
ライラックの花を見ると、春を感じるとともに望郷の思いにかられる。ライラックはリラとも呼ばれる。5月になると札幌で「ライラック祭り」が行われるからだ。長い冬の季節から解放されて、400本のライラックの咲く大通り公園で、野外の散策が始まる。ライラックの甘い香りは若者たちの恋の季節の始まりを告げる。
イランやトルコがこの花の原産地だが、ヨーロッパに渡るのは15世紀ごろである。この花を最も愛したのはフランス人である。パリ北西部のルーマン植物園には、さまざまな種類のリラが集められ、ヴェルサイユ宮殿の生垣にリラが植えてある。この花の香りに誘われてパリの恋人たちは甘い接吻を交わし、恋を囁きあったであろう。日本では、ライラックが一番多く集められているのは北大植物園である。

この花には名称と香りで、西欧の香りがまつわりついている。そのせいか、俳人はこの花を句するのに苦心するようだ。日本の表現方法で異国の香りを詠まなければならないからだ。
学園の天濁りなしライラック 沢田 緑生

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