大首飾りには滑石製の勾玉23点と管玉2点が含まれ、実物を観察した際に、紐孔が線状に広がって壊れかけている勾玉があることに気付いた。
滑石は道路にお絵描きする蝋石と同じ物で、非常に柔らかく、紐孔に通した絹紐が大首飾りの自重で広がったらしい。
レプリカ完成後は「松浦武四郎記念館」に展示される事になるそうだが、イベントなどで首に下げることも想定されるので監修者と協議の上、丈夫な蛇紋岩に代替する事になったが、蛇紋岩は研磨すると黒ヒスイ製と誤認されてしまうほど綺麗に仕上がり、滑石とは色も質感も大分違う問題がある。
蛇紋岩製の勾玉と管玉。同業者から黒ヒスイ?と誤認されることもあるくらいだが、縄文時代の糸魚川では磨製石器が作られていたくらい堅牢な石材なのだ。
そこで中研磨で切削傷、研磨傷を取り除いた勾玉を、バレル研磨機に入れて艶消ししてみた。
バレル研磨機は振動式と回転式があり、私のは小型の振動式だが、どのタイプも樽の中にセラミックビーズや堅い石材、金属などのメディア(媒材)を入れて、自動回転させる事で研磨する機械。
バレル研磨機で艶消ししてみたが、滑石に近くなったもののまだ違う。丁寧に作り過ぎるから近代的過ぎるという自覚もあるのだけど、下手糞と思われたくないという悲しい職人の性で作り込んでしまい、見栄との闘いでもあるから困るのだ(笑)
因みにヒスイ加工におけるバレル研磨は、研磨を終えた後に仕上げの光沢を増すことに使用されることが多いが、私は手研磨で鏡面仕上げにすることに拘っているのでほとんど使わず、今回のように艶消しで活躍する。
メディア(媒材)や研磨剤を変えたりする事で、求める研磨度合いにできるので、鏡面仕上げ専用の機械という訳ではなく、今回は粗仕上げ用のメディア使用。
次なる手は苛性ソーダに漬け込んでケイ酸分を劣化させ、それでも駄目なら焼いて白っぽく変色、それでも駄目なら・・・と奥の手を思案。
四六時中こんな工夫を考え続けているので、疲れきっていても熟睡できない。
一筋縄では行かず、苦労が絶えないけど面白い。