二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ペール・ギュント ~こんなに悲しい音楽を聴いたことがあったろうか?

2020年06月06日 | 音楽(クラシック関連)
   (2019年1月撮影)



これまで大して意識せず、漫然と聴いていた曲が、いまごろになって、ようやく一本の線でつながった。
なさけないというか、あきれたというか・・・。

曲の名は、「ペール・ギュント」。
ノルウェーの作曲家、グリークの「劇付随音楽」である。
「知ってるよ、とうの昔から」という人が、きっと多いだろう(=_=)カッカッカ

◆オーゼの死
https://www.youtube.com/watch?v=GYEqc__bPWk

◆ 第4幕への前奏曲(朝)
https://www.youtube.com/watch?v=_p-Y4x1GLN0

◆ソルヴェイグの歌
https://www.youtube.com/watch?v=JyQ9lbgZDpQ
  (本ディスクのソプラノ=ルチア・ポップがすばらしい♪)

歌曲だの、オペラだのは、わたしはまず聴かないのだけど、ついつい、聴かされてしまった。
いまさらながら、ソプラノの美しさに酔わされた(^^)/

知らなかった音楽ではない。
記憶の底から、つぎつぎと蘇ってくる。
あー、あー、ああ。
そうか、あんなことがあった、こんなこともあった、と。

昨日なにげなく買ってきたCDの一枚に、
◆グリーク
劇付随音楽「ペール・ギュント」(全12曲)オリジナル版
アカデミー室内管弦楽団 指揮:ネヴィル・マリナー

・・・があったのだ。


  (右側はグリーク、ヴァイオリン・ソナタ1~3番。デュメイ&ピリスの演奏)

この音楽はつぎのような成立事情がある。

《「ペール・ギュント」はイプセンが1867年に書いた作品である。元は上演を目的としないレーゼドラマとして書かれたが、その後イプセンはこれを舞台で上演することになった。本来は舞台向きでないこの作品の上演に当たって、イプセンは音楽によって弱点を補うことを考えた。
そこで1874年に、当時作曲家として名を上げつつあった同国人のグリーグに、劇音楽の作曲を依頼した。》(ウィキペディアより)

この劇付随音楽から抜粋した組曲版(第一組曲、第二組曲)もある。声楽のパートや台詞を省き、楽曲の一部を削除したものだそうである。名盤がいろいろ存在するようなので、あとで物色してみよう♪

北欧といっても、わたしはこれまでシベリウスしか知らなかった、フィンランドの。
シベリウスにはヴァイオリン協奏曲が、グリークにはピアノ協奏曲があり、どちらも極めつけの名曲。参考までにlinkしておくと、ピアノ協奏曲はこちらで聴くことができる。

https://www.youtube.com/watch?v=O0iLAmvZ1ZE


悲しいとか、うれしいとか、人はごく単純に、そういうことばを用いて、感情を表にあらわす。
「それじゃわからない。悲しいとはどんな、うれしいとはどんなうれしさなの。もっと具体的にいえば、どういうこと?」
それに答えてくれるのが音楽。
「ソルヴェイグの歌」とソプラノ=ルチア・ポップの存在を、記憶にとどめねばならない。
こころの奥底をゆるがすような、じつにチャーミングな美声である。

グリークの「ペール・ギュント」が持っている、ことばを超えた哀愁の調べ。
なんというべきか戸惑うが、ここには、大いなる祈りに通じる、厳粛というか、敬虔というか・・・そんな雰囲気がたっぷりと響いている。ノルウェーの人びとの“歎きの歌”が、民族的な叙事詩を背景とした、深沈たる世界へと聴く者をいざなう。

うーん、こんな音楽を聴きたかったのだ。さがしていたといってもいいかもしれない。なぜかはわからないけど。
人間とは自分がいずれ死ななければならないことを知っている、唯一の生きもの。
悲しく響くのは、根源にそれがあるからだ。

北欧の二人の巨人。
フィンランドのシベリウス、ノルウェーのグリーグ。
残念ながら、日本近代は、音楽界にこういう国民的な作曲家を持つことがなかった。だから、戦後になって、武満徹さんに期待するものが大きかったのだ。
西洋音楽の体現者、その一番見事な例が小澤征爾さんということになるのだろうが、小澤さんは、音楽のつくり手ではなかった。

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