二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

“怒り”が意味するもの   ~スタインベック「怒りの葡萄」を読む <その2>

2023年06月07日 | 小説(海外)
追いつめられながらヒューマンな心を杖にして必死で生きようとする家族たちを見て、読者は文学というものが、何を達成しうるかを考えずにはいられない。家族の中心にいて、その核心を鋼のように支えているのは母ちゃんである。ほとばしる愛情とともに、エネルギーが滾々と湧きあがる。 父ちゃんは故郷を離れてから、根を絶たれた植物みたいに腑抜けになってしまったため、一家の長は母ちゃんが果たす。 作中人物に注ぐ、スタイン . . . 本文を読む
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人間にとって“尊厳”とは  ~スタインベック「怒りの葡萄」を読む <その1>

2023年06月07日 | 小説(海外)
■スタインベック「怒りの葡萄」(上・下巻)黒原敏行訳 ハヤカワepi文庫 2014年刊 重たい小説である。 しかも、当時の社会的経済的な問題や、差別、死などといった、考えたところで、答えの出ないものばかりを、具体的にストーリーに溶け込ませて表現しようとしている。容易ならぬ長篇小説である。 上巻447ページ、下巻422ページ(ハヤカワ文庫) ことに“オーキー”という差別用語に、ガツンと頭を殴られ . . . 本文を読む
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