石目が斜めにざっくり入った地味なヒスイ・・・。
一般的には傷物扱いで使い物にならんとされるが、こんなヒスイに出会うと私は「世界のクロサワ」の眼になり、引き出すべき個性を探す。
透過性の良さを活かして、反対側の光が透けて見えるくらいまで薄く作り、石目に沿った蕨手紋を線刻。
石目を模様として感覚できればいいのだが。
持った指が透けて見えるくらい薄く作ってあるので、石笛が共鳴振動してくれるので倍音成分が非常に豊富。
微妙な曲線と徹底的な研磨に拘る・・・私の石笛を真似する同業者は多いのだけど、みなさん手間暇を惜しんでおられるようで直線的デザインが多いようですな。
縄文前期のヒスイ大珠は加工技術の未発達もあってか、石目や不純物も「ひとつの世界」とでも言いたげな作りだが、弥生時代以降は完全無欠な綺麗な部分だけで勾玉を作る傾向が強くなる。
私の目指す縄文スタイルは、アンチ完全無欠。
良質なヒスイの入手が難しくなった昨今、欠点をも個性と捉えた作品作りをしていかないと、冗談抜きに近い将来に廃業もあり得ると危惧している。