パブロ・フェルナンデスというスペインのチェロに出会ってとてもよかったけれど、日本でも一人であった。ショップで見ていたら面白そうなので買ってみた。フェルナンデスと同じようにラフマニノフを取り上げていて、これも同じようにカタルーニャ民謡の「鳥の歌」を演奏している。それに嬉しいことに、モリコーネの「ニュー・シネマ・パラダイス・メロディー」とピアソラの「リベル・タンゴ」も演奏している。
演奏しているのは伊藤悠貴という人で現在33歳、英国王立音楽大学を首席で卒業した人。
そしてこのアルバム、ただうまいということだけではない。帯に書いてあるけれど、「もはや多重録音ではない!?多重録音の域を超えた見事なアンサンブル!」というように全曲、一人で多重録音している。1曲目の「アダージョ」4チェロのアンサンブルが何とも美しい。アンサンブルに聞きほれるとはこういうことだ。
使用楽器がマッテオ・ゴフリーラ(1974年製、日本バイオリンより貸与)とあるから1本のチェロの音の多重なのだろう。2曲目ヘンデルの「サラバンド」同じ人が同じ楽器を弾けば同じ音色なのだろうが、1弦2弦3弦4弦それぞれの音が見事に絡み合って、3人で弾いたのとは別の纏まりになっているのだろう。
最初の2曲で感動してしまったわけだけど、チェロを弾く身としては開いた口がふさがらないわけで、チェロ・アンサンブルをあまりお聞きにならない人も是非驚いてほしいと思う。
ADAGIO Ensemble of loneliness Yuki Ito
演奏:伊藤悠貴(チェロ)
録音:2021年7月 キング関口台スタジオ 第2スタジオ
1.ラフマニノフ:交響曲第2番より「アダージョ」 (4チェロ、伊藤悠貴編)
2.ヘンデル:サラバンド (3チェロ、伊藤悠貴編)
3.モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス・メドレー (6チェロ、小林幸太郎編)
4.ピアソラ:リベルタンゴ (6チェロ、小林幸太郎編)
5.カタルーニャ民謡/カザルス:鳥の歌 (1チェロ、伊藤悠貴編)
6.ワグナー:エルサの大聖堂への行進 (4チェロ、グリュッツマッハー編)
7.ラフマニノフ:ヴォカリーズ (6チェロ、伊藤悠貴編)
録音:2021年7月 キング関口台スタジオ 第2スタジオ