常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

森吉山

2019年09月29日 | 登山

9月28日、秋田の北にある森吉山に登った。ここは、人里を離れ、深い原始の森のなかに眠る秘境と言える山である。阿仁といえば、マタギの里で知られる縄文の香りを今に残す山域だ。この山へは数回訪れているが、日帰り山行で、深く観察するゆとりのないものであった。

森吉山は遠い。朝、5時に山形を出発して、森吉山阿仁スキー場の山麓駅に着いたのが10時。途中、トイレ休憩を入れてはいるが、5時間を要している。国道105号線、道の駅あにから先は、またぎ街道と命名されている。秋田内陸線のあらせ駅付近から、スキー場への山道に入る。すでに道の両サイドは、深い森である。車がへアピンのようなカーブを曲がるたびに、その森の奥行きの深さを実感する。紅葉には少し早いが、ここの新緑や紅葉の美しさは、想像するだけでもすばらしいものがある。

越後湯沢に住んでいた鈴木牧之は『北越雪譜』で名高いが、この人に『秋山紀行』という文がある。雪で名高い秋山郷を取材したものだが、その中で秋田、阿仁のマタギからの聞き書きがある。秋田のマタギは、集落を作って暮らしていた。熊を狩る時期は冬である。この時は、多く背子が集まって、集団で狩りを行う。季節が過ぎて、夏になってくると、マタギたちは農耕に従事するのだが、あいにくこの地区には農耕に適した地が少ない。そこで、三々五々、移動しながら狩猟の生活を送った。秋田から遠く離れた秋山郷の山中で、仕掛けを作ってシカやイノシシの猟を行い、川でイワナをとった。塩漬けにした獣の肉と新鮮な魚を里へ持っていって金に換えて生活に資にあてたのである。

麓の駅でゴンドラに乗るが、山頂駅まで20分。一気に650mの高度をかせぐ。下に見える森吉の森は、ブナの繁る景色が広がる。どこから、熊が出てきても驚くことのない深い森だ。所々に登山道が見えているが、急な勾配をジグザグに縫うようについているため、ゴンドラで登るコースだけでも3時間はかかりそうだ。まだ、紅葉には早かったが、かってのマタギの生活を想像するには、充分すぎる光景であった。

ゴンドラを降りると、すぐに登山道に出る。ここの標高は1167m、頂上が1454m、標高差約300mだから安心の山歩きができる。天候は晴れ、風もなく、頂上付近では汗を抑えるそよ風が吹いている。大半が木を渡した階段と木道、雨が降れば滑りやすいだろうが、この日は足元にも不安はない。男女5名、山友会最高齢の男女もいたが、全員元気で足取りも軽く整備された山道を登って行く。道の脇には、咲き残ったリンドウが、たくさんあって目を楽しませてくれる。高度を上げるに従って、紅葉が少しづつ見えてくる。

週末ということもあってか、これほど奥深い山に登山者の多いのに驚く。先週の小国にでは、2名しか会わなかったが、ツーリズムの団体を含め、おそらく100名を越える人で賑わっている。全国各地から人たちで、この山の人気の高さがうかがえる。ここは花の百名山としても知られる。稚児平、山人平では初夏の訪れとともに、イワカガミ、チングルマなどが咲き競う景色は、東北の山ならでは自然の美しさに彩られる。身体が許されるなら、これから見られる紅葉と、初夏のお花畑に再訪できれば最高である。

避難小屋を過ぎると、風景がまた変わってくる。小さな池塘に水草の紅葉が見られ、澄みきった水面にはアオモリトドマツの樹が移り込んでいる。紅葉に早いからと、この季節の山行を止めるべきではない。刻々と移り変わる季節の様相がうかがえ、その新鮮な景色に驚かされる。

次第に笹の丈も低くなり、周りの山並みが見え始める。歩きはじめて1時間半、足の疲れを覚えないまま頂上に着くのは久しぶりのことである。80歳を超えて山を楽しみたい。そう願うのは、私も含めて多いと思う。そのための山選び。ここはアクセスこそ不便だが、ゴンドラを利用すれば、2時間ほどの、ゆったりした歩きで山頂の立てる。ここであれば、年老いても大丈夫だろう。鳥海山で出会った足を痛めたお婆さんは、娘に手を引かれながら一歩一歩、山道の歩きを楽しんでいた。それを実現するには、年老いてからの健康づくりも大事になる。

頑張り過ぎない、継続は丸。筋肉に引退なし、『百歳まで歩く』を書いた田中尚喜先生の言葉だ。トレーニングは一度にたくさんやるのではなく、繰り返して継続すことである。大脳が運動神経に「力を入れろ」と命令すると、神経を介して筋肉の細胞の収縮が行われる。運動神経の老化を防ぐのは、この地味な繰り返しと継続が力になる。

頂上からは360°の大パノラマ。遠く岩手山、岩木山、栗駒山に鳥海山。東北の名だたる山が一望できる。この山を指して、この山が何、あれが何、と言いたいところだが、それには経験が少なすぎる。地元の若者が登って来たので聞いてみると、あれが岩手山、鳥海山はかすかにうっすらと見えている、と答えてくれた。12時30分に頂上着。

頂上にも多くの人。思い思いの場所で、昼の弁当を開く。帰路は来た道を帰る。宿はクウィンス森吉、温泉付きの宿である。到着早々ひと風呂浴び、待ちきれずに夕食前に生ビールで乾杯。明日は、秘境小又峡へ滝見の旅。どんな風景に出会えるか楽しみである。



 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする