オクテック ガレージ ブログ OKU-TEC garage

大した人生ではないけれど,それでも読み返せば思い出されるあのときのこと.消えないように,そして生きた証になるように

NSR50のシリンダーの合わせ面に付いた打痕をフライス盤で削ってみた 姉の家のエアコン取り付け

2015-08-05 01:31:25 | バイク関係の修理
昨年末まで一緒に住んでいた姉親子が近所に住んでいます。

初めての夏でまだエアコンもなく、猛暑になる前に何とかしてあげないとと思っていました。




昔は親父によくエアコンの取り付けを手伝わされました。
“門前の小僧習わぬ経を読む”ではないですが、何となく取り付け方法は分かっていたつもりでしたが、親父が亡くなりいざ一人で
付けるとなったときは、あの世から帰ってきて欲しいと思ったものでした。


今回は電気工事や壁の穴あけもなく、配管の化粧カバーも不要だったので単純に室内外機を取り付けて配管をすればいいだけでした。
ただ、親父が使っていた真空ポンプが壊れてしまっていたので、電気工事屋をしている幼なじみに真空引きだけ頼もうと思っていました。


そんな話を相談したら『明日の夜なら動けるよ』って言ってもらえたので、半月ほど前になりますが会社から帰ってきてその足で取り付けに
行ってきました。


時代と共に配管に巻く化粧(保護)テープも良くなっていたり、フレアのツールも精度良く作業できるようになったり、真空ポンプもずいぶん
小型になっていました。

なにより、良い道具を使っているなあと思いました。


結局、手伝いをお願いしたはずが、ささっと全部やってくれて、私が手伝いする側になってしまいました。(川ちゃん、ありがとね)

『National』の文字。
2000年とあったので15年前の新品エアコンです。









彼には子供が四人いて上二人はとっくに成人していますが、下の女の子二人はまだ高校生と中学生でどちらも新体操をしています。
高校生の子は大阪でも一位二位にいるくらいの選手。

面倒見が良い彼は、駅まで送り迎えしたり、大会があったら毎回応援にいったり、奥さんと一緒になって新体操のレオタードを作ってあげたりと、
自分のことは後回し。
彼もバイク乗りでカワサキのゼファー1100を持っていますが、なかなか乗ることができないでいます。



新体操も年齢が上がってくると練習などは男親が出て行きにくくなるそうで、そのお陰で少し時間が作れるようなってきたので、昔やっていた
ミニバイクでサーキットを走るのを復活させようと思っていると話してくれました。

仕事と家庭の合間をぬって、昔乗っていたホンダのNSR50を引っ張り出してきて仲間内でワイワイといじったりしていました。

自分達でいじったり、部品も仲間が提供してくれたりと小遣いの範疇で楽しんでいる、そんな楽しみ方です。



子供のために頑張っている彼が少し“自分自身”の時間を楽しんでいるのを見てちょっと嬉しくなりました。

“お父さん”の部分と“自分”の部分。どちらかに偏るのではなく、どっちかというと『お父さんの余った時間を自分に充てる』ってのが
良いように思います。



平日のある日、幼なじみからサーキットをNSRで走る写メが来ました。
楽しそうでした。

ただ、終盤にさしかかったところで突如エンジンが止まってしまい、あとで調べたら焼き付いてしまっていたそうです。


オーバーサイズのピストンキットも有るらしいのですが、いつまで補修パーツが供給されるかも分からないので、先ずは純正で行くことにして
仲間が持っていた中古のシリンダーを使うことになりました。








ただし問題があって、なぜかシリンダーの上面に打痕があって、このままでは冷却水が燃焼室に入ってしまい使えないというものでした。






アルミ製のシリンダーと思ったら全部鉄でできていました。

いったいどうやったらこんな所に打痕ができるのか、なんて話を幼なじみと夜中に交わしたりしました。






傷を消すくらいに削れないかと相談されたのですが、精度を出すためには大きな刃物で一発でひかないと(削らないと)いけないし
やっぱり本来ならこんな仕事は内燃機屋さんやで、って話をしましたが、そこは仲間内のことですし、趣旨からして試しに削ってみることに
しました。



あまり手間暇を掛けて時間が掛かるのも良くないので、できるだけササッと、そんな風なことを頭の片隅において作業することにしました。


テーブルへの固定は簡単にバイスで固定です。
ただ形状が単純ではないので、そのままでは隙間ができるため、しっかりと固定は無理。






娘も幼なじみのことを気に入ったみたいで『かわちゃん、いる~?」ってよく尋ねるようになってきました。






バイスへの固定はアルミのパイプ材(不要になったアンテナのエレメント)をかませて、押しつぶして面当たりするようにしました。







油圧バイスなのですが、油圧だと把握力が伝わりにくいので機械締めに切り換えて手応えを感じながら締め込みました。
・・・・って書くとそれっぽいので書いてみました。



一回で全面を切削しないと精度がでないため、手持ちで一番大きな刃物である“フルバック”を使うことにしました。
精密加工用のマキノのKシリーズでフルバックなんか使ったら笑われると言われたりするほどなので、使うこともなかろうと思っていましたが、
Φ100mmで有効切削径がΦ95mm。丁度シリンダよりも一回り大きかったので助かりました。




フライス盤のチャックは主軸の上から『ドローイングボルト』と呼ばれる長いボルトで吊り上げられて取り付けられています。





ドローイングボルトを緩めても貼り付いてしまっているためそのままでは抜けず、普通は上からハンマーなどで軽く叩いて取り外すのですが、
マキノは精度維持のため、叩かなくていいように少し凝った造りになっています。

単純な構造ですが普段交換することがないので、ついネジの回す方向をわすれてしまいます。


『主軸のブレーキを掛けて、上から見て緩める方向に回すとドローイングボルトが強制的に下がってツールが外れる。』







フルバックを取り付けて







『上から見て締め付ける方に回すとドローイングボルトが引き上げられてツールが固定される』






“フルバック”ってこんなものです。








ダイヤルゲージを取り付けてシリンダートップをグルッを回して測定し取り付け精度を測ります。

1/100mmの振れ無し。打痕の所は5/100mm程度下がっていました。

切削量を教えてあげた方が良いかと思って別のダイヤルゲージでテーブル基準でイニシャルを出しておきました。






回転数は事前に工作仲間のkagayakiさんに教えてもらい600rpm。



様子見で削るか削れないかくらいで一発目をひきましたが、初めて使う大口径のツール、噛み込んだらシリンダーが吹っ飛ぶかも知れないので
ちょっとビビっててしまいました。






テーブルのメモリで0.1mm上げて試し削りしてみましたが、火花も飛び散ってむっちゃこわかったです。

結局その一発で打痕が消えたので、作業終了。

ダイヤルゲージの読み値で0.08mmの切削となりました。









幼なじみが一緒にいて切削中を動画を撮ってくれたので貼り付けておきます。




機械加工の師匠のkagayakiさんにこの動画を見せたら

『送りがむっちゃ遅いですね~。切削油なんか掛けたらヒートショックでチップがすぐにダメになりますよ』と教えてもらいました。






ただただ、吹っ飛ばないかヒヤヒヤしながらの作業でした。






頑張ってエンジン組んでね。


ではまた



ヤマハマグザム(CP250)にUSB&シガーソケットの取り付け.「バッ直」ではないですよ

2012-07-28 04:05:51 | バイク関係の修理
最近のスマホのナビ機能は結構優秀と聞きます.
ナビも高いのでセカンドカーにはスマホ+モニターでいいわと言う人もいます.

バイクについてもハンドルに取り付けるマウントステーも数百円から3千円程度で販売されていて
割と身近な存在になってきているようです.


取り付けは簡単になったものの,簡単ではないのが電源.
常時アプリを起動しバックライトを点灯させないといけないスマホナビでは,充電しながら
使わないと駄目なわけで,この電源確保が一般の人にはやっかいです.

でも世の中便利なもので,バイク用の防水USB+シガーソケットがちゃんと売ってあります.




両面テープとハンドルに固定する部品もついていて取り付けは簡単.お値段は2500円程度.




ただし身近な存在も良し悪しで,ネットのバイク整備のコミュニティを見ていると,あまりバイクや
電気に詳しくない人同士が取り付け方を相談し合っています.

中には「ええ?」と思うことが平気で書かれていて,それをダメ出しするコメントでヒートアップしたりと
読んでいて楽しく(失礼)なります.


このUSB&シガーソケットは二本の電線をプラスとマイナスに接続するだけなんですが
コミュニティでは「バッ直」(バッテリー直結?)とかいう造語がよく出てきます.

こんな感じ
「USBソケット付けるのに「バッ直」が簡単そうなので,そうしようと思ってるんですけど
何かまずいですかね」


最近できた造語であろう「バッ直」.
こんなアホそうな(重ね重ね失礼)ネーミングを聞くと何だかイラッとしてしまうのは
私だけでしょうか?


で職場の友人のヤマハのマグザムにこのソケットを取り付けることになったんですが,そこはやはり,
最近の流行をまねして「バッ直」というのにしてみることにしました.




うそです.そんなわけにはいきません.
こいつには12VからUSBの5Vに降圧するDC-DCコンバータが入っいるため,僅かながら電気を消費します.
なので基本に立ち返ってACC(キー)連動で電気を供給するように接続します.

A4で用意してもらった配線図をA3にコピーしなおして,目を細めてそれっぽいところを探します.
で,先日見つけた「オプションコネクタ」から電気を頂戴します.




私は被服の薄いAVS線が好きなので,何種類か巻きで買っているのですが適当な太さの電線が
ないときは使わなくなったカーナビなどのハーネスの電線を再利用します.


分岐を取るための結線部は芯線同士をよじってからスプライスで圧着します.
このスプライスは被服もかしめるちょっとステキなタイプです.




念のため半田付けしますが,芯線と被服を両方かしめてから半田付けすると,熱で被服が溶けるので
芯線を半田付けをして最後に被服をかしめます.




結線部はエンパイヤーチューブを通してその上から熱収縮チューブを被せ,二重に絶縁処理します.
3Pのカプラーは純正と同じ防水タイプ.




純正のハーネスに割り込ませるため後々グリップヒーターを取り付けることも可能ですし
不要になれば抜くだけで元通りに戻せます.




作業の合間の休憩は差し入れてくれたスウィーツをとら母も一緒になってごちそうになります.
寅次郎ももちろん一緒におやつタイムです.
この純真な目を見ると何とも言えない気持ちになります.




防水仕様のソケットとはいえ直接雨風に当てるのは何か嫌なものです.ハンドルに取り付けると
仰々しくなるので,適当なところがないかとさがしたら,ちょうどいいところがありました.

収まりがいいのでここにします.




テスターで通電を確認しておしまい!!




このハーネス作るのに3時間.自分の仕事遅さに呆れてしまいました..
ぱるぷのオーナーさん,また一緒にツーリングに行きましょう.
ハーゲンダッツのアイスクリーム,おいしかったです.


ではまた


ZZR-1100のチェンジシャフトの手作りオイルシール抜き(メール質問への回答です)

2012-07-23 00:10:01 | バイク関係の修理
以前に乗っていたカワサキのZZR-1100D

修理について以前HPに記事を書いていたところ質問メールをいただきました.
その回答をこちらでさせていただきます.




カワサキ車には決まって持病と言うのがあって(こんな事書くとカワサキファンに怒られそうですが),
その一つがチェンジシャフトのオイルシールからのオイル漏れ.

オイルシールの材質の問題か環境(ドライブチェーンに付着した泥や石コロといったものが
垂れてきてシール面を傷付ける)かは分かりませんが,ZZR-1100乗りではよく耳にするトラブル.





オイルシールはクランクケースのトランスミッションカバーに圧入してあります.
なのでこのカバーを外せば簡単にシールの交換は可能なのです・・・・が,さすがのカワサキ.

このクランクケースカバーをエンジン(クランクケース)から外そうと思ってもフレームが
邪魔して外せません.

「あかんやん」です.

普通なら数千円の工賃ですむところがエンジンを下ろさない(ずらさない)といけないため
万円単位の工賃が必要になります.

なので皆さんOリングピックアップツールと呼ばれる「せんまいどうし」みたいな先の
尖った細い工具でコジ取るのですが,小さなパーツなので取りにくく,下手をするとシャフトに
傷を付けてしまいます.

なので専用ツールを作ったというわけです.


図面はこんな感じ.
断面図が描き切れてなかったりしていますがそこはご愛敬.
それと寸法値が入っていますがあくまで参考程度にしておいてくださいね.




炭素鋼などで作ればいいのですが適当な材料が無かったのでステンレスの丸棒を旋盤で
図面の通り切削していきます.




こんな感じです.




これをグラインダーで溝を付けます.(手まで削らないように)




溝の幅や深さは「勘」です.




後端面にスライディングハンマーを取り付けるためのナットを溶接しておきます.




先端は「食い込まれる身になって」考えて研いでいます.いわゆるこれも「感」です.
大切なのは「そのモノの気持ちになること」だと思っております.




使い方は簡単
チェンジシャフトに通してハンマーで優しく叩くだけです.
ステンレスなんで工具として強度が足りないので「そっと」叩きます.
これも「ステンレスの気持ちになって」叩きます.




先端形状が「カエリ」になっているのでスライドハンマー(適当な重さのある塊)で引き抜きます.




気持ちよく安心して抜くことができました.




先端が潰れ無いように大切に使うと,まあまだ何回かは使えると思うのですが,バイクがもう無いので
出番はありませ~ん.


手作り工具(治具)のお話でした.

ではまた

GSX-R1000のLEDテールランプの修理

2011-11-12 03:31:32 | バイク関係の修理
行きつけのバイク屋さんから一本の電話.

「LED式のテールランプで点かないLEDがあるんやけど,補修部品として部品で出てないのでLEDだけ
交換するっていう修理はでけへんかなぁ?」と


ジャイアンのような店長なので早速,店に行ってみました.
(いろいろジャイアン兄ちゃんがいて大変です)

GSX-R1000の社外品のテールカウルだそうです.




非分解式な構造のためLEDを換える為には無理くり開けないとダメです.
プラスチックで出来ているので必ず割れたりヒビが入ったりします.
他人のモノですし,出来れば可能な限りきれいに分解してあげたい.

こういうのが一番苦手.精神衛生上よろしくありません.

で,店長さんに分解をお願いしましたら・・

何のためらいも無く・リューターでウィ~ン・ウィ~ン・・・と削っていかれました.

・・・うらやましい,その意気の良さ.


背面を削って中からLEDの基板を取り出してもらい,ここからが私の仕事.




LEDは9個あり,6個がテールライト用で,3個はウインカー用.
電源をつないで点灯させてみるとテールライトの3個が点きません.




LEDの交換との依頼でしたが,LEDが切れる(壊れる)事はあんなり無く,実装されているダイオードなど
他の素子の故障も考えられるのでチェックしてみます.


基板には白くコーティングしてあってパターンが見えません.
拡大鏡で見ながら薄っすら見えるパターンの影を追います.
(ジャンクキャノンG11に次いでまた拡大鏡を使った作業です.・・・面倒です)



ケーブルが断線しかけているのが分かります.
パターンのランド(ハンダ付けする部分)が小さいので,ハンダをやり直すと必ずといって良いほど
ランドが剥がれます.
単純な回路で面積的に余裕があるのですから,もっと大きめのランドに設計にすればよいのにと思って
しまいます.


単純な仕組みで部品点数も少なかったのでマジックでパターンを書き込み,何とか読み取って,
回路図を起こしました.




ブレーキとテールランプの明るさを抵抗で変えている単純な回路です.(ダイオードは流れ込みを
阻止するためのモノ)


抵抗とダイオードは共通系なので故障しているのはやはりLEDのようです.

さて3個あるLEDのどれが壊れているか・・・.
一個ずつ交換しても良いですが,サルではないのでテスターであたります.

テスターの導通(ブザー)モードで測定すると良品のLEDは薄っすら点灯してくれます.




壊れているLEDが分かったのでハンダ吸い取り器でハンダを吸い取ります.
間違いが無いか再度テスターを当てると,あれれ・・・点灯しています.

LEDが破損しているのではなく「天ぷらハンダ」のようでした.


念のため全てのハンダ付け部分にハンダを当ててやります.
基板の方はこれで完了.あとはこれを元通りにしなければなりません.


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残骸が残ったレンズ部の修正からです.




透明なレンズ部まで削らないように注意しながらリューターで削っていきます.




削りカスが飛び散るので,ビニル袋の中で作業します.
(オッサンなので身の回りを清潔にしないと嫌われますので・・・またビニル袋の中での作業です)




皮一枚残して削ると黒い部分の大部分がパキっと取れてくれました.あとはへばり付いた残骸を丁寧に
削り取ります.




レンズ内にLED基板を内装しフタをするのですが,適当なモノが無かったので1.4mmのアクリル板を
サークルカッターで円形に切り出してフタにします.





強度を上げ,ツバ付きにするため直径を変えてたモノを二枚用意しました.




アクリル用の接着剤を使いますが,スポイドで滴下するとス~っと隙間に入り込んで,完全に一体化してくれます.




基板をレンズに入れてフタをしてみましたが,かなりタイトで若干フタが浮いてしまいます.




あれこれしてみましたが結局作り直した方が良さそうなので新たに作り直しました.




基板に干渉する部分を大きく広げています.




今度はスッキリ収まってくれました.こういうことが意外と嬉しかったりします.




元々基板は固定したいなかったようですが振動もあるのでフタと市販のウレタン系の接着剤で
固定しておきました.




向きを間違えないように注意してアクリル接着剤で固定します.




最後にシリコン充填剤を詰めて防水処置をしておきます.




何とか完成しました.




見えない部分ですし,機能的にも点灯すればよいものだけに修理方法も人それぞれ.

複雑に修理をする必要も無いのかもしれませんが,やり始めると色々と考えが出てきて,つい時間が
過ぎてしまいます.

夜な夜なこんなことをしながら人生を送っています.




ではまた