借りてきたDVDを見るのはここのところもっと頻度がましているけれど、退院したので新しい映画を観たいとおもたら見たいと思っていた映画があった。
恩田陸の名著「蜂蜜と遠雷」を映像化したもの。これが映画としてもかなり良くできていて驚いた。原作を読んだのが4年近く前で忘れている部分も多いけれど、買った本も引っ張り出して映画を見てみた。
活字と映像それぞれの良さが明確にでているのがこの二つ。それぞれの作家が題材をきちんととらえて外さないところが素晴らしい。
もちろん原作がしっかりしているからだけれど、本の方では、主人公4人の生い立ち、生き方が丁寧に描かれて、その人物たちがコンペテッションを通じて心境なり緊張なりが丁寧に描かれている。だから素晴らしいと思っているわけだけれど、登場するクラシックの曲をほとんどしらないから、文章で感じるしかなかった。
そこが今回の映画の方は、見ていて音がする。映画は2時間ぐらいだから、テーマを絞らざる得ないが、そこもうまく当たっていて、風間塵という、ギフトとしての意味と人々が上手く描かれている。そして音楽の挿入の仕方も秀逸で、特に4人のそれぞれの「カデンツァ」の違いは(ここが一番の見せ場だった)、さすが実音で表現されていてここは映像の方が得で(逆に危ないけど)うまいなと思った。
って映画と小説のことを書いていて、新しい本については書いていないけど実はまだ途中。
出版されたのは半年以上前で、ちょっと内容わすてたからスルーしていたけれど映画をみてこれはやはり欲しいとすぐ買ってきた。
「蜂蜜と遠雷」のコンペティションのあとの4人から始まって、登場人物たちの物語以前とかの話が6つつづられていて、懐かしいような、切ないような気持ちになって、それはそれですがすがしい。
パッと思い浮かんだピッタリな感じはこんなにではないだろうか。
この短編群、素晴らしいソロ演奏の後それぞれの人が演奏した「アンコールの小品」のように心に残る。
個人的には楽器を演っているので、楽器との出会いを書いた「鈴蘭と階段」と映画でハイライトとなったカデンツア”春と修羅”の誕生について書いた”袈裟と鞦韆”が面白かった。
最期にどうでもいいたわごとを、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールの師匠であるナサニエル・シルヴァーバークと曽我三枝子のピアノ・コンクールでの最初の出会いを描いた「獅子と芍薬」から一節(と言っても一語を書き換えています)
「でもダメよ、いくらオジンだからってこんなところに引っ込んでいちゃあ。この世界、ぼうっとしているとどんどん次のオジンが出てくるんだから。あなたもここで生きていくなら、壁の花なんか、ダメ」
不満を感じる方は”オジン”を天才少年に書き換えて読んでください。