昨日までの雪が止み、一転青空が広がった。空が澄んで目に沁みるようだ。ただし放射冷却で気温は-7℃まで下がった。こんな日ベランダから四囲の山々を見るのは心楽しい。西南の方角に、上山の虚空蔵山が、その三角錐の美しい姿を見せ、その奥に台形をした大平山が見える。この週末に登山を計画している山である。こんなにきれいに見えるのは、今年一番である。カメラに収めた山の姿も満足にいくものである。
虚空蔵山には登ったことはないが、大平山から上山の集落は箱庭のような眺めである。昭和17年5月6日、斎藤茂吉は弟と連れ立って虚空蔵山に登り、一首を詠んでいる。
眼下に平たくなりて丘が見ゆ丘の上には畑がありて 茂吉
眼下に広がる嘱目の詠であるが、茂吉は郷里の地形をその目に焼き付けようとした意図がうかがえる。すでにこの季節には、山の木々は深緑に輝き、眼下の畑には麦畑が一段と青さを増し、丘の上の畑には菜の花の黄色な花が咲き誇っていたことであろう。
虚空蔵山はいまでは虚空蔵菩薩を祀っているからこう呼ばれるが、昔は高楯と呼ばれる山城であった。地形から見ても街道から敵軍が押し寄せてくる様をうかがうのに適したところである。東に目を転ずれば、三吉山が迫り、上山は温泉を抱く狭い土地である。月岡城やまたこの三角錐の山上に城を築くには合理性があったように思える。