初夏の花
春の気温が高いせいで、早々と葉桜になり、例年なら5月にならないと顔を見せない初夏の花が春雨に濡れて咲いた。シャクナゲは何と言っても高山で見るのが一番だ。喘ぎながら登った高山で、この花を見つけたときなど、誰もが思わずに歓声をあげる。だが庭木として栽培されても、その豪華な花が目を楽しませてくれる。気品のある花の姿は、美女のおもかげを偲ばせてくれるであろうか。斎藤茂吉の歌に
石楠花は木曽奥谷ににほえども
そのくれなゐを人見つらむか 茂吉
英語でライラック、フランス語リラ、日本語では紫はしどい。ヨーロッパではその花の姿とともに、その芳香が愛されてきた。桜の咲く季節に寒気が入ると花冷えというが、6月北海道では、梅雨にならず、肌寒いリラ冷えに会うこともしばしばである。その言い方がしゃれていていい。
リラ冷えや睡眠薬はまだきいて 榛名美枝子