近ごろ田んぼに案山子を見なくなった。上山に「案山子まつり」というのがあり、用のなくなった珍しい案山子を全国から集めて見せるイベントが今年も行われてようだから、案山子がまったくなくなったわけではない。「かかし」は本来、かがしと言われ、人の髪の毛などを焼いたものを竹の先にはさんであぜ道に立てて、悪臭を放って鳥や獣をこないようにさせたのが起こりであった。人の形をしたものを田んぼの畦に立てるのは自分に代わって、田を守って欲しいという意味合いもあったようだ。
ものいはぬ案山子に鳥の近寄らず 夏目 漱石
この句には「知者不言、言者不知」という題字が付いている。これは老子の言葉で、「知る者は言わず、言う者は知らず」、知ったかぶりをして得意げにしゃべる人を皮肉る言葉だ。この句を教訓のようにとれば面白味がないが、何もできない案山子を恐れる鳥を浅知恵の人間と見ることもできる。鳥はいち早く案山子の不能を知り、稲穂に群がって効果のないことが証明された。
鳥の生態を観察すると、面白いことがたくさんある。秋の日は短く、日一日と寒さを増していく。
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