山形県は温泉県である。県内35市町村すべてに温泉が湧き出るのは全国でも珍しいのではないか。老人の福祉施設にも温泉があり、100円という料金で毎日温泉を楽しむことができる。温泉法で温泉が定義されているが、それによれば、温泉とは「地中から湧出する温水、鉱水、および水蒸気、その他のガスを含む湧水で25度以上の温度を有するかまたは次の物質のひとつ以上一定量以上含むもの」と定められており、次の物質とは硫黄、ラドン、ラジウム、など18種類。
水温が25度未満の湧水は冷泉、また温泉と同じような物質を含む湧水は鉱泉と呼ばれる。娘の嫁いだ家の家族も大の温泉好きで、両家が顔を合わせるのは、大概温泉である。このブログでも紹介しているが、ここ数年は鬼怒川温泉からさらに山奥の湯西川温泉に行っている。井伏鱒二のエッセイを読んでいると、この湯西川温泉が出てくる。温泉街を流れる渓流が岩魚の釣り場で、井伏はつり仲間とこの温泉に行っている。
「鬼怒川温泉からバスで行って2時間あまりの山奥に、湯西川温泉という鄙びた温場がある。ここはもう栃木県と福島県の県境に近い。標高700mぐらいだが山は殆どブナの木で、谷川にはイワナがいる。」井伏の温泉の紹介は、これだけであとは釣りの話になっている。同行した釣り仲間は藤原審爾、川島勝、林忠彦ほか10名くらいの人々であった。ポイントの選び方、餌のとり方、など細かく書いているが、ここで釣った一尺二寸のイワナとのやり取りは手に汗を握る。獲物を逃がさないように仲間の助けを求め、初めての大物に胸を躍らせている。
日記・雑談 ブログランキングへ