所用で訪れた高崎市吉井町が、江戸時代に「西の明珍、東の吉井」と謳われたブランド火打ち金の「吉井本家」発祥の吉井宿であることに現地で気が付き、ひょんなことから自宅で「あかりの資料館」という無料私設博物館を営む館長の指出(さしで)さんと知遇を得た。
吉井郷土資料館発行の解説書には、火打石の歴史から使用方法までが詳細に記載されており、差出さんが実演モデルにもなっている。
火打石の実演をする差出館長。火打ち金や灯り文化に並大抵ではない見識とコレクションを持ち、話していて愛情をヒシヒシ感じる。
展示品の説明が無いような「予算があるのでとりあえず作りました!」という感じの公立民俗資料館は数あれど、あかりの資料館は説明書きの詳細さと収蔵品の希少さに驚くが、差出館長の情熱の現れだろう。
敬意を持って「火打ち金仙人」と呼ばせていただくが、コレクションの中には根曲がり竹やダケカンバの樹皮の燭台などもあり、訪れるとサバイバル技術のヒントになることは請合える。
乾燥させた根曲がり竹を鎌に開けた孔に差し込むだけという、目からウロコが落ちる簡素な燭台。明るくはないだろうが知っていればイザという時に役立つ生活の知恵。
樹皮を剥いで丸まったままを燃やす燭台は、白樺とあるが恐らくダケカンバの樹皮だと思う。円筒形に丸まったダケカンバの樹皮は現在でも薪ストーブの着火に使われるためか、海岸に漂着していることが多く、5年前の海のヒスイロード検証実験航海の時は焚火の焚き付けで活躍した。
差出さんと1時間ほど話し込んだが、本職はボイラー設備会社の社長で、趣味が高じて私財をなげうって自宅横に「あかりの資料館」を作ったのだとか。
近頃は差出さんや青森の左京窯さん、オランダの考古学者イローナ先生のような本気の人に出会う事が多く、有難い。
取材を受けたりで多少の縁があるビーパルやフィールダーといったアウトドア雑誌で取り上げて欲しいものだ。