での見切り発車。憤りを感じる」と語気を強めた。
 「プルサーマルと佐賀県の100年を考える会」世話人の吉森康隆さん(62)は「民意と国・県の意向がかけ離れている」と、県の姿勢を改めて批判。玄海原発に近い唐津市呼子町区長会の大森登至郎会長(69)も「どうか住民を守ってもらいたい」と九電側に訴えた。
・・・・・・・・・・・・・ (略) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
==============
 ■解説
 ◇国策の行き詰まり、象徴

 2カ月半の航海の間、武装護衛船に囲まれたMOX燃料はこの日、警察や海上保安庁が警戒する中、玄海原発に運び込まれた。
 今回、九電や国は「核防護上の秘密」として、搬入日時を一切公表しなかった。MOX燃料に含まれるプルトニウムが核爆弾の材料にもなるからだ。
 玄海原発を皮切りに各地でプルサーマルが実施されるようになれば、これまで以上にプルトニウムの移動が頻繁になるだろう。
 プルトニウムはウランより放射線も強く、いったんトラブルが起きれば、市民生活への影響も懸念される。それでも、いつ、どこを通って運ばれるのかという情報は市民に知らされない。私たちは、そうやって電気を得る方法を本当に望んでいるのだろうか。
 プルトニウムは元々、高速増殖炉もんじゅ用の燃料として備蓄が進んだ。日本が保有する使用済み核燃料から分離されたプルトニウムは05年末現在、約43・7トン。だが、もんじゅは95年に事故を起こして以来止まったままで、プルトニウムを使うめどが立たない。プルサーマルは、そのツケ回しとも言える。
 MOX燃料の搬入は、国の原子力政策の行き詰まりと相まって、私たちに重い課題を突きつけている。【関谷俊介】
(毎日新聞 2009年5月24日)



MOX燃料:輸送船が静岡・御前崎の中電ふ頭に着岸
毎日新聞 2009年5月18日

 フランスで製造された「プルサーマル発電」用のMOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を積んだ輸送船が18日午前、静岡県御前崎市の御前崎港中部電力専用ふ頭に着いた。約5キロ離れた同市内の浜岡原発に運び入れる準備が始まり、横断幕を掲げた地元の市民団体のメンバー数十人が「プルサーマルやめろ」と陸揚げに抗議した。市民団体によると、輸送船は午前6時過ぎに港内に入り、同6時半ごろ着岸したという。
 輸送船は英国籍で今年3月5日、日本に向けて仏北部シェルブール港を出港していた。御前崎港が最初の陸揚げ港で、この後、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)向けのMOX燃料をそれぞれの施設に陸揚げする予定。MOX燃料を一般の原子力発電所で燃やすプルサーマル発電は、今秋にも玄海原発で通常運転が始まる見通しにある。【舟津進】

 ◇核燃料サイクル技術未完成、安全性に課題も
 プルトニウムを原子力発電所で燃やす「プルサーマル発電」用の核燃料を積んだ輸送船が到着した。プルサーマル実施について、国や電力業界は「60年代から欧米で行われている方法」として10年度までに16~18基の原発で導入を目指している。しかし、核燃料サイクル技術がまだ未完成で、安全性確認を含め課題は山積している。
 プルサーマルは、使用済み燃料に含まれ、まだエネルギーが出せるプルトニウムを取り出してMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料に加工して使う方法だ。プルトニウムは本来、高速増殖炉用の燃料と想定されたが、原型炉「もんじゅ」の開発が難航。国の「兵器転用可能なプルトニウムは使い切る」との政策を受け、代替策として計画された。
 しかし、使用後のMOX燃料の処理は解決していない。国の計画では、高速増殖炉用の「第2再処理工場」が45年ごろに稼働するまで、各原発の敷地内に長期間貯蔵される計画だが、通常の使用済み燃料より高温で、寿命の長い核分裂物質を含む。大地震などの災害リスク分析も必要だ。
 核燃料の扱いは、海外でも技術的・政治的にさまざまな変遷がある。日本の政策に柔軟性を持たせることも大切だ。【山田大輔】
(毎日新聞 2009年5月18日)


原爆症認定判決と同じ日、
おとなりの「北朝鮮」では地下核実験が行われたという。
このような暴挙は論外だけど、北朝鮮の脅しに大騒ぎしながら、
ひそかに、{核」そのもののMOX燃料を国内に運び込む、とは矛盾ではないのだろうか。

現実として、60年以上たっても消えない原爆症の深刻さと、
チェルノブイリ原発事故の被害の悲惨さを知ったいまもなお、
「核の安全利用」ができると信じている人たちをかえるために、
わたしに何ができるのだろう。


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