エドアルド・フェルレは澤野工芸ののジャン・フィリップ・ヴィレさんのところでしったのだけれど、バッハを素材にしたアルバムなんかでとても個性的な位置にいるピアニストだと思う。
クラシックのフロアーでピアノ・デュオのアルバムがあったので買ってみた。
相手はコンピエーニュ帝国劇場のアーティスト・イン・レジデンスを務める若きクラシカル・ピアニスト、ポール・ベイネと言う人でこちらは知らない。
チャイコフスキー、プロコフィエフ、ムソルグスキー、ハチャトゥリアン、リムスキ=コルサコフなどの有名ロシア音楽を主題にしたフェルレの曲が主体でそういう意味では「Think bach」と同じラインでしょう。
これが聴いてみるとかなりの衝撃、クラシックのフロアーにあったけれど、これは完全にジャズ、でもクラシックの世界にいるという驚くべきアルバムでした。
1曲目ピアノのインストにステックでの打音が続くと知っているムソルグスキーのメロディ、この組み合わせが凄いと思う。
バッハを素材にして自由なバッハ・ワールドを構築したフェルレが凄い勢いで発展したような感じです。
ジャズの世界ではハンコックとコリアの凄いデュオがあったけれどそれに匹敵するのではと思う。
少し前にジャズとクラシックには
ラインが存在するみたいなことを書いたけれど、このアルバムジャズの世界から少しクラシックの世界にラインをずらした凄いアルバムだと思う。
2台のピアノは力強い音色と透明感ある音色の二つの流れで絡み合い、そこに情念の濁りをつけていく様な、まるで舞台を見ているような展開です。
1曲1曲の素材が生きてくるので、一つ一つが驚きの連続、ある時は美しく、そして躍動し、鋭くデュオするのです。
6曲目『熊蜂の飛行』を素材にした「スズメバチの飛行」は、これまでの多くの熊蜂の速弾きとはまるで違う新しいタイムと発音の世界だと思います。
9曲目チャイコフスキーのワルツを素材にした曲の美しいこと、このようなことがジャアズであれクラシックであれ起こることはめずらしいと思う。
おなじみのヴォカリーズの美意識も素晴らしいし、剣の舞をクラシックの見せる演技とは違う、文学的な仕上がりになっています。
PENTAGRRAMME / EDOUARD FERLET & PAUL BEYNET
EDOUARD FERLET piano
PAUL BEYNET piano
1 riposte フェルレ:リポスト(ムソルグスキー:『展覧会の絵』の「鶏の足の上に建つ小屋」より)
2 les stanses du sabre フェルレ:剣のスタンス(ハチャトゥリアン:『剣の舞』より)
3 les stanses du sabre プロコフィエフ/フェルレ編:ピアノ・ソナタ第3番 Op.28
4 oppidum フェルレ:オッピドゥム(ムソルグスキー:『展覧会の絵』の「古城」より)
5 exorde フェルレ&ベイネ:序言(即興)
6 le vol du frelon フェルレ:スズメバチの飛行(リムスキ=コルサコフ:『熊蜂の飛行』より)
7 second souffle フェルレ&ベイネ:スゴン・スーフル(即興)
8 piano sonata n°7, opus 83 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 Op.83より
9 valse centimétrale フェルレ:センチメートルのワルツ(チャイコフスキー:『感傷的なワルツ』より)
10 valse centimétrale フェルレ:反乱(ムソルグスキー:『展覧会の絵』の「リモージュの市場」より)
11 vocalyre ベイネ:ヴォカリール(ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14より)
12 la danse du sabre ハチャトゥリアン/フェルレ編:剣の舞(2台ピアノによる)