蒼太は人ごみや子供の奇声、スケボーが苦手でした。
区役所横の広場は、夕方になるとたくさんの子供が遊んでいます。
スケボー少年がザーッと芝生の広場の周りを走り抜けます。
仕事を終えた区役所の職員が帰宅を始めます。
ベンチに腰掛けた老人たちがおしゃべりをしています。
お散歩のワンコがこちらに向かって吠えながら通り過ぎます。
そんな賑やかな場所です。
蒼太にとってはたくさんの苦手な刺激が揃っていました。
私と蒼太は、この場所で2人の世界に集中する練習を重ねました。
どんな状況でも集中し実力を発揮できなければ、競技はできません。
何か(例えばチョークチェーンやご褒美)を使えば集中させることができるとか、
そんなんじゃダメだって思ったのです。
「何もなくても集中できる」ために試行錯誤し続けました。
何をしたからできるようになったと言う明確なものはありません。
ただ思いついたものは全てやりました。
先が見えずに落ち込んだこともありました。
やり続けているうちに集中の作り方を私がわかってきたような気がします。
同時に、今まで教えてなかった細かい部分がたくさんあることに気づきました。
私にとってこの気づきは嬉しいものでした。
なぜなら、教えれば伸び代はあると思えたからです。
もしも、手詰まりだと思って悩んでいる人がいるなら、諦めないでほしい。
そこからが始まりだとわかる日がきっと来るから。