
庭や神社の高い木から、キ、キ、キーという百舌の鳴き声が聞こえてくる。鳥の鳴き声は大抵が仲間を呼びかけたり、求愛を目的とするが、百舌の場合は違っている。秋の百舌の高鳴きは、この木から百メートルは俺様の縄張りだと、宣言している。そのため、うかつに他の鳥がその木に近づこうものなら、激しく追い掛け回して追い払う。夏には夫婦であったものでも容赦はない。
そのまわりには、冬の間啄ばむ木の実があるのだろう。この高鳴きがおさまるのは、縄張りが確定する頃で、その時分には里に霜が降りてくる。「百舌の高鳴き75日」というは、山から下りてきた百舌の初鳴きから75日ほどで、霜が降り、百舌の勢力関係も安定する。
「もずが枯れ木で鳴いている」は、サトウハチロウの詩だが、戦後ボニージャックスや芹洋子に歌われてヒットした。作曲は徳富繁である。
モズが枯木で鳴いている
オイラは藁を叩いてる
わたびき車はおばあさん
コットン水車も回ってる
みんな去年と同じだよ
けれど足んねいものがある
兄さの薪わる音が無え
バッサリ薪わる音が無え
兄さは満州へ行っただよ
鉄砲が涙で光っただ
モズよ寒くも鳴くでない
兄さんはもっと寒いだろ
百舌の鳴く季節に、戦争で満州に出征した兄への思いが歌われている。戦後の戦争への強い嫌悪感が充満していた日本で、厭戦の歌は学校の生徒たちの愛唱歌でもあった。

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