縄文人(見習い)の糸魚川発!

ヒスイの故郷、糸魚川のヒスイ職人が、縄文・整体・自然農法をライフワークに情報発信!

艶消し研磨・・・大首飾りプロジェクト

2018年06月05日 08時42分22秒 | ぬなかわヒスイ工房

大首飾りには滑石製の勾玉23点と管玉2点が含まれ、実物を観察した際に、紐孔が線状に広がって壊れかけている勾玉があることに気付いた。

滑石は道路にお絵描きする蝋石と同じ物で、非常に柔らかく、紐孔に通した絹紐が大首飾りの自重で広がったらしい。

レプリカ完成後は「松浦武四郎記念館」に展示される事になるそうだが、イベントなどで首に下げることも想定されるので監修者と協議の上、丈夫な蛇紋岩に代替する事になったが、蛇紋岩は研磨すると黒ヒスイ製と誤認されてしまうほど綺麗に仕上がり、滑石とは色も質感も大分違う問題がある。

蛇紋岩製の勾玉と管玉。同業者から黒ヒスイ?と誤認されることもあるくらいだが、縄文時代の糸魚川では磨製石器が作られていたくらい堅牢な石材なのだ。

 

そこで中研磨で切削傷、研磨傷を取り除いた勾玉を、バレル研磨機に入れて艶消ししてみた。

バレル研磨機は振動式と回転式があり、私のは小型の振動式だが、どのタイプも樽の中にセラミックビーズや堅い石材、金属などのメディア(媒材)を入れて、自動回転させる事で研磨する機械。

バレル研磨機で艶消ししてみたが、滑石に近くなったもののまだ違う。丁寧に作り過ぎるから近代的過ぎるという自覚もあるのだけど、下手糞と思われたくないという悲しい職人の性で作り込んでしまい、見栄との闘いでもあるから困るのだ(笑)

 

因みにヒスイ加工におけるバレル研磨は、研磨を終えた後に仕上げの光沢を増すことに使用されることが多いが、私は手研磨で鏡面仕上げにすることに拘っているのでほとんど使わず、今回のように艶消しで活躍する。

メディア(媒材)や研磨剤を変えたりする事で、求める研磨度合いにできるので、鏡面仕上げ専用の機械という訳ではなく、今回は粗仕上げ用のメディア使用。

次なる手は苛性ソーダに漬け込んでケイ酸分を劣化させ、それでも駄目なら焼いて白っぽく変色、それでも駄目なら・・・と奥の手を思案。

四六時中こんな工夫を考え続けているので、疲れきっていても熟睡できない。

一筋縄では行かず、苦労が絶えないけど面白い。



娑婆の風・・・大首飾りプロジェクト

2018年06月01日 07時45分32秒 | ぬなかわヒスイ工房

細長い円筒形の真ん中に孔が開いた管玉(クダタマ)は、精度のいい孔を開けるのが勝負の分かれ道。
古墳時代には直径3㎜の出土品まであり、その多くは片側から穿孔されていて正に神業。

私の場合は原石を少しだけ大き目に作った四角柱に墨掛けして、超音波孔開け機で直径1㎜程度の下孔を開けてから、リューターという手持ちの回転工具で実測通りの寸法に広げている。その後に開けた孔を基準にして成形・研磨している。

超音波孔開け機は、超音波振動させたニードルに金剛砂を水で流して孔を開ける機械。私のような量産しないヒスイ職人にとって必要ないのに、何故か2年前に急に欲しくなって大枚をはたいて購入したが、微調整が難しくて滅多に使っていなかった。

 

因みに私が買った超音波孔開け機は安い中国製で、金剛砂の流れが安定せず非常に使いにくく、不良品かと思ったくらい。

そこで金剛砂の流れが微調整できるようにカスタマイズを繰り返した結果、流れが絶妙になってくれてサクサク孔が開くようになった。

機械は自分で工夫して育てるものですなあ。

とっかかりに小さな窪みを掘ってから、超音波振動させたニードルを当てて金剛砂を流して孔が開く仕組み。この機械が無かったら大首飾りの管玉が作れなかったが、使うアテもないのに買ったのは予期するものを感じたのか?無理して買ってよかった。

 

72点もある大首飾りの管玉は、全て長さも直径も孔の寸法も違うのだけど、最大の問題は長さ20㎜×直径4㎜の管玉。
直径が細くても長さが短いと精度が出やすく、長くなるほど難しいのだ。


直径4㎜のど真ん中に孔が開いた時、「やった~!」と子供のように声をあげた・・・。


作業中は深海にいる感じ。

仕事を終えてフラフラになって工房から出ると、外気が心地いい。

任侠映画じゃないけど、娑婆の風というヤツ。

風が軽く感じるのは夏の兆しか。