みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

イチエフ 廃炉の現場から(飯尾歩)<2>正体不明、所在不明<3>40年の値段はいくら<4>あふれ出る汚染廃棄物

2016-12-16 17:05:04 | ほん/新聞/ニュース
朝ウォーキングに出かけようと思ったら、
外は小雨がぱらついていました。
ウォーキングはお休み。
家のなかの仕事をすることにしました。

きょうは初雪が降ったのですが、
薪ストーブに火を入れたので部屋の中は30度ほど。

湿度が30%以下になったので、
空気清浄器と加湿器に加えて、
机の上に置くタイプの加湿器も出してきました。


ところで、
12月13日から今日まで中日新聞で、
「イチエフ 廃炉の現場から」を4回シリーズで社説に連載していました。
執筆されたのは、論説委員の飯尾歩さん。

福島第一原発の現地からの記事です。

  社説:イチエフ 廃炉の現場から<1> 日常は帰ってくるか
2016年12月13日 中日新聞

時間が凍りついたままの帰還困難区域を抜けて、タンクの森に分け入った。イチエフ。福島第一原発だ。放射能汚染水を保管する約九百基の貯水タンクが、いやでも目に留まる。

 構内の地面の九割はコンクリートで覆われて、放射能を含むダストが抑えられ、作業性も高まった。雨水が染み込むのを防ぐ意味もある。

 移動だけなら、防護服や全面マスクは必要ない。“グリーン装備”という普段着に近い軽装で、“三十五メートル盤”と呼ばれる台地の突端の高台へと歩く。1号機まで八十メートル。線量は一五〇マイクロシーベルトに跳ね上がり、ポケット線量計のアラームが、けたたましく鳴った。

 斜面の先に銀色の太いパイプが見えた。山側から流れ込む地下水が原発の建屋の中へ流れ込むのをせき止める凍土壁の配管だ。汚染水を止めるのは本格的廃炉作業の大前提の一つである。

 延長一・五キロ。マイナス三〇度の凍結液を建屋の周りに巡らせて、土中に氷の壁を張る。

 「凍結管の近くに氷の壁はできている。壁の前後で水位差もついている。あとは海側でくみ上げられる水量がどれだけ減るか。今月中に成否が判断される」と東電広報室。「再来年までに建物の汚染水をすべて片付けたい」という。だが、どこへ-。

 軽装で動けるようになり、六千人という廃炉作業員の肉体的な負担は軽減されている。

 三月、イチエフ構内でコンビニが営業を開始した=写真、代表撮影。昨年六月には近くに給食センターがオープンし、温かいランチが食べられるようにもなった。コンビニでは甘い物、特にシュークリームが人気という。

 「普通の暮らしが戻ってきたみたいな気分」と作業員。

 あれから五年。イチエフにはこんなささやかな日常が、ようやく帰ってきたところ-。

      ◇
 四十年。イチエフの廃炉にかかる年月だ。その意味を皆さんと一緒に考えたい。


 社説: イチエフ 廃炉の現場から<2> 正体不明、所在不明
2016年12月14日 中日新聞

 骨組みがあらわなままの建屋を高台から見下ろしながら、東電広報室の説明は続く。

 海風がその声をかき消すように強く吹く=写真、代表撮影。

 「イチエフでは四つの大きな課題に、並行して取り組まなければなりません」

 一つ目は、使用済み燃料の搬出で、二〇二四年をめどに終えたい意向。二つ目は、デブリの取り出し。デブリとは、溶け落ちた核燃料の塊で、放射線の発生源になっている。三つ目は、汚染水。そして作業環境の改善だ。

 「中でも最も困難なのが、やはりデブリの回収です」

 回収例はないでもない。一九七九年の米スリーマイル島原発2号機のメルトダウン(炉心溶融)事故。この時は、デブリが原子炉内にとどまった。しかし、イチエフでは、燃料の状態なども“四機四様”。その意味で世界史に類のない挑戦だと言えるだろう。

 正体不明のデブリとの闘いは、とにかく、その所在を突き止めなければ始まらない。

 ミューオンという透過力の強い素粒子を使った探査で、原子炉の中の様子が少しずつわかってきた。原子炉の壁や、地球さえ突き抜けるミューオンだが、そこに重たいウランがあればはじかれる。

 これまでの調査の結果、1号機の原子炉の中は空っぽ、格納容器の下へすべて溶け落ちてしまっているらしい。メルトスルーだ。

 最新の調査では、2号機の中には、随分残っているという。

 年明け以降、ペデスタルという格納容器の台座に穴を開け、カメラを積んだサソリ型のロボットを送り込み、燃料デブリの直接撮影を試みる。

 今までに投入された約四十台のロボット中七台が未帰還だ。成功すれば、その映像データを解析し、遠隔操作や取り出し用ロボットの設計などに役立てる。

 人が直接触れられない、近寄ることもできない世界の作業。ロボットに頼るしかないのだが、すべては姿をとらえてからだ。


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 社説:イチエフ 廃炉の現場から<3> 40年の値段はいくら
2016年12月15日 中日新聞

 イチエフから南へ約二十キロの高台に、ことし四月に本格オープンした日本原子力研究開発機構の楢葉遠隔技術開発センターは、いわば廃炉ロボットの実験場だ。

 通称モックアップセンター。モックアップとは、実物大模型のことである。

 溶け落ちた核燃料デブリの除去は、廃炉作業の大前提だ。

 原子炉格納容器を水で満たして、放射線を遮蔽(しゃへい)しながら、遠隔操作の水中ロボットで取り出す方法が有力視されている。

 格納容器には事故の衝撃で、たくさんの穴が開いたとみられている。水を満たすには、グラウトというセメントのような材料でまず穴をふさがなければならない状態で、そのためのロボットも必要になる-。

 巨大ロボットの格納庫を思わせる試験棟には、原子炉下部のドーナツ型の圧力抑制プールの一部を切り取った実物大模型をはじめ、模擬階段や、試験水槽(直径五メートル、深さ四・五メートル)などが設置されていて、各種ロボットの動作試験や、遠隔操作の訓練などが展開される。


 研究管理棟では、イチエフ2号機の原子炉を3D映像で再現し、内部を仮想体験できる=写真。

 建設費は約百億円。廃炉準備にかかる費用のごく一部と言っていい。四十年という歳月を費やす難事業には、それに見合う費用もかかる。そのツケは、何らかのかたちで電力消費者に回される。

 経済産業省は今月九日、イチエフの廃炉や賠償などにかかる費用が、二一・五兆円に上るとの見積もりを公表した。これまでの想定の二倍に増えた。

 イチエフの廃炉費用は二兆円から四倍増の八兆円。デブリの回収コストを初めてきちんと積み上げてみたら、こうなった。

 イチエフ廃炉は前人未到の難事業。これからさらに四十年、まだ見ぬ多くの課題に直面し、費用はどこまで膨れ上がることだろう。

 確かになったこともある。

 原発は、結局高くつく。もう安いとは言わせない。


社説:イチエフ 廃炉の現場から<4> あふれ出る汚染廃棄物
2016年12月16日 中日新聞

 辛うじて事故を免れたイチエフ5、6号機の北側には、1~4号機の廃炉が進むに連れて排出される放射性廃棄物があちこちに集められ、“廃棄物エリア”になっている。汚染水タンクの森の向こうは、放射性廃棄物の荒野である。

 放射線量に応じて“仮置き”の仕方も違う。使用済みのロボットも含め、毎時三〇ミリシーベルトを超える高線量廃棄物は、コンテナに詰め、固体廃棄物貯蔵庫と呼ばれる建物の地下に保管する。それ以下のものは、覆土をしたり、シートをかけたり、仮設保管設備に収納したり…と、さまざまだ。〇・一ミリシーベルト以下だと、屋外集積、つまり野積みになっていたりする。

 増え続けるごみの減容、かさを減らすため、ことし三月、廃棄物エリアに三階建ての「雑固体廃棄物焼却設備」を設置した。

 ここで燃やすのは、使い捨てにせざるを得ない防護服や手袋、靴下などである。最大五十分の一に減容することができるという。

 焼却設備ができる前、これらのごみは七万トンにも上り、コンテナに詰めて保管されてきた=写真、代表撮影。

 フィルターで放射能を取り除いた焼却灰は、専用容器に密封して貯蔵庫に収容する。

 汚染水タンクの置き場所を造るために伐採した樹木も山積み状態になっている。伐採木をチップ化して燃やすため、焼却設備を増設する計画だ。

 「こうした廃棄物の総量は、七十万トンほどになる見込み。建物や燃料を別にして」と東電広報室。

 廃炉が進むということは、建物や燃料が、大量のごみになって出てくるということでもある。

 「半分くらいに減容し、建物を造って屋内に閉じ込めていく方針です」

 行き場のない、ごみだから。

 =おわり(この連載は飯尾歩が担当しました)
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12月15日(木)のつぶやき

2016-12-16 01:05:59 | 花/美しいもの
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