ダツラ
2014年10月02日 | 花
ダツラの白い大きなラッパ状の花の蘂に、小さな蜂が蜜を吸いに来ていた。その取り合わせが面白い。近縁のキダチチョウセンアサガオは、花を下向きに付ける。ナス科で、花は甘い香りを放つが有毒である。誤食すると意識混濁、譫妄状態、記憶喪失などの危険な状態をきたすことがある。江戸時代の医師、華岡青洲はこの作用に注目して、その種子から全身麻酔薬を作り、乳がん手術を成功させた。
『華岡青洲の妻』は有吉佐和子が書いた小説であるが、映画化され市川雷蔵、若尾文子の主演で評判となり、日本の医術が見直された。この麻酔剤を作る過程で、青洲は最初は動物実験で進めていたが、人体実験の必要性に迫られ妻を使った。その結果母の死、妻は失明という悲惨な結果を招いたが、青洲はこの麻酔剤を使って乳がん摘出手術の成功した。
この映画が公開されたのは1967年のことである。大映の製作で、映画館に見に行った記憶がある。日本映画の絶頂期で、この頃からテレビが普及し、映画館は次第に衰退へ向かっていく時期でもあった。散歩の途中で見かけるダツラ、チョウセンアサガオの白い花にこのような作用のあることが、江戸時代の医師によって発見されていた。最近、危険ドラックというものが、テレビで報道されているが、自然界には危険な作用を及ぼすものがたくさん存在している。それを、有用なものとして利用してきたのも先人の知恵であるが、麻薬の代用として使用するのは、とんだ見当違いと言わねばならない。
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