昔の勤め先の近くにあったそば屋、羽前屋に一年ぶりで行ってきた。この季節は新そばを打ってくれる。ふと切りのそばが香りが高く、甘く感じる。朝夕に気温が下がって空気がぴんとはるなかで、収穫したばかりのそば粉は、やはりこの時期しか味わえない独特の味わいだ。輸入ばかりに頼っていたそば粉でが、減反した田んぼにそばを植えて、地元のそば粉も多く使われるようになった。数年前まで直接農家からそば粉を買って、自分でそばを打ったことが懐かしい。本当の新そばの味は、それでしか味わえない。
新蕎麦は物も言わずに人が増え 川柳
そば切りは、江戸時代の前からで精進料理として食べられていた。そばの実を殻をむきそのまま炊いたり、雑炊にして食べた。または蕎麦粉を熱湯でこねたものに醤油をかけたそばがきにして食べていた。上方で食べていた麦きりをまねてそば切りにして食べるようになったのは、江戸も半ば安永年間のころである。江戸の蕎麦は、盛りそばが代表格である。とくに江戸前の盛りそばは、その量が極端に少ない。いまでも東京の有名店で蕎麦を注文すると、あっという間に食べ終わる少なさだ。
その点、山形の田舎そばは量が多い。「板そば」というのは、山形特有に盛り方だ。大盛りと注文するのではなく、この店では羽前盛り、某店では「厚盛り」、「家族盛り」などその量を誇る盛り方である。田舎蕎麦のサービスに「千円食べ放題」というのもある。車で1時間半くらいのところへ腹を空かして挑戦したが、丼に盛ったそばを4杯食べてギブアップであった。そんな田舎そばも、この時期の新そばはおいしい。
日記・雑談 ブログランキングへ