みどりの一期一会

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もんじゅ廃炉:原発依存にサヨナラを/空虚な「地元理解」「対話」/燃料などの行き場は 難題山積、試算桁違い工程見えず/サイクル断念が本筋だ

2016-12-22 18:39:27 | ほん/新聞/ニュース
昨日「もんじゅ」の廃炉が決定しました。
遅きに失した感はあるが「脱原発依存」の一歩になるだろうか。

「もんじゅ」は建設、維持管理に一兆円以上、さらに廃炉費用は3750億円もかかるという。

政府は核燃料サイクルは維持、高速炉に転換、という方針なので、
もろ手をあげて喜ぶわけにはいかない。

「もんじゅ廃炉」関連の社説とニュースを紹介します。

  社説:もんじゅ廃炉 原発依存にサヨナラを
2016年12月22日 中日新聞

 高速増殖炉がだめなら高速炉-。それではあまり意味がない。もんじゅだけのことではない。原発依存の仕組み自体が、実は“金食い虫”なのだ。サヨナラもんじゅ、そしてその背景の原発依存。

 莫大(ばくだい)な費用がかかる。危険なナトリウムを大量に使っているのに管理はずさん、だから動かせない-。国民の側から見れば、もんじゅを残す理由はない。

 廃炉の決定はむしろ遅すぎた。

 何度も書いてきたように、トラブル続きで長年ほぼ止まったままのもんじゅの維持に、毎年二百億円もの費用をかけてきた。

 建設費と運転・維持費を合わせると一兆四百十億円にも上る。廃炉にも三千七百五十億円かかるという。そのすべてが税金だ。

 さらに大きな問題は、政府の意図が廃炉というより、高速炉への置き換えにあることだ。

 政府がもんじゅの“後継”に位置付けるのが高速炉。もんじゅとの違いは、核燃料を増やせないことである。しかし、高速中性子を使って使用済み核燃料を燃やすことはできるという、ハイレベルの原子炉には違いない。

 しかも、原型炉のもんじゅよりワンランク上の実証炉をめざすという。さらに莫大な費用を要することは、想像に難くない。

 フランスが計画中の高速炉「アストリッド」は、現時点で最大一兆円の建設費が見込まれており、日本に共同研究、つまり費用負担を求めているのが現状だ。

 文部科学大臣は「国民の皆さまに納得していただけるもの」と繰り返す。

 だが、国民の過半が原発再稼働に異議を唱える現状で、看板を掛け替えただけで、新型原子炉に巨費を投入し続けることに、納得できるはずもない。

 高速炉開発の背景には、既に破綻が明らかな核燃料サイクル、つまり使用済み燃料を再処理して再リサイクルする仕組み、ひいてはごみ処理にめどを付け、原発依存を維持したいという意図がある。

 経済産業省は、再処理事業の総費用を十二兆六千億円と見積もっていた。その一部は電気料金にすでに転嫁されている。

 燃やすだけの高速炉ではリサイクルはなりたたない。破綻を繕う文字通りの弥縫策(びほうさく)にも、納得できるわけがない。

 繰り返す。高速炉計画も白紙に戻し、核燃料サイクルは中止して、安全で安価なもんじゅの廃炉と、核のごみ減量の研究に、地元福井で専念すべきだ。  


  論説:もんじゅ廃炉決定 空虚な「地元理解」「対話」  
福井新聞 2016年12月22日

 【論説】「夢の原子炉」と期待されながら、初臨界から22年の高速増殖原型炉もんじゅはわずか250日の運転実績で廃炉となる。「国策」としてその役割を果たせなかった責任は一元的に国にある。失敗の原因、総括もすることなく、今後どれだけの知見、実績を積み重ねて次のステージに向かうというのか。もんじゅ以上の巨費を投じて後継の実証炉を建設するなど「夢のまた夢」であろう。無定見にあきれるばかりだ。

 政府は廃炉や後継炉開発に対する立地地域の理詰めの疑問に十分答えていない。脱原発世論が定着した中で、国民理解が得られるはずもなく、リスクが高い実証炉推進は反原発世論を一層強める副作用がある。

 西川知事は19日段階で「説明が不十分。到底受け入れられない」と廃炉方針を拒否したはずだ。廃炉措置にしても、原子力規制委員会から運営主体として「不適格」の烙印(らくいん)を押された日本原子力研究開発機構がなぜ廃炉作業を担うのか、担えるのか。また安全確保体制をどう構築するのか、その疑念にも適切に答える責任があった。

 しかし、再度説明の場を持った松野博一文部科学相は「至らぬ点を真摯(しんし)に反省し、今後はこれまで以上に地元への説明会をさまざまな機会を通じて行う」と言うのが精いっぱい。廃炉措置についても「第三者による技術的評価を受ける体制を構築し、原子力機構をしっかり監視・監督していく」と抽象論に終始した。

 世耕弘成経済産業相は「地元の理解、協力なくしてわが国の原子力政策は成り立ち得なかった」と述べ「地元対話」を強調した。

 「地元対話」とは便利な言葉である。これまでの高姿勢による対話不足が国への不信感につながっていることを猛省すべきだ。

 知事は「国が机上で『運転再開しない』と決めるのは簡単、大きな混乱が生じるのは現場・地元」として「地元の納得がなければ物事が的確に進まない」と改めてくぎを刺したのも当然のこと。廃炉の意思決定に何ら参画できず、結局は言いなりにならざるを得ない地方自治体と国家権力のいびつな関係こそ問題だ。

 国は廃炉の理由に、再開するには最低でも8年、5400億円以上の追加費用が必要になること、新たな運営主体が見つからないことも理由に挙げた。全ては所管する文科省の指導、監督体制の不備に起因する。

 文科相らの給与の一部返納などで終止符を打ち、今度は1兆円超を費やしたもんじゅに代わるプロジェクトを経産省が仕切るのか。

 軽水炉で未曽有の原発事故を起こした上、核燃料サイクル実現のめども立たず、行き場のない使用済み燃料と核兵器への転用が可能な約48トンものプルトニウムがたまる日本の原子力政策はもう破綻寸前だ。この難題を海外の技術を活用して乗り切ろうという安易なシナリオに、国民を納得させるだけの説得力はない。
 「もんじゅの周辺地域を研究開発拠点に」とは、さらに説得力がない。


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  もんじゅ廃炉、燃料などの行き場は 難題山積、試算桁違い工程見えず 
2016年12月22日 フクナワ

 迷走を続けた日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は21日に廃炉が正式に決まった。廃炉作業の進め方はこれからの協議になるが、一般の軽水炉でさえ除染や解体は手探り状態で、特殊な炉型のもんじゅでは今後数十年にわたって未知の作業が続く。巨額の費用に加え、扱いが難しい冷却材のナトリウムやプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の処理など多くの難題が待ち受けている。

 廃炉には今後30年間に少なくとも3750億円必要―。政府が19日の高速炉開発会議で示した試算は、もんじゅの特殊性を際立たせた。内訳は使用済み核燃料の取り出しと廃炉準備作業に150億円、解体に1350億円、維持管理費に2250億円。全体で数百億円規模の軽水炉に比べ桁違いだ。

 これまでに廃炉作業に入ったナトリウム冷却型の高速炉は欧米に15基程度ある。構造や規模、立地条件はさまざまで、知見がどれだけもんじゅに当てはめられるかは不透明。原子力機構が2012年に廃炉費用を試算した際に設定した工程は軽水炉を参考にしており、原子力機構は「現時点で廃炉の具体的な手順は検討していない」と説明する。

 建設時からもんじゅと関わってきた県OBの一人は「廃炉の計画を立てるだけでもやっかい。実際の作業に入るまでに10年単位で掛かるのではないか」とみている。

 解体までの工程を示す「廃止措置計画」を原子力規制委員会に申請するには、使用済み核燃料の取り出しが前提になる。取り出し一つとっても、完了までに最短で約5年半掛かると見込まれている。10年には燃料交換用の炉内中継装置が原子炉容器内に落下するトラブルが起きており、順調に進むかは分からない。

 もんじゅの炉心にある198体のMOX燃料と、周辺に置かれた172体のブランケット燃料は、燃料同士が支え合う構造で、1体取り出すたびに模擬燃料と入れ替える必要があるが、ブランケット燃料用は今後作らなければならない。燃料の保管容器や中間貯蔵施設も必要になる。

 使用済み核燃料プールの耐震補強なども迫られ、廃炉の作業期間が延びれば、費用はさらに膨らむ。

 元京都大原子炉実験所助教の小出裕章さんは「軽水炉でも30年では解体できず、ましてや高速増殖炉では到底不可能だ。解体後も残る大量の放射性廃棄物とどう向き合うかも重い課題で、廃炉という言葉を簡単に使うべきではない」と指摘する。

 もんじゅは、水や空気と激しく反応するナトリウムを冷却材として計約1670トン使っており、事故のリスクは廃炉になっても残り続ける。実際に1984年から廃炉作業に入っているフランスの実験炉「ラプソディー」で、94年にナトリウムの処理中に作業員が死傷する爆発が起きている。

 原子炉などを循環する1次系のナトリウム約760トンは放射性物質も含んでおり、これまでに国内で処理した実績はない。欧米では化学反応で安定した塩化ナトリウムなどにして処理する方法が採用されている。処理の過程で発生する水素の安全管理などが課題で、原子力機構は「一つの選択肢だが検討はこれから」(原子力機構)という段階。処理後の放射性廃棄物をどう扱うかも決まっていない。

 1次系の全量760トンを保管するには既存のタンクでは容量が足りず、増設が必要になる。ナトリウムを抜き取っても、配管や機器に付着したものまで安全に取り除きながら解体をどう進めるかは大きな課題になる。

 一方、使用済みを含め計320体あるMOX燃料の行き場もない。通常の軽水炉で使うウラン燃料に比べ、毒性の強い放射性物質が多く含まれており、青森県六ケ所村の再処理工場では受け入れていない。

 原子力機構は原子炉廃止措置研究開発センター(ふげん)=敦賀市=の使用済みMOX燃料を、茨城県東海村で再処理した実績はある。ただ再処理施設の耐震補強工事の影響で、ふげんからの燃料搬出は08年から止まったまま、原子力機構は14年に施設の廃止を表明した。フランスの企業に委託して再処理する方針だが、契約交渉は難航しており、計画通りの燃料搬出完了(17年度)は困難な状況だ。

 もんじゅも原子炉設置許可申請書で「東海村の施設か海外委託での再処理」としており、ふげんと同様に袋小路に入り込みかねない。元京都大原子炉実験所講師の小林圭二さんは「もんじゅで大量の機器点検漏れが起きた要因の一つは職員の意識が低下したからだ。廃炉でなおさら士気は下がる。ナトリウムやMOX燃料の処理を着実に進められるのか」と疑問視した。 


  社説:もんじゅ廃炉 失敗認め、現実を見よ
2016年12月22日(木)付 朝日新聞

 主役は故障や不祥事続きで舞台にさっぱり上がれず、金づかいばかり荒い。ようやく降板させると決めたが、公演を中止すると騒ぎになるから「いずれ上演」の垂れ幕は下ろさない。

 代役はまだ生まれてもいないが、「いずれ」がいつかは明言していないから、大丈夫――。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を廃炉にし、代わりに新たな高速炉の開発を進めて核燃料サイクルは堅持する。政府のこの方針をたとえて言えば、こんなところか。

 ばかばかしい、では片付けられない。国民の貴重な税金がこれまで大量につぎ込まれ、さらにつぎ込まれようとしている。

 もんじゅは明らかに失敗だ。廃炉にし、所管する文部科学相が給与を自主返納すれば済む話ではない。1兆円以上かけながら20年余りの間、ほとんど動かせず、さらに廃炉に4千億円近くかかるという。問題の総括が不可欠だ。

 核燃料サイクル政策を錦の御旗に、これ以上ムダと無理を重ねてはならない。「もんじゅから一定の知見が得られた。それを高速炉開発に生かす」と強弁する姿勢を改め、現実に立ち返るべき時である。

 文科省は4年前、もんじゅの技術成果達成度に関する資料を原子力委員会に出していた。各項目の重要度を加味してはじき、機器・システム試験関連が16%、炉心試験・照射関連が31%、運転・保守関連は0%。総合の達成度は16%だった。

 これで「一定の知見が得られた」と胸を張るのか。

 改めて痛感する教訓は、現実を見ず、リスクや問題点を軽視する代償の大きさである。

 核燃料サイクルの経済性や原爆の原料になるプルトニウムを扱うことへの核不拡散上の懸念から、高速炉開発をやめる国が相次ぐなか、日本はあえて着工した。海外でナトリウム漏れ事故が起きても「もんじゅは起こさない」と言い張り、起こすと虚偽の発表や隠蔽(いんぺい)を重ねた。

 長い休止後に運転再開にこぎつけても装置の故障でふいにし、ついには運営する日本原子力研究開発機構の能力自体が疑問視されることになった。

 廃炉の決断が遅れたのは、核燃料サイクルのなかで原発の使用済み核燃料の再処理問題に波及し、原発稼働に影響することを政府が恐れたからだろう。

 もんじゅ廃炉を契機に、現実を直視し、開かれた議論を通じて、国民が納得する原子力政策を再構築しなければならない。それなしに次の開発に進むことは国民への背信である。


  社説:もんじゅ廃炉 サイクル断念が本筋だ
毎日新聞 2016年12月22日

 「高速炉ありき」「核燃料サイクルありき」の結論だった。政府は高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を正式決定する一方で、使用済み核燃料を再処理し取り出したプルトニウムを再び燃やす核燃料サイクルの継続も改めて打ち出した。

 「もんじゅ」は1兆円を超える国費を投入しながら、相次ぐトラブルや不祥事により22年間で250日の運転実績しかない。運営主体である日本原子力研究開発機構は原子力規制委員会から「運営能力がないので交代を」とまで指摘された。

 廃炉自体は当然のことだが、問題はさまざまな課題に目をつぶったままの決定であることだ。なぜ、もっと早く無駄な税金投入をやめて廃炉にできなかったのか。その検証をなおざりにしたまま、非公開の会議で方針を決めた。これでは国民の納得は得られない。

 さらに根本的な問題は、「もんじゅ」を廃炉にする一方で、一段上の高速実証炉の開発を進める決定を下したことだ。

 高速炉はサイクルの要である。「もんじゅ」廃炉で本来のサイクルの輪は切れる。とすれば、何より見直さなくてはならないのはサイクル政策そのもののはずだ。

 ところが、政府は2014年に閣議決定した「エネルギー基本計画」にサイクル維持が盛り込まれていることを盾に、高速炉開発を前に進めようとしている。

 そのための方策として、フランスの高速実証炉「アストリッド」計画への参加を持ち出したが、実現性もはっきりしない計画で、その場しのぎとしか思えない。

 政府がサイクル維持にこだわるのは、サイクルの旗を降ろしたとたん「資源」だった使用済み核燃料が「ごみ」となり、これまで「資源」として貯蔵してきた青森県が発生元に持ち帰りを要求するからだろう。使用済み核燃料で貯蔵プールがいっぱいになれば原発は動かせない。

 しかし、この問題は政治が腰を据えて対策に取り組むことで解決すべきであり、サイクル維持を方便として使うべきではない。

 潜在的核抑止力の立場から再処理を維持したい思惑があるとの見方もあるが、これも説得力がない。

 福島第1原発の事故から5年9カ月を経て、いまなお仮設住宅や避難先で年を越そうとしている人たちがいる。政府は膨れあがる事故処理や廃炉の費用、賠償費用の負担を広く国民に転嫁しようとしている。

 そうした現実を思えば、政治が取り組むべき優先課題が高速炉開発でないことは明らかだ。サイクルは断念し、その費用を福島対策に振り向けてほしい。  


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12月21日(水)のつぶやき

2016-12-22 01:04:52 | 花/美しいもの
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