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山形県最上地方の鮭川村にある思いっきり鄙びた温泉地「羽根沢温泉」をご存知でしょうか。新庄から車で北西へ約18km、40分程走ったところに位置しています。バスが一日1本しかないような交通の不便な場所で、旅館は3~4軒しかなく、村落人口もいくらも居そうにないのですが、それにも関わらず公に開かれた共同浴場がちゃんと設けられていることは、温泉好きの私にとっては敬服に値します。集落の中心にある無料駐車場に面して集会場が建てられているのですが、この集会場の1階に共同浴場があります。
この温泉は大正8年に日本石油が油田を掘り当てるべく石油を試掘しているとき湧出したものです。新潟県の月岡温泉や瀬波温泉も同じように石油試掘中に発見されたものですが、これらの温泉と同様、羽根沢温泉も油のような匂いが特徴的です。無色透明のお湯からは硫黄の匂いとともにはっきりとした石油の匂いが漂い、臭覚でこの温泉が発見された歴史を実感できると思います。湯口にコップがあるので飲んでみると、塩味に出汁の味、そしてほろ苦さが感じられました。3人ほど入ればいっぱいになってしまいそうな湯船の中では、大きめの黒い綿状の湯の花と、量は少ないのですが白い綿状の湯の花が舞っています。そして口に含んでも肌をさすってもよくわかる程の強いヌルヌル感とスベスベ感を有し、いわゆる美人の湯と呼ばれるお湯に属するものと思われます。湯上りに脱衣所の窓を開けると、目の前を流れる川から心地よい風がそよぎ、火照った体を程よくクールダウンしてくれます。
設備は何も無く水道の蛇口すらありませんが、掛け流されるお湯の良さは一級で、こんな素晴らしい泉質を有していながらどうして温泉街は寂れているのかと疑問を抱きたくなるほどでした。
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ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
47.2℃ pH8.4 蒸発残留2957mg/kg
山形県最上郡鮭川村中渡 地図
4月~10月:8:00~18:00 11月~3月:8:00~17:00
200円
私の好み:★★★