ある日の職場でのこと。
『相談が・・・』と少しばかり笑みを浮かべながら話しかけられました。
話の入り方からして仕事のことではないことはすぐに分かりました。
『これなんですが』と見せられたのがこれでした。

最初、自転車のハンドルでも固定するための部品かと思ったのですが、材質がアルミではなくステンレス。
ハズレでした。
『SCOTTY CAMERON』
スコッティーキャメロンというゴルフクラブの部品でした。
ゴルフを全くやらない私には全く知識がなかったのですが後から人に聞くと結構高いクラブだと教えてくれました。
で、相談というのはこれの軽量化でした。
おもむろにデジタルはかりを出され重さを示され、軽量化とシャフトの干渉がある箇所の切削、それとクラブの追加工についての
規定について話をされました。
スイングなどのテクニックにこだわる人が多い中、こういったクラブへのこだわりを持つのはこの人くらいで、かなりのマニアな人。
職場では割とゴルフが盛んで、部杯や事業所杯まであるほど。
もちろんお偉い方々も参加されるので親睦を深める絶好の機会。
出世するには純然と仕事ができるか、はたまた『ゴルフができるか』。
仕事はイマイチ、ゴルフをやらない。そんな私は必然的に出世コース外。
職場で仕事のことを私に相談する人なんてほとんど居らず、まともに相談してくれるのは工作がらみのことだけ。
どんなことでも相談してもらえるだけありがたいことですが娘が大きくなるまで会社にいられるか、心配な毎日を送っています。

で、相談というのは現状で220グラムあるこのパーツを60グラムほど軽くできないかというものでした。
220グラムに対して60グラムというのは結構な量に思えました。
寸法通りに加工するのは良くありますが希望の重量に合わすなんて普段あまりありません。
誤差も出る可能性があるためその旨伝えたところ、『できるなら100グラムくらい軽くなれば良いと思っているので、
軽くなる分には全然OK』そんな返事が返ってきました。
納期は6/23。それが無理なら7/8~8/1の間はOK。シャフトがはみ出ているのでここも削ってなどなど。
忘れないように直接書いてもらいました。

知識のないジャンルの加工は必要なエッセンスを注ぎ込めないので、時として方向性を見失ったり、失敗に至ることが多いもの。
こういった加工を受ける度にそんな思いが頭の中を馳せります。
外観を見ると削る側と表側が平行ではなくて側面も段付きになっています。
重さを量りながら削るのに、バイスにポンっと置いてクランプということができないのが、いささか厄介なところ。
実際に削るまでにはそんなことを考えなければならず、単純な切削であっても自分のなかでは意外と神経をつかったり
しています。

まずキッチンはかりで測ってみました。

念のため少し精密なはかりでも計ってみました。

『腐っても鯛』ではありませんが、どんな加工でもフライス加工はフライス加工。
何を削るときも神経を使うのは同じ。
まして他人様の物となると尚いっそう。

寸法値の制約がないので目安にとハイトゲージで縁5mmにケガキ線入れておきました。

クランプと基準面をどうするか・・・・
固定治具を作ろうかなんて最初考えましたが、シンプルが一番。
あれこれ考えてクランプできるようにと用意した棒材。

接着剤を塗ってバイスで固定。
平日、仕事から帰ってできるのはこんなことまで。

あて板を付けた状態での重量は244グラム。

切削については機械加工の経験が豊富な“kagayakiさん”に相談してみました。

エンドミルはパッケージからしてよく削れそうな“ハイヘリ バイオレットコート”

面倒な治具を作って余計なコストを掛けるのを避けて、単純にコレットに当ててバイスに固定することにしました。

回転数は400rpm。
手送りで様子を見ながら。

噛み込んでバイスから外れて飛んでいったら目も当てられません。
2mmの切込み深さで少しずつ何度も回数をかけて削っています。

最初の指示(マジックで記した)くらいまで削ったので一旦終了。

244グラムだったので、ちょうど40グラム削ったことになります。
100グラムなんてとんでもない。60グラムまでもまだまだ。

コレットで基準を出して再度削ることにしました。
余計な基準面を出すための治具なんて作らずにこれで十分。考えすぎる自分を反省です。

削る幅を広げ、縁も3.5mmほどの残し量にしてさらに深く削ってみました。

最測定。
165グラムなので79グラムの軽量化です。
これ以上深く削ると表面に達しそうなので一応終了。

削った面を指で触ると段差があるのがわかります。
側面を追加切削したので、クランプしている面がバイスに負けて影響したように思えます。

kagayakiさんに『バイスから外さなくても削ったキリコを集めて量ったら』なんて冗談を言われたのを思い出したので
集めてみました。
93グラム。
切削油の重さも加わってなので、良い線行っている気がします。
(スプレー式の切削油を使ったので缶の重さの変化量で相殺すればそれなりに量れたのではないかって今思いつきました。
kagayakiさんどうでしょうか?! )

一晩明けて翌日。
指で触った段差が気になって・・・
我慢できず、あて板の場所を変えてクランプし仕上げで削ってみることにしました。

見た目ではあまり分かりませんね。
少し段差が緩和したのでこれで良しとしました。

最終的な重量は138グラム。
昨日よりも3グラム軽くなって、トータル82グラムの軽量化となりました。

翌日、依頼主に渡す際に切削面の話をしましたが、ゴルフ界ではツールマークが残っていた方が印象がいいらしく、段差の悩みは
私の独りよがりということで終わってしまいました。
まあ気に入ってもらったようなので何よりです。
依頼主のブログはこちら
関連記事はこちら
ではまた。
『相談が・・・』と少しばかり笑みを浮かべながら話しかけられました。
話の入り方からして仕事のことではないことはすぐに分かりました。
『これなんですが』と見せられたのがこれでした。

最初、自転車のハンドルでも固定するための部品かと思ったのですが、材質がアルミではなくステンレス。
ハズレでした。
『SCOTTY CAMERON』
スコッティーキャメロンというゴルフクラブの部品でした。
ゴルフを全くやらない私には全く知識がなかったのですが後から人に聞くと結構高いクラブだと教えてくれました。
で、相談というのはこれの軽量化でした。
おもむろにデジタルはかりを出され重さを示され、軽量化とシャフトの干渉がある箇所の切削、それとクラブの追加工についての
規定について話をされました。
スイングなどのテクニックにこだわる人が多い中、こういったクラブへのこだわりを持つのはこの人くらいで、かなりのマニアな人。
職場では割とゴルフが盛んで、部杯や事業所杯まであるほど。
もちろんお偉い方々も参加されるので親睦を深める絶好の機会。
出世するには純然と仕事ができるか、はたまた『ゴルフができるか』。
仕事はイマイチ、ゴルフをやらない。そんな私は必然的に出世コース外。
職場で仕事のことを私に相談する人なんてほとんど居らず、まともに相談してくれるのは工作がらみのことだけ。
どんなことでも相談してもらえるだけありがたいことですが娘が大きくなるまで会社にいられるか、心配な毎日を送っています。

で、相談というのは現状で220グラムあるこのパーツを60グラムほど軽くできないかというものでした。
220グラムに対して60グラムというのは結構な量に思えました。
寸法通りに加工するのは良くありますが希望の重量に合わすなんて普段あまりありません。
誤差も出る可能性があるためその旨伝えたところ、『できるなら100グラムくらい軽くなれば良いと思っているので、
軽くなる分には全然OK』そんな返事が返ってきました。
納期は6/23。それが無理なら7/8~8/1の間はOK。シャフトがはみ出ているのでここも削ってなどなど。
忘れないように直接書いてもらいました。

知識のないジャンルの加工は必要なエッセンスを注ぎ込めないので、時として方向性を見失ったり、失敗に至ることが多いもの。
こういった加工を受ける度にそんな思いが頭の中を馳せります。
外観を見ると削る側と表側が平行ではなくて側面も段付きになっています。
重さを量りながら削るのに、バイスにポンっと置いてクランプということができないのが、いささか厄介なところ。
実際に削るまでにはそんなことを考えなければならず、単純な切削であっても自分のなかでは意外と神経をつかったり
しています。

まずキッチンはかりで測ってみました。

念のため少し精密なはかりでも計ってみました。

『腐っても鯛』ではありませんが、どんな加工でもフライス加工はフライス加工。
何を削るときも神経を使うのは同じ。
まして他人様の物となると尚いっそう。

寸法値の制約がないので目安にとハイトゲージで縁5mmにケガキ線入れておきました。

クランプと基準面をどうするか・・・・
固定治具を作ろうかなんて最初考えましたが、シンプルが一番。
あれこれ考えてクランプできるようにと用意した棒材。

接着剤を塗ってバイスで固定。
平日、仕事から帰ってできるのはこんなことまで。

あて板を付けた状態での重量は244グラム。

切削については機械加工の経験が豊富な“kagayakiさん”に相談してみました。

エンドミルはパッケージからしてよく削れそうな“ハイヘリ バイオレットコート”

面倒な治具を作って余計なコストを掛けるのを避けて、単純にコレットに当ててバイスに固定することにしました。

回転数は400rpm。
手送りで様子を見ながら。

噛み込んでバイスから外れて飛んでいったら目も当てられません。
2mmの切込み深さで少しずつ何度も回数をかけて削っています。

最初の指示(マジックで記した)くらいまで削ったので一旦終了。

244グラムだったので、ちょうど40グラム削ったことになります。
100グラムなんてとんでもない。60グラムまでもまだまだ。

コレットで基準を出して再度削ることにしました。
余計な基準面を出すための治具なんて作らずにこれで十分。考えすぎる自分を反省です。

削る幅を広げ、縁も3.5mmほどの残し量にしてさらに深く削ってみました。

最測定。
165グラムなので79グラムの軽量化です。
これ以上深く削ると表面に達しそうなので一応終了。

削った面を指で触ると段差があるのがわかります。
側面を追加切削したので、クランプしている面がバイスに負けて影響したように思えます。

kagayakiさんに『バイスから外さなくても削ったキリコを集めて量ったら』なんて冗談を言われたのを思い出したので
集めてみました。
93グラム。
切削油の重さも加わってなので、良い線行っている気がします。
(スプレー式の切削油を使ったので缶の重さの変化量で相殺すればそれなりに量れたのではないかって今思いつきました。
kagayakiさんどうでしょうか?! )

一晩明けて翌日。
指で触った段差が気になって・・・
我慢できず、あて板の場所を変えてクランプし仕上げで削ってみることにしました。

見た目ではあまり分かりませんね。
少し段差が緩和したのでこれで良しとしました。

最終的な重量は138グラム。
昨日よりも3グラム軽くなって、トータル82グラムの軽量化となりました。

翌日、依頼主に渡す際に切削面の話をしましたが、ゴルフ界ではツールマークが残っていた方が印象がいいらしく、段差の悩みは
私の独りよがりということで終わってしまいました。
まあ気に入ってもらったようなので何よりです。
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ではまた。