『Taking Lottei Home』
Terry Kay
『ロッティー、家へ帰ろう』
著者 テリー・ケイ
訳者 佐藤 隆信
2005/4/30 新潮社
いつもは手に取らないジャンル。
話題になった『白い犬とワルツを』の
著者のものだということと表紙絵にひかれた。
この物語は、主人公ベンがプロ野球選手としての
夢を絶たれて、帰郷するところから始まる。
そしてそれは実は彼の豊かな人生の始まりでも
あった。
ベンはずば抜けた才能・能力、あるいは社交術
・錬金術からではなく、誠実さ・素直さ・努力や
継続で人々の信頼と愛情を勝ち得、それがベンの
切り札となっていく。
実生活の中では人間性の崇高さと社会的地位・
評判は正比例するとは限らない。
そうは思っても、好青年のベンと彼に引き込まれる
ように、善行で彼を支える人々の暖かさは読後感に
爽やかさを残す。
この、童話のような物語のなかにおいてさえ、暗い
部分はある。明らかに、ベンにとっての故郷とロッティー
にとっての故郷は別物であるということ。
ロッティーにとってベンの律儀さは冷たさではなかったか?
そして、・・・紆余曲折しながら、人には認められない
幸せをつかむ主人公の義父レッドフォード氏の存在が光る。