二草庵摘録

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カフカ・フィーバーがやってきた <その1> ~池内紀「となりのカフカ」がおもしろい

2024年07月21日 | エッセイ(国内)
■池内紀(おさむ)「となりのカフカ」光文社新書 2004年刊


カフカ・フィーバーがやってきた・・・と書くつもりだった(;^ω^)
ところが、そんなに夢中に読みすすめているというのではない。
おもしろかったり、おもしろくなかったり。半分、半分かな?

ウィーン近郊にあった「ドクター・ホフマンの保養所」に、つぎの記載があるそうである。
■フランツ・カフカ
 身長:184cm
 体重:46キロ
晩年のカフカは、背が高いのはもちろんだが、驚くほど痩せていた。だから「断食芸人」はカフカ自身のことだった、と池内さんはいう。
さきごろ亡くなられた池内さんはドイツ文学の専門家、なにしろ“卒論”にカフカを取りあげた人である。


   (かつては主としてこの2篇「カフカ短編集」「カフカ寓話集」を愛読した)


   (白水社の池内紀さんのペーパーバック版「カフカ作品集」の一部)

《名前は聞いたことがあり、顔写真のようなものを見たこともあって、難しい小説を書いたといったことはなんとなくイメージにある。でもカフカってどんな人?
友人、知人の伝えるところによると、フランツ・カフカは物静かで、謙虚な人だった。半官半民の役所に勤め、女性を愛するたびに誠実に悩んだ。結核に冒せれても我慢強く苦痛に耐えた。勤めから帰ると仮眠を取り、夜中にせっせとノートに小説を書いた。書き続けるために独身を選び、家庭の幸せをそっくり捨てた。
一見謙虚だが、背中合わせに野心家のカフカがいた。いずれ自分の時代が来るとかたく心に期していた男--。カフカ初級者に送る「カフカの全貌」。》決定版カフカ短篇集 BOOKデータベースより

あいまいな記憶しかないが、以前愛読したのは、池内さん編訳の「カフカ短篇集」「カフカ寓話集」(岩波文庫)である。ほかには、高橋義孝さん訳(新潮文庫)「変身」であったと思う(´ω`*)
角川文庫からは本野亨一さんの訳で刊行されていて、高校生のころカフカの短篇を読んだのが、最初の短篇だったような気がする。
新潮社の「カフカ全集」は、「ミレナへの手紙」と、ほか短篇集も1冊はあった。

ところで、岩波文庫は短篇集(1987年)で20篇、寓話集(1998年)で30篇が収めてある。
池内紀さんの巻末の「解説」は卓越したものである。今度読み返して、ことにその感を深くした。この「解説」に、ボルヘスのよく知られたエピソードが取り上げてある。

《彼(ボルヘス)はすでに1938年に一冊のカフカ短篇集を編集し、みずから訳して序文をつけている。のちにはまた警抜なカフカ論を書いた。
そのエッセーによると、ボルヘスはあるとき、カフカの先駆者たちをめぐる系譜のようなものを思い立ったことがあるという。というのは初めのうちはカフカが伝説のつたえる不死鳥のように類例をみない独自の存在だと思っていたが、よく知るにつけ、さまざまな時代のさまざまなテクストの中にカフカの声を認めるようになったからだというのだ。》(「カフカ短篇集」「解説」269ページ)

岩波文庫から刊行された、池内さんによるこの短篇集は、のちにポストモダンの潮流に決定的な影響をあたえた、ホルヘ・ルイス・ボルヘスを引用した画期的なものであったことが、想像できる。

・掟の門
・雑種
・父の気がかり
・橋
・皇帝の使者
・ジャカルとアラビア人
・ある学会報告
・新しい弁護士
・十一人の息子
・断食芸人
・歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族

これらの短篇に、鉛筆(2B)のマークがついている。仕事をやりながら、クルマの中ででも読んだのかしらん? カフカの短篇を読むと、詩を書きたくなったのをぼんやり憶えている(。-ω-)
ことに「雑種」「父の気がかり」「橋」「ジャッカルとアラビア人」「断食芸人」らがお気に入りの短篇で、これらと「変身」が、わたしのカフカ像を形成していた。

20世紀文学では、プルーストとジョイスが真っ先に名が挙がるが、わたしはこの二人は、3~40ページで本を投げ出してしまう。過去に何回かチャレンジしたのだが。
19世紀の小説家と、フランツ・カフカがいれば、わたしは十分(^^;ムハハ 独断と偏見に塗れているのだ。

本書にはカフカ・アルバムのうしろに「カフカの生きたプラハ」という詳細な地図が添付されていて、これが重宝。
「し」という文字を逆さにしたようなモルダウ川、そしてカレル橋、プラハ城を眺めていると、これがカフカが下敷きにした、カフカ的迷宮都市プラハの原形だったことが理解できる。

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