以前「お風呂のお湯の蛇口が閉まきらずポタポタ垂れる」と書いた話しの続きになります。
当時の写真の日付を見た見たら2014年の1月20日となっていたので2年ほど前のことになります。
その時のブログがコチラで、その続きを翌23日に書いたのがコチラ。
ポタポタ漏れる原因は二つあって、一つはゴムパッキンとの座面の当たりが悪く密閉出来なかったのと、もう一つが蛇口を締めるためのスピンドルのネジ山が
すり減っていたこと。
その時のパッキンに残った密着不良の当たり痕がこんなの。
すり減ったネジはこんなのでした。
当たり面(座面)は面取りカッターでサラって整えることでポタポタ度合いは軽減したものの完全とはいえず。
すり減ったネジ山は交換するしかないけどスピンドルが普通より長くて一般的でないため入手出来ず結局そのまま。
仕方なしに「禁断の二枚重ね」と称してパッキンを二重にして座面に押しつけたときにより潰れやすくしてごまかしました。
その写真がこれ。
ここまでが2年前のおさらい。
パッキンを二枚重ねにしたためか、蛇口を開けた出始めの湯量だけ何故か多く、でもすぐに減ってしまうので再調整が必要で面倒でした。
ただそれでも何とか漏れも無く使えていたのですが、最近になって締めてもしばらくするとポタポタ漏れるようになってきて、寝る前に締め直すようにしてきました。
で、とうとう昨日のこと。
とら母(嫁)が蛇口を締めようとした瞬間、「クルリン」っと言わんばかりに蛇口が空転。
「あっ!?」
その瞬間、とら母はあっけにとられ、自分は何が起きたかすぐに想像できました。
そう、ネジ山が飛んでしまったのです。
僅かにでも残っていたネジ山がとうとう無くなってしまったと言う訳です。
何とか風呂を終えて、食事の洗い物をしている間はタライで受けて湯船に入れて、寝る時は給湯器の元栓を止めて・・・。
ごまかせるのも今日明日まで。明日中に何とかしなければならなくなりました。
翌朝試しに元栓を開けて見ましたが、ギリギリに蛇口を閉めてもかなりの漏れ量。昨日より酷くなったかのようでした。
修理の方法は2年前にすでに決まっていました。
スピンドルはネジの部分とハンドルが付く部分が独特のため作るのは困難。
なので普通のスピンドルを2個使ってゴムパッキンのあるネジ側の部分とハンドル側の部分をつなげる「ニコイチ」でした。
つなげる部分は真鍮製なのでロー付けで、でも“切りっぱ”(切りっぱなし)ではロー付け面積が少ないので、インローにして・・・っと。
そんなことを考えたら面倒になって・・・・
でももうやるしか無い状況になったという訳です。
長いスピンドルの蛇口。二年ぶりのご対面。
ちょっと長いスピンドルは売っていたんですが、メーカーを探して電話して・・・・みたいに本気で探す気には何故かならず。
嗚呼、うとましいこのスピンドル。
無くなったネジ山。
何故か「禁断の二枚重ね」にしていたパッキンが一枚しかありません。
もう一枚はどこに行ったの?
すり減ったネジ山もどこに消えたの?
真鍮は銅と亜鉛の合金。
銅と亜鉛のエキスが混ざったシャワーだったのかもしれません。
寸法を測ってみました。(記録として載せときます)
ネジ山から測ると約60mm。
ゴムパッキン基準で測ると約85mm。
ニコイチ。
長さ的に余裕が有ると思っていたら意外と無くて、ネジの部分も使わないと足りない。
どっちから作ろうか?
まずはハンドルが付く方から。
ネジの部分を軸径になるように削って。
そんでもって、インローにするためにゴムパッキンのコマが入る穴を広げます。
削ったので並べてみた。
両者を凹凸で差し込むインローにするためには、パッキン側(右側)の方のハンドルが付く横溝(スプライン)の所を削って長さ的に丁度良い感じ。
パッキン側の加工です。
ネジ山があって太くてそのままでは旋盤のチャックに固定できません。
工作友達のkagayakiさんに以前勧められて買っていた生爪が役に立ちました。
プロが見たら笑われそうですがチャックの二段重ねに生爪を取り付けてチャッキング。
ここで最初のボケ発生。
このハンドルが付く部分にはハンドルを固定するネジ穴があって中空な訳です。
軸にしようにも中空では肉厚が不足します。
そこを見落として穴径と軸径を半々と割り振って削って・・・・。
あとからネジ穴があることに気付いてしまいました。
大丈夫かともおもったのですが、“中空の軸”に対して嵌まる側は“径が大きくて肉厚もあって”、アンバランス。
作り直すことにしました。
半々では無くて今度は3:7くらいの割合です。
何気に削った一発目が削り過ぎてユルユルで2度目のボケ。
またやり直しの末、取りあえず切削加工は完了。
キツキツのインローにするつもりが普通にスッと入るくらいの公差。
ロー付けの際に毛細管現象でローが溶け込みやすくなるので、この方が良いかと思いつつも、想定通りにならずちょっと複雑な心境。
内部が空洞のままロー付けはどうかと思い、空気抜きの穴もあけてみた。
石橋を叩いて壊して渡る方です。
切削加工が終われば後はロー付けだけ。
何とか今日は普通にお風呂に入れそうな予感が漂う瞬間。
あとはロー付けだけのはずが、思うようにはすすみません。
思いの外、熱量が足りないみたい。
バーナーを追加してダブルであぶりますが手は2本。ロー材を流し込むのには手が足りません。
溶けないロー材に焦りも加わり。
おまけにバイスからスピンドルが外れて落下。
くっついてない無いし、スピンドルは曲がるし・・・・3度目のボケ。
今日のお風呂は駅前のスーパー銭湯かと頭をよぎる。
ハンドル側のスピンドルの穴が広がってしまったので、そちら側だけ作り直し。
ロー付けは立てた方が良かったみたい。
バイスのはさみ方と熱の加え加減とロー材の溶かし具合の予習ができたので、今度は下手くそながらもロー付け完了。
何事も経験が重要。
合わせた所の隙間にチョンチョンとロー材を流し混めば良いものを、素人のアーク溶接のような団子状態。
外形を整えるために再び旋盤で切削。
旋盤で回すと振れがあったので見てみた。
落とした時にパッキン側も歪んだみたい。
不要かもと思いつつ振れ取り。
1/100
最後に仕上げの切削。
出来上がり。
スピンドルの軸径はΦ10mm弱。
最初から軸径にビチビチ合わせて削ったけど、後から思えば太めしておいてロー付けしてから仕上げればよかったと反省。
並べてみた。
付けてみた。
最初ネジ込みが硬かったのでアレっておもったけど、蛇口をお掃除したらすんなり入った。
削れたカスが残ってたみたい。
おまけに「禁断のパッキンの二枚重ね」で行方不明となっていたパッキンも中に残っていました。
作業の途中でふと思った事があった。
スピンドルが削れたのでニコイチで修理しようとしているけど、蛇口本体のネジが摩耗してたらどうしようかと。
スピンドルがめでたく出来て、はめてみたらダメやったと言う結末では悲しい。
そんなときに蛇口の材質が何かと思った。
前述の通りスピンドルは銅と亜鉛の合金である真鍮製。
ピカッと黄色く光るのは新品の5円玉と同じ材質。
一方、蛇口本体は砲金(ほうきん)
こちらは銅と錫(すず)の合金。その特性を調べたら耐摩耗性にも優れ大砲の砲身にも使われてとあった。
思えばゴムパッキンの当たり面を面取りカッターで削ろうとしても中々削れなかったのは材質のせいだった。
蛇口本体の摩耗の進み具合や水の方のスピンドルの具合とか気になることはあるけど、とりあえず出来ることはやったのでひとまず完了。
時計を見たら22時40分。
蛇口もスムースにまわってお湯もピタッと停まってくれたので嬉しくなりました。
それときっかけはどうであれ、工作機械を回してする作業はすごく楽しく思えました。
ではまた。
私もスピンドルが欲しかった一人です。
たぶんTOTOとかに言えばありそうな気がします。
結局作りましたが、部品代以上に手間賃がかさみました。
部品も無くて、蛇口の交換費用がべらぼうに高くて、それでもってなったらまたコメントください。