「ハイエース その7」でも触れた下回りの錆の話の続きになります。
以前乗っていた100系ハイエースですがタイヤハウスが朽ちて穴があいた経験があります。
11年落ち、走行14.5万キロの中古車でしたが前のオーナーさんが丁寧に乗ってこられた非常に程度の良いハイエースだっただけに悲し思い出です。
ハイエースを買うことを決め納車までの間ハイエースの足回りをいじる人のサイトを色々見てきましたが、そこに写りこむ下回りの錆。
いじっている内容より心に入ってくるのはそっちの方。
継ぎ目や開口部などエッジ部に錆が生じ塗装が変色していたりしていました。
錆と言えば"塩カル"(融雪剤)。
錆対策について熱心に語られているのはやっぱり雪国の人で、共通した意見は防錆塗装。それと絶対に必要と言われたのが「泥除け」でした。
自分が住む大阪では雪も潮風も無縁でそこまでこだわる必要もないかと思います。
ただ冬にも旅に出たいですし、その時もし雪道に出くわしたときに車が傷むことを気にせず走れる"余裕な気持ちを味わいたくて"防錆塗装をしようと決めました。
なにより"ハイエースだったから"かもしれません。
これが現状の純正防錆塗装。
波打った模様が出るくらい厚みのある塗膜。意外と厚いなと思いました。
防錆塗装については知識もなくネットで調べたんですが、何を見ても最後に辿り着くのは「ノックスドール(Noxudol)」と言うものでした。
製造元はスウェーデンのオーソンという会社で日本の総代理店は「株式会社創新」と言う会社でボルボ純正指定とありました。
創新のサイトで施工店を検索してみるとやっぱり北国が多く、潮風対策のためにか沖縄にもありました。
大阪は少なく4店舗。そのうちの一つがたまたま隣町にありました。
施工することを決めたものの結構な費用ですし、何よりそのショップがどんなところかも分かりません。
技術力はあるのか、丁寧な作業をしてもらえるのか。買ったばかりの新車を預けるのですからなかなか踏ん切りがつきませんでした。
ためらいながらも納車が間近に迫り、思い切って問い合わせをしました。
メールで何度かやり取りしましたが思うように話が噛み合わず、最終的に出向いて話をして相手の事を知り、依頼することにしました。
施工期間は一週間、ただし予約待ちで施工は一か月以上先の4月に入ってから。ただしコロナ禍でキャンセルが出る可能性もあるので、そうなったっら
早まる可能性もあるということで少し期待して待つことにしました。
行ったときにはジムニーが施工中でした。
3月も半ばを過ぎ、施工日がいつなのか連絡もなく、持ち込む際の段取りとか気になりながらも待てど連絡がなく、こういった時に待ってて良いふうになったことないので、
こちらからメールしたみました。
そしたら・・・・・
「予定通りで大丈夫です」との返事。
予定通りって聞いてませんけど? ひょっとしてメールの不達でもあったのかと思い、
「いつ連絡いただけましたか?」って聞いてみたたら、そのことよりも
「無理ならキャンセルしますか」と噛み合わない返事。
どうなってるの?? って思ったりしましたが、塗ると決めたので要らぬ波風立てないようにグッと我慢して車両を引き渡しに行くことにしました。
対応されたのは別の方でしっかりした人で話が通じ、実際に施工する人を交えて具体的な作業内容を詰めることが出来ました。
車を残して帰るのに後ろ髪引かれたのはハイエースが初めてでした。
(ここに預けて歩いて帰ったのがこの日記の時でした。)
塗装は下地が大切。
ですが下回りなんて泥汚れに剥き出しの部品や配管、配線だらけ。
ボディの塗装のようにきっちり脱脂なんかできるわけでもなく、スチーム洗車なんかしたら水が抜け切らないところも出てきて、そういった所こそ逆に防錆しないといけない所。
少しでも良いコンディションにしておこうと思い、雨の日は勿論、ひたすら防錆塗装が終わるまで乗るのを控えました。
気になるは作業の丁寧さ。
特に脱脂なんて手間が掛かるところをどうやるのか。
人によったら「その状態で塗るかっ!?」ってこともあり得る話です。
これって技術力云々じゃなくその人の性格。
似たような話で家を建てるときの事。
監督に任せっきりじゃダメで、やっぱりちゃんと見に行くことで現場が締まって良いって聞くので、近いこともあって見に行くようにしました。
作業初日の夜。この日は外せる部品の取り外しとマスキングが行われていました。
新車でも錆びていると言われているハブ。
表面は研磨仕上げなのでしょうか。鉄がむき出しでやっぱり少し錆びてました。
前後バンパーを外しての塗装はオプションで別料金。
フロントバンパーは脱着時に傷が入ったりすることを懸念して、作業性や塗装範囲などを相談し外さないでタイヤハウス側からの塗装のみにしました。
幸いタイヤハウスからフロントバンパーまでは距離もなくタイヤハウスからある程度塗装ができるのと、後々ホーンやフォグランプをLEDに換える際に外すのでその時に自分で塗ればいいので
よしとしました。
リア側は自車のタイヤで塩カルを巻き上げるので重要な箇所。バンパーの着脱は容易なので外して塗装してもらうことにしました。
標準作業で外せるものは外し、回転部分や外すとリスクのあるものはマスキングしての塗装との事。
マフラーの遮熱板などはちゃんと外されていました。スペアタイヤの保持金物も勿論外されています。
下の写真はリアバンパーが外され、バンパー下の黒いベース金具は残された状態となっていて通常はこの状態で塗装するらしいのです。
その他配線配管を留めているステーがボディに残っていたので、せっかくなので外してもらい可能な限りボディに塗膜が付くようお願いしました。
余談ですがスペアタイヤを止めたらハイブリッドのバッテリーも置けそうなのでハイエースもハイブリッド化できそうな気がします。
二日目
ボディ側のマスキングの途中でした。
見に行くと毎回リフトアップしてくれてその日行った作業を説明してくれます。
先日お願いしたリアバンパーの黒いベース金具は外されていました。
配線配管を留めているステーも忘れずに外してくれていました。
(こういったその場で依頼した箇所へはマスキングテープを都度チョンチョンと貼っていって依頼箇所が分かるようにされていました)
作業3日目
裏側(下側)から塗装していくため塗料ミストがボディ表面に回らないように腰下までマスキングされていました。
非常に丁寧にマスキングされているのが分かるかと思います。(ほんと丁寧な方でした。)
防錆塗装は「ベース部分をボディに残しその上から塗ってしまうか」、「ベース部は塗れないが外すことでボディをきっちり塗るか」の二択。
ノックスドールは従来の塗料と違い完全硬化せず半乾きが持続します。
そのことをよく分かっていないまま「外したやつは単体で塗ってもらえませんか。」と尋ねたりしたのですが、よくよく考えると塗った部品は乾かないので
持つこともままなりません。
後になって乾ききっていない部品を後から取り付けるって難しいなと気付き、無理なことを言ってしまったと思ってしまいました。
ですが
「考えたんですが、工夫すれば塗ってから取り付けれそうなので外した部品も塗ります」と返事が返ってきました。
外されていった部品ってどうなっているのかと辺りを見まわしたらリアバンパーは袋に入れられてちゃんと保管されていました。
こういった中空になった閉塞空間はゴム栓を外して長い特殊な噴霧パターンを持った長いノズルを突っ込んで塗装されます。
中空構造になった部分に塗るのはノックスドール750という半透明な塗料です。
長いノズルの先端には四方に噴射されるノズルが付いていて穴に突っ込んで噴射しながら引き抜くことで内面が塗装されます。
作業4日目
この日、平日でしたが休みだったので昼から作業を見ることが出来ました。
車体のマスキングは全て終わっていました。
ボディと下回りの境界、タイヤハウスやリアバンパーを外したところなど、どこで縁を切るかなど質問したりして、その人の仕事への考え方なんかを探ってみたりしました。
車の底が塗装ブースになるため全体をコロナシートで覆います。
今回担当してくれた方は非常にまじめで誠実な方でした。
慣れた作業でありながらチャチャっとするのではなく無駄がない動きで一つ一つ丁寧に作業されていたのが印象的でした。
車体だけでなくリフトにも塗料が付着しないように電熱シーラーを使って養生していく姿は丁寧さ満点って感じでした。
意味もなくこのシーラーが欲しくなってメーカーと型式をメモっしまいました。(テクノインパルス クリップシーラー Z-1)
全ての養生を終え、これから各部の脱脂を行い塗装が行われてきます。
中空部の塗装をノックスドール750で塗り終えてあって、依頼するときに「脱脂作業などどうされているんですか?」と尋ねたことを覚えてくれて、
その作業を見せようと準備してくれていました。
感謝です。
メインで塗るノックスドールの1600です。
非常に粘度が高いです。
そのままでは塗りにくいので脱脂作業の時間を利用して湯煎をしていました。
脱脂作業はシリコンオフを噴霧してウエスで拭き上げる手作業でした。
ウエスを次々換えながら丁寧に拭き上げられていきます。
錆びの上からでも塗れるかもしれませんが、いくらいい塗料でも泥やホコリが付いたボディに塗られるのを見るのは悲しすぎると自分は思います。
作業される人がどんな人が分からないままの依頼。
良い人だったらいいけどそうでなかったらソコソコで下地処理(脱脂)を切り上げて塗るでしょう。それは仕方がないこと。
だからせめてどんな人が塗ってもそれなりの結果になるように依頼する側にできる努力といえば
"乗るのを我慢して良い状態で引き渡すこと"だと思いました。
この脱脂作業を気持ちよくしてもらうためには、そう考えると新車時が一番だと思います。
タイヤハウスはノックスドールではなくエンメイ 650という塗料で塗られていました。
缶を見てもらうと分かるかと思いますがこれは単なる着色剤。
本来ならノックスドール1600を塗りたいところなのですがタイヤハウスの波打った純正防錆塗装と相性が悪いらしく、新しいと剥がれてボディに付着して真っ黒に
汚れてしまうということで現在は塗布しないように指示が出ているそうです。
いろいろアレンジを提案してメーカーに確認してもらいましたがどれもリスキーだったので諦めましたがこれは残念でした。
他が黒色なのにタイヤハウスが白のままなのは変なので色合わせのための塗装というわけです。
タイヤハウスは先にエンメイ650を塗るってからシャーシにノックスドール1600を塗るのが順序とのことでしたが、見ていると先にエンメイ650を吹くため
多少ですがシャーシにも付着していました。
思うに本来シャーシにはノックスドール1600が先に付着しておいてほしいところ。
そのことを伝えたところ、快くシャーシに付着したエンメイ650を除去されてノックスドール1600でシャーシを塗装してからエンメイ650を塗ってくれました。
「何故先にエンメイ650を塗るのですか」と尋ねたら、後から塗るノックスドール1600の境界が分かるようにと言われていました。(間違っていたらごめんなさい)
「なぜ、わざわざ拭き取ってまでしてもやってくれるのですか?」と尋ねたら
「自分も考えて作業していますが、お客さんの言われたことの方が塗装にとって良いかと思いましたので」と返ってきました。
この人にやってもらって良かったとつくづく思いました。
ノックスドール1600は粘度が高いので塗装ガンも一般的なそれと違ってブラストガンのようなもので空気圧も高めに思えました。
粘度が高いので普通の塗装のようにミストまみれにはなりませんが、それでも真っ黒のタールのようなもの密閉空間で塗るのですから大変だとおもいます。
担当の人が恥ずかしがって完全防備なその姿を見せたがりませんでしたがフードの目張りのすごさは"気合の塊"のようでした。
全体を塗り終えた後、リアバンパーのベース金具も塗ってくれました。
作業5日目。
マスキングが取り除かれてノックスドール1600では吹けない細かな部分をノックスドール900のスプレー缶で塗られていました。
最後に一緒に塗り残しが無いか確認したんですが、たまらず私にも缶をもらって一緒に塗りました。
小一時間塗ったと思います。
遮熱板が付いたまま塗ったのと違って、シャキッとした仕上がりになっています。
施工代は決して安いものではありませんが、高いだけあっていい仕上がりだと思います。
黒くなって少し引き締まった感がする気がします。
6日目
家族三人で電車とバスを乗り継ぎ引き取りに行ってきました。
娘にとってハイエースを預けている間のことなんて全く分かりませんがハイエースの底が黒くなったのと、一緒に行った記憶が残るのは大切かと思ったりします。
ノックスドールを施工するのはジムニーとハイエースが多いらしく事務所のスケジュール表を見たら来月までびっしりジムニーで埋まっていました。
後日、施工証明書が送られてきました。
施工代は結構しましたが、いい担当者に施工してもらって良かったとつくづく思いました。
施工したくださった担当者様、ありがとうございました。感謝しかありません。
ローダウンやツライチになったホイールみたいなカッコいいカスタムと違い、傍から見たら何の変化もない下回りの防錆塗装。
でも、こんな地味なカスタム(カスタムと呼んでいいのか分かりませんが)は自分は好きです。
小さなアピールとしてステッカーを貼ってみました。
地味なハイエースですがいざって時に頼りになる、そんなのって良いなあと思う今日この頃でした。
ではまた。