マキノのフライス盤搬入の続きです.
搬入日の25日(日)の朝に何とか搬入できるまでガレージの整理を終えて約束の9時に丁度に
運送屋さんがやって来ました.
トラックの荷台に載せられた機械の背の高さを見たときちょっとびっくりしました.
我が家のガレージは店舗付き住宅の店舗部分.
古い建物なので入り口のドアの高さは180センチしかなく,おまけに道路までスロープがあって
搬入するのにちょっと厄介なロケーション.
長野に下見に行った際に入り口の寸法や道路幅などを予め機械屋さんに写真付きで伝えていたのですが
機械屋さんからは「大丈夫,腕の良い運送屋を行かせますよ」と.
さてどうなるか.
機械を設置する際に敷こうと予てから用意していたステンレス板があったので,それを使って
運送屋さんが上手に入り口をフラットにしていた.
厚みが6mmあるステンレス板.重さはざっと80キログラム.
エイ・ヤッっと扱うのを見るとやっぱり足腰強いなあと関心します.
ガレージ側から見た搬入口.
高さが足りずに機械が搬入できなかった場合,最悪サッシを破壊するつもりです.
いよいよ搬入.
先ずはフライス盤から.
入り口の高さ不足の他,出っ張った二階部分や看板が搬入の妨げになります.
機械重量は約1.5トン.バランスを保つようにナイロンスリング(吊り上げ用のナイロンベルト)を掛け,
ゆっくり吊り上げられます.
トラックと建物の間も狭いので降ろすのも慎重.
上部は看板に接触寸前.
どうせ看板は撤去するので当たっても大丈夫ですよと言ったのですが,そこはベテランさん.
無言でギリギリまで寄せます.
下は下でトラックとギリギリ.
機械をアチラに振ったり,コチラに向けたりと操作して無事着地.
二枚重ねのSUS(ステンレス)板でも機械の重さでたわみます.
倒れる心配はないと言っていましたが,それでも慎重に養生し移動用のチルローラー(機械移動用の
丈夫な低床台車)に載せます.
足下を固めてこれからガレージに引き込みます.
お尻側から搬入.
フライス盤のてっぺんにあるモータが二階部の出っ張りにすでに干渉して,このままでの搬入は無理.
このフライス盤はラム型といって斜めに穴を開けたりといった精密な加工が出来るように主軸頭が傾くように
作られています.
固定ボルト4本をゆるめ,ハンドルを回して主軸頭を回倒させていきます.
さすがのマキノもこの首が折れたような滑稽なかっこうは,ブサイクに見えてなりません.
これでも入り口のサッシにギリギリです.
右に重心が偏るのでテーブルを左に振って重量バランスを取っています.
このあたりの慎重さがベテランならではです.
お手伝いして少しずつ引き込んでいきます.
機械が中程まで入ったのですが今度はテーブルの左右のハンドルが干渉します.
テーブルを移動させつつ,チルローラーのハンドルさばきで入り口をパスします.
最後の難関.機械上部とサッシとの干渉.
隙間が5mmもありません.
敷いたSUS板が機械の重みでたわむとそれだけでサッシと接触します.
本当にギリギリ.
それでも無事引き込み完了.
ガレージ内も吊り物が色々あるので,主軸頭を寝かせた状態で設置場所まで移動します.
この日のために予てから用意していた機械の下に敷く敷板.
アルミの厚板です.
ガレージの床はコンクリートですが機械が重いので荷重を分散させるために予てから用意していた
厚さ5mmのSUS板を敷いてもらいました.
私は身長が高いので切削するポイントがアイレベルになるように敷板を敷いてフライス盤をかさ上げします.
30mmのアルミ板を3枚重ね,90mmアップです.
最後に機械のレベリング(水平出し)です.
ジャッキボルトを調整して精密な水準器でピッタリと水平をだします.
使用する水準器は一メモリが4秒(角度なので○度○分○秒と言う単位です).
4秒というと1mで0.02mmの高さ.
図で示すとこんな感じです.

(
RSK 新潟利権測範株式会社のHPから抜粋引用)
機械の水平出しは重要.毎日レベル出しをしている会社もあると言っていた.
基本はまず三点でレベルを合わすそうです.
探したら我が家にも精密水準器がありました.
長年フライス盤の導入を夢見てそれまで色々と周辺ツールをそろえてきたのですが,これが
いつどこから来たのかはもう忘却の彼方です.
バッチリと一メモリの狂いも無くレベリング完了.
無事フライス盤の搬入設置ができました.
お昼,簡単にですが食事を用意したのでご飯を食べながら色々とおしゃべりしました.
私より少し年上の方.
気さくな方で機械の話や搬入にまつわる話,バイクの話など.これまた楽しい休憩時間でした.
午後は自宅奥に置いていた旋盤をフライス盤の横に移動させます.
ささっと準備をしてあっという間に引き出す用意ができていました.
フライス盤と違い旋盤は横長の機械.
我が家の旋盤は森精機のMS-650という機械で長さ約2m,重さ1.8トンほどあります.
吊り上げたときに水平になるようにレバーブロックを調整しサクサクっと作業していきます.
自宅奥からガレージまでは傾斜があるので一旦トラックに載せて移動します.
旋盤の搬入もやっぱりギリギリ.
そこを無難にこなしていくのがベテランのテクニック.
運送屋さん曰く「経験の数」と言っていました.
旋盤もチルローラーに載せて移動します.
チルローラーの高さは8センチ.
「もしフライス盤が高くて入らなかったらどうするんですか?」と尋ねたら,
「チルローラーではなく,コロで転がすこともできるし,それでもダメなら鉄板を敷いて
滑らせる.それでもダメなら最後は『紙』.カッティングシートなんかの台紙のツルツルした
紙を敷いて滑らせますよ」と.
搬入手段を色々持ち合わせているから,全く焦りも無く搬入作業をこなしていました.
旋盤も敷板を敷いてかさ上げしてもらいました.
旋盤のレベリングも一メモリの傾きもなくピッタリ.
午後3時.無事全ての作業が終了.
長野からの運賃と旋盤の移動費合わせて12万円.
機械の下に敷くSUS板の準備は本来こちらでやっておかないといけない作業なのに気軽に
引受けてもらったり,片付けきれない荷物が点在する中で嫌な顔一つしないで搬入してもらって
この費用は非常に良心的な値段でした.
感謝です.
この時点で私は作業開始から35時間が経過.
フライス盤と旋盤のツーショット写真を撮るつもりが,てんぱってしまっていたようで,すっかり
忘れていました.
外に放り出した荷物の仕舞い込みをしてから気付いたけどそのときは時すでに遅し.
散らかったガレージの写真しか写せませんでした.
片付けが終わったのは夜9時過ぎ.
作業開始から40時間,さすがに疲れました.
中古機械は基本「現状有姿品」.実際に使うには自分で電気をつないだり,オイル交換をしないと
だめなので,稼働できるのはまだ少しかかります.
ガレージの整理もあるので,これからまた少しずつ作業をしていきます.
少しおしゃれなガレージにもにしたいですし,色々思いは膨らんでいきます.
フライス盤を買おうと思い始めて20年ほど経ちます.ようやくその夢が叶いました.
これからこれをつかう喜びを噛みしめながら,またモノを作る喜びに浸っていききたいと思います.
では,また