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布張りの複葉機で「特攻させられた」若者たち・・・永沢道雄著「ひよっこ特攻」

2025年01月31日 06時26分52秒 | 記録しておきたいヒト・モノ・本・映画
本書は太平洋戦争末期の沖縄戦で「赤とんぼ」と呼ばれる複葉の93式中間練習機で特攻「させられた」学徒出身士官たちの記録だが、軍隊の編成から推測すると、おそらくその3~4倍の予科練出身の少年飛行兵が「特攻させられた」のではないか?
学徒出身士官は「学業なかばで戦場に駆り出された悲劇」として語られることが多く、NHK特集などでも真珠湾攻撃のニュース映像と共に、雨の神宮球場で出陣式をするニュース映像がよく利用されるが・・・特攻の悲劇は学徒兵のみならずと声をあげたい。
 
経済的な理由で進学できなかった優秀な少年たちが、大空に想いを馳せて目指したのが海軍の予科練や陸軍の少年飛行兵たちで、彼らの特攻が紹介されることが少ないのは、あまりにも気の毒過ぎる。
 
沖縄戦ともなると陸海軍とも練習機まで特攻機に動員したし、特攻隊員は部隊配属と同時に否応なく任命した。志願なのではなかったのだ。
上空で目立つように橙色に塗装されたので「赤とんぼ」と呼ばれた93式中間練習機は、特攻の際には深緑に迷彩塗装されていた。
 
マリアナ海戦以降の米海軍は、対空レーダーで誘導された迎撃機が倍以上の兵力で待ち構えていたし、運よく逃れてもレーダー照準の対空砲火や、命中せずとも近接するだけで爆発するハイテク砲弾(VT信管)の弾幕を張ったので、ベテラン搭乗員が操縦する攻撃機すらも寄せつけなくなっていた。
 
ところが鈍足で低空を飛ぶ布張りの複葉機は、レーダーでとらえにくい上に、弾丸が命中しても機体を突き抜けてしまうので、装甲のうすい駆逐艦などに対しては予想外の戦果を挙げている。
 
士官と下士官兵では扱いがまるで違うのが軍隊で、衣食住や給与、遺族年金にも格差があった。
 
戦時中まで大学に進学できたのは、都市部の中産階級以上の子弟に限定されたエリート。兵役を逃れるために進学した人もいたらしいが、「聞けわだつみの声」に代表されるように、遺書は死を哲学的に解釈して受容しているものが多く、その心情に共感して取り上げやすい部分はあるとは思う。
 
軍隊に入る前は自転車を見たこともなく、白米を食べたこともないような地方出身の貧困層10代の少年たちの遺書は、天皇のため、国体護持といったイデオロギーとは無関係に、親孝行する前に死ぬことを詫びる内容だったりと平明で簡潔だ。
 
「特攻させられた」少年たちのこと、遺された遺族の戦後のことも顕彰してほしいものだ。予科練は満15歳で受験できるので、最年少の特攻隊員は16歳だったろうと思う。