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子どもの日が過ぎたが、山形の空にはまだ鯉のぼりが泳いでいる。この地方では旧暦の端午の節句まで鯉のぼりは降ろさない。だが、それにしても鯉のぼりはめっきり少なくなった。少子化のなせるわざなのか。孫が遊びに来たころには、あちこちの家で競うように鯉のぼりを青空を泳がせていた。まだ、2、3歳だった孫が、大きな鯉のぼりに気づいて、回らぬ舌で「こいのこり、こいのこり」と言っていたことを懐かしく思い出す。
鯉幟なき子ばかりが木に登る 殿村莵絲子
自分の子どものころには、子どもの日に鯉のぼりを揚げる家は少なかった。殿村の句ではないが、木に登る子ばかりが多かった。今は子の幟が二尾が標準のようだが、子の数だけ子の幟を揚げるとすれば、6尾、8尾も珍しくはなかった。そんな規模の大きなものであると、支柱の長さも半端ではない。家の土台に、幟の支柱を収める場所を作るのが立派な家のシンボルであった。
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