12月21日冬至に横浜で開催される、糸魚川ヒスイ製クリスタルボウルのお披露目イベント「縄文の響き」で演奏するために、久し振りに縄文時代の石笛レプリカを作った。
右が熊本県宇土市の轟貝塚出土の石笛レプリカ(http://nunakawa.ocnk.net/product/529)
左が青森県六ヶ所村の上尾駮遺跡出土の石笛レプリカ(http://nunakawa.ocnk.net/product/531)
普段作っている石笛は現場合わせの即興的なデザインだが、出土品の実測図通りに忠実に作るレプリカなので、結構作るのは大変な作業。
ところが久方ぶりに作ってみると、すいすいと仕事が進み、精度も増して、驚くべき事に以前より音域が広い石笛が出来上がった。
なんと二つとも2オクターブを優に超す音域!これにはビックリ。
工作機械、工具の改良や、工程の見直しを地道にしていた結果なのか、それとも私の石笛演奏が上達したのか?
真相は謎であるが、2オクターブ超えの石笛とは縄文人やるぢゃないの!
二つとも貫通孔と音階変化用の指孔を持つことが特徴だが、熊本と青森という離れた地域で、しかも出土時期が最大で二千年ほど隔たっている事が不可解・・・この構造の石笛は他の遺跡から出土しないのは何故なんだろうか。
縄文時代後期(四千~三千年前)の上尾駮遺跡出土の石笛はヒスイ製。他に数点の類似石笛が出土している。こちらは2オクターブ超えの音域!
やや大きい轟貝塚出土の石笛レプリカは蛇紋岩で作ったが、実物は黒色石灰岩製。なんと驚異的な2オクターブ半近い音域を持っていた!
轟貝塚出土石笛は「前期(六千~五千年前)の貝塚から出土した西日本で初の石笛」と紹介されているが、詳細を宇土市教育委員会に問合せたら、実際には中期(五千~四千年前)との攪乱層からの出土だそうだ。つまり河川の氾濫などで乱れた層からの出土なので、最大で六千年前、最低で四千年前の出土品である。んんん?・・・四千年前だとすると上尾駮遺跡と同時期だ!
今回のイベント主催者は、世界を股にかけて活躍するクリスタルボウルマスター牧野さんで、縄文に興味があるそう。
今後も縄文イベントを仕掛けていきたいから、是非にともと声をかけられている。
有難いことに五千円という決して安くは無い入場料なのに、12月10日時点で昼の部は完売御礼で、夜の部のみ若干チケットが残るという大盛況の予感で、全国から縄文好きが集まるようだ。
ネット検索すると、縄文時代の石笛と称してヒスイ大珠を石笛と誤認、あるいは独善的に紹介されている事が多いのだが、私が作っているのは考古学的に石笛と推定と報告されている正真正銘の縄文石笛。
そりゃ大珠にも貫通孔が開いているので、石笛上級者ならとりあえず吹けば音は出るだろうが、問題は大珠の孔の直径が3~4㎜と小さ過ぎるし、孔の深さも30㎜前後・・・これじゃ吹いている本人にしか聞こえない小さな音しか出ないだろうし、勾玉だって石笛という可能性もあるよ(笑)
私が創った石笛デザインをパクッって売っている人には興味もないことだろうが・・・。
とにもかくにも、長年、地道に取り組んできた縄文石笛が、ついに公の場で披露される。
こんな嬉しいことはない。