中秋の名月は過ぎたが、ネット上ではしばらく名月の写真や話題で賑わった。李白に月光の名詩がある。この詩を吟じるのを得意とする吟士も数多い。
床前月光を看る
疑うらくはこれ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思う
月は離れた地にあっても同じく見える。古来、人は月を見て、今は遠くにある故郷や友人に思いをはせてきた。井伏鱒二にこの詩の名訳がある。
ネマノウチカラフト気ガツケバ
霜カトオモフイイ月アカリ
ノキバノ月ヲミルニツケ
ザイショノコトガ気ニカカル
年齢を多く重ねても、胸の内ふかく刻まれているのは、生まれたところの山河であり、子供のころの思い出である。