今日は朝から気温が上がっている。畑からの帰り道、道路の気温表示は午前8時で31℃であった。人に会うと、「暑いね」というのが挨拶代わりだ。ここに来て、トマトの木に勢いがある。収穫するミニトマトの量も多くなった。
夏が暑いのは、今に始まったことではない。クーラーや扇風機のなかった時代、人々はどのように涼を求めたのであろうか。
市中は物のにほひや夏の月 凡兆
あつしあつしと角々の声 芭蕉
芭蕉をとり巻く俳諧師が連句の世界で風流を競った。風もない夜、街にたち込めていた匂い。それは、夕食を煮炊きする匂い、蚊遣りの匂い、それに混じって溝の匂いもあったかも知れない。その渾然一体になった街の匂いが立ち昇っていく夜空には、うっすらと月が出ている。家のなかにばかり閉じこもっていられぬ夜だ。家々からは「あつい、あつい」という声が聞えてくる。人に聞えるように、「あつい」という言葉を吐くことで、一瞬の涼が得られたのかも知れない。
老若男女が縁台に出て、蚊遣りを焚きながら、団扇で風を送って涼を取る。そんな光景も、昭和の40年代までのことであったか。朝の散歩で、少しづつ見つける秋の風景で暑さをまぎらせるばかりである。稲の穂が垂れ始め、石榴の実が色づきはじめた。