東京都議会本会議でのヤジ事件の続報です。
新聞各社は、この問題を社説で取りあげています。
当事者である塩村議員は、自治法に基づいて処分要求書を提出しましたが、
受理されなかったそうで、再提出は断念されたとのこと。
侮辱に対する法の規定は、手続き要件なので、いったん提出されれば、
懲罰委員会が設置され、事実関係などはそこで議論されます。
これは公平な判断をするためのもので、入り口での恣意的な「不受理」などはできません。
ことを大きくしたくない、うやむやにしたいなどという理由で、
突っかえしたのなら、都議会の自浄能力はゼロ、ということを暴露したようなもの。
議長も含めて、塩村議員へのヤジに加担した、ということになります。
突っかえされても置いてくる、相手の手に渡してくる、というのが、
手続きをすすめるには必要でしたが、再提出を断念されたのは残念です。
懲罰事項は、短期時効の原則がありますから、三日は経過してしまいました。
都議会は、時間かせぎをしたつもりかもしれませんが、
すでに、問題は都議会だけにとどまらず、社会的な事件になっていますから、
こうなったら、閉鎖的な都議会の暴力を白日の下にさらして、
事実関係の調査をして不規則発言した議員をすべて洗い出し、
まず塩村議員に対して、きっちりと謝罪させたうえで、
議会として、再発防止も含めての、根本的な問題解決を図るべきでしょう。
本人が名のりでて、これだけのことをしでかしたのだから責任をとって辞職、
というのが筋ですが、ヤジを飛ばすような輩は、そもそもずるい人が多いもの。
都議会の対応は、まさに「井のなかの蛙大海をしらず」、
塩村議員だけでなく、全国の女性たち(男性も)の怒りに火をつけたことを自覚すべきです。
【社説】女性蔑視やじ 知らんぷり許されない
2014年6月21日 中日新聞
怒り、落胆、情けなさ。女性を蔑(さげす)んだ東京都議会の「やじ騒動」が議会の内外に波紋を広げている。発言は品位に欠けるだけではない。事の本質をまったく分かっていないのではないか。
「心ない野次(やじ)の連続」。塩村文夏都議(みんなの党)が自身のツイッターに投稿したところ、二万回を超えるリツイート(転載)があった。都議会には一千件を超える批判が寄せられた。インターネットの署名サイトでは、発言者の特定と処分を求める抗議の声が広がっている。
事の発端は十八日。放送作家でもある塩村氏が晩産化や非婚化の進む中、妊娠や出産に悩む女性への支援策を質問したのに対し、「早く結婚しろ」「産めないのか」と男性議員のやじが飛んだ。
みんなの党は「やじが自民の席の方から聞こえた」と抗議したが、自民側は「自民の議員が述べた確証はない」として、発言者を特定しない意向を示した。
議場での発言は自由で、刑罰が科せられるわけではないが、うやむやに終わらせてはいけない。やじは塩村氏個人への攻撃では済まず、議会の品位をおとしめ、議会に対する信頼を失わせる。
人々は思うのではないか。笑い声も起きて、人格を傷つける言葉を許容するような議会に、大切な議論を任せられない、と。
妊娠や出産というデリケートな問題が女性議員への嫌がらせの言葉で片付くはずもない。男性に原因がある場合もある。晩産や非婚の背景にある、厳しい雇用や低賃金などの問題にこそ向き合うべきだ。女にも男にもかかわる問題なのに、心ない発言者は有権者の代表として、考えることや議論することを投げ出している。
みんなの党は議場映像から声紋分析を行い、発言者を捜し出すと主張する。しかし、調査を待つ話ではない。知らんぷりをしている議員は名乗り出て、やじが適切でないと思うなら謝るべきだ。
政治家の女性を蔑視した発言をめぐっては、二〇〇三年に太田誠一衆院議員が早大集団レイプ事件について「元気があるからいい」と発言し、〇七年に柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」と述べて批判を浴びた。いずれも次の国政選挙で落選した。
やじには、事の本質を突いて議論を盛り上げる適切なものもないわけではない。しかし、女性への侮蔑に限らない、品位を欠き、人格を傷つけるやじは、国会からも地方議会からも追放したい。 |
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社説:都議会の暴言―うやむやは許されぬ
2014年6月21日(土)付 朝日新聞
議場が公の場であることをわきまえず、汚いヤジを飛ばして恥じることがない。名乗り出る潔さすら、持ち合わせない。
そんな人が首都の議会にいるとは情けない。
東京都議会の本会議。塩村文夏(あやか)議員が、東京は全国でとびぬけて晩婚晩産だと指摘し、妊娠・出産・育児に悩む女性への支援の充実を訴えていた。
そこへ、男の声で「早く結婚した方がいいんじゃないか」などとヤジが飛んだ。
塩村氏が絶句すると、議場に冷笑が広がった。暴言の出どころと疑われた会派の幹部は「臆測で言われても困る」と、発言者を特定せずに幕を引こうとしている。
発言そのものも、事後の対応も、二重三重に罪深い。
まず、少子化は、子どもを産み育てることを難しくしている社会構造の問題だ。
それを、ヤジの主は「あなたが産めば解決する」と個人の問題にすりかえた。
世の女性ひとりひとりに「あなたが産まないのが悪い」とメッセージを送ったに等しい。
晩婚や晩産は男女双方の問題であるのは当然だが、そういう認識もまるで感じられない。
この無理解こそ、既婚の女性に仕事か子どもかの二者択一を迫り、未婚の女性に結婚をためらわせる元凶ではないか。
このまま発言者を特定もせずにうやむやにすれば、議会として暴言を許容したことになる。不心得な議員が一部にいたという話にとどまらなくなる。
議員たちは選挙を通じて住民らに選ばれた代表である。その姿勢は、世の中の空気を映していると受け取られる。
妊娠や出産の悩みを語ったり支援を求めたりすると、こんな仕打ちにあうのか――。
職場や家庭で悩みを抱えている女性たちを、そんなふうに萎縮させる。そして、社会の難題の解決をますます遅れさせる。それがなにより罪深い。
猪瀬直樹前知事のカネの疑惑の際は、あれほど厳しく「都民をなめるな」「自らえりをただせ」と迫った都議会である。自浄作用を働かせることを強く求めたい。
塩村氏のツイッターへの投稿は、1日のうちに約2万回もリツイート(転載)され、全国に怒りが燃え広がった。
ふつうの生活者の怒りが目に見える時代になった。あっという間に議員たちを取り囲んだ。救いはそこにある。これを教訓に、公に発言する責任の重さを全国の一人でも多くの議員にかみしめてもらいたい。 |
社説:都議会ヤジ 「品位」以前の問題だ
毎日新聞 2014年06月21日
これが首都の議会か。こうあきれた人も多いだろう。
東京都議会みんなの党会派の塩村文夏(あやか)議員(35)が本会議で一般質問の最中、議場からセクハラというべきヤジを浴びせられた。さらには、その発言者がなかなか名乗り出ないという異例事態である。
不作法だとか品位を欠くといったこと以上にこのヤジの根は深い。
近年、政治や行政が女性の社会進出、子育て支援などを力説しながら、一皮むけば、このような不見識や偏見が今もあっさりと顔をのぞかせるのではないか。意識変革の遅れを今回の問題は示唆する。
塩村議員が質問に立ったのは18日。女性の妊娠・出産をめぐる都の支援体制などを取り上げた。
塩村議員によると、ヤジは男性の声で「自分が早く結婚した方がいいんじゃないか」「まずは、自分が産めよ」「産めないのか」などと言った。声は最大会派の自民党席あたりから聞こえたという。だが、発言者の特定には至っていない。
社会各分野で指導的地位の3割以上を女性にするという目標を掲げるなど、安倍政権は女性の社会進出と活躍の機会拡大を「成長戦略」の柱にしている。そのためには、子育て支援充実など課題は多岐にわたり、男女の緊密な協力が支えとなる。
その理念や取り組むべき課題を踏まえていれば、議場で今回のようなヤジが飛ぶはずもない。驚くべき無理解というほかはない。
過去においても、政治家の問題発言はあり、例えば、2007年には当時の柳沢伯夫厚生労働相が「女性は産む機械」とたとえて、厳しい批判を受けた。
政治家らの認識も高まったはずだが、今回のような問題が起きるとむなしい。
一方、都議会(定数127)全体の対応の鈍さはどうしたことか。
ヤジが飛んだ時、議場には笑い声さえ上がったといい、たしなめたりする様子はなかったという。
問題化しても、ヤジを飛ばした当人がすぐに名乗り出ないという事態も異例なら、周辺に座っていてヤジの発声を間近に聞き、発言者を特定できるであろう議員がいない、というのも納得できない。
この悪質なヤジに議会がただちに反応し、発言者不明なら超党派で徹底調査するぐらいの即応力を発揮していれば、ここまで議会不信の傷は深くならなかったかもしれない。
みんなの党会派は、ヤジの主が自ら名乗り出ないなら、声紋分析も考えるという。そのような事態になる前に、議会自らが主体的に解明し、この苦い体験を今後に生かすべきではないか。 |
都議会ヤジ:女性蔑視、海外に波紋 五輪イメージダウンも
毎日新聞 2014年06月21日
東京都議会本会議でみんなの党の塩村文夏(あやか)議員(35)に女性蔑視のヤジが浴びせられた問題が海外で広く報じられている。2020年東京五輪・パラリンピックで世界に東京の魅力をアピールする絶好の機会となるはずが、イメージダウンにつながりかねない状況だ。
米CNN(電子版)は「性差別は日本企業では一般的」と報道。女性の社会進出を経済成長へつなげようとする安倍政権の「ウィメノミクス」政策に言及しながら、「依然として男性が社会的地位の大半を占め、高所得を得ている」と日本社会の現状を批判的に伝えた。
ロイター通信も「女性議員が独身で子供がいないことにヤジ。批判が噴出」と速報。日本企業の慣例として「女性は結婚・出産後に退職を勧められることも多く、働く女性はお茶くみなど、さまつな仕事をさせられる」と労働環境を批判。「ヤジで20年にオリンピックを開催する東京都にクレームが殺到した」と伝え、五輪開催地としての自覚も疑問視した。
また、共同通信によると、フランス公共ラジオは「日本は職場への女性の進出が先進国で最も低い国の一つ」と指摘。政府の子育て支援が乏しく、性差別も根強いため、女性が働きにくいとの見方を示した。
こうした中、東京五輪の準備作業を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会のメンバーが来日し、25日から3日間の日程で都内の五輪施設の視察などに臨む。「欧州の貴族のサロン」とも評されるIOCの委員の来日に対し、舛添要一知事は「東京の魅力を世界に発信する」と強い意欲を示しており、東京産の食材をふんだんに使った知事主催の昼食会が企画されている。
その直前に降って湧いたヤジ問題に、舛添知事は20日の定例記者会見で「一生懸命、東京の食材を使っておいしいものを食べさせたって、『何だ、片一方でこんなことをやってるじゃないか』って言われるのは非常に心外だ」と悔しさをにじませ、「報道の皆さんにもしっかり、そういう監視役を続けていただきたい」と訴えた。【竹内良和、中西啓介】
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都議会ヤジ問題、「みんな」声紋分析の構え
2014年06月21日 読売新聞
「早く結婚した方がいい」――。都議会での「セクハラ・ヤジ」問題が波紋を広げている。
都議会には苦情電話が殺到し、20日には閣僚から批判も相次いだ。舛添知事も定例記者会見で「品位のないヤジは断じて慎むべきだ」と非難。被害を受けた塩村文夏あやか都議(35)は「自ら名乗り出てほしい」と求めているが、いまだ“犯人”は特定されていない。
◆許せないヤジ
18日午後に開かれた都議会本会議。「都内の女性は晩婚傾向で不妊治療を行うケースも多い」。少子化対策に向けた都の取り組みを問う塩村都議の質問の最中に問題のヤジは飛び出した。
塩村都議は驚いて顔を上げ、声の方向に一瞬目を向け、その場は笑みを浮かべて取り繕った。目線の先には、都議会最大会派である自民党都議らが座っていた。
その後も、「自分が産めよ」といった趣旨のヤジが飛び、議場は笑い声などでざわついた。塩村都議の声は次第に涙声となり、質問を終え自席に戻った後はハンカチで涙をぬぐった。議事終了後、「私も結婚や出産に悩む一人。女性の声を代弁して質問したのに悔しい」と憤りをあらわにした。
◆批判殺到
このヤジは大きく波紋を広げた。塩村都議が、簡易投稿サイト「ツイッター」に「悩んでいる女性に対して言っていいとは思えない」などと投稿したところ、リツイート(転載)は20日午後7時現在で2万8000件を突破。都議会への抗議も19日時点で1000件以上寄せられ、20日も「電話がなりやまない状態」(議会局職員)という。
20日は閣僚からの批判も相次いだ。菅官房長官は「セクハラまがいの発言があったとすれば、議会で自浄作用を果たしていただきたい」と注文、田村厚生労働相も「人として、ちょっと大問題なヤジだと思う」と発言。長年、不妊治療に取り組んだ自民党の野田聖子総務会長は「私もこういうことと戦ってきた。(セクハラのヤジは)通用しない時代ということを肝に銘じてほしい」と不快感を示した。
◆犯人特定は?
塩村都議は同日、議長宛てに発言者の処分を求める要求書を提出したが、発言者が特定されていないと受理されなかった。
塩村都議が所属する会派「みんなの党 Tokyo」はヤジの声紋分析などで特定を引き続き進める構え。会派として自民に抗議したが、自民は「発言者の特定は困難」と消極的だ。
舛添知事はこの日の会見で、「ウィットに富んだ素晴らしいヤジもあるが、あまり聞いたことはない。女性の尊厳を傷付けるヤジは断じて許せない」と今回のヤジを批判した。
「都議会は品のないヤジが多くて驚いた」と区議出身のある都議。別のベテラン都議も「今回のヤジは悪意すら感じる」とため息をつく。“議場の華”と呼ばれる一方、「議会の品位を落とす」と批判も多いヤジ。今回の問題発言に対する自浄作用は働くのだろうか。(吉良敦岐、山村英隆) |
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