温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田中温泉 綿の湯

2011年05月19日 | 長野県

前回取り上げた旅館「翠泉荘すぎもと」の真正面に位置する湯田中の地元民専用共同浴場です。湯田中の外湯は一般開放されていないのでなかなか入浴する機会が得られませんが、翠泉荘に宿泊するとこの「綿の湯」にも入浴できるので、宿でカードキーを借りてお邪魔してみました。小さいながらも風格漂うファサード。正面には「痊痾保生」と記された額がかかっています。痾(こじれた病気の意)を痊(恢復の意)して生を保つ、といった意味でしょうね。


入口には組合員専用のお湯汲み場があります。湯田中や渋の共同浴場ではよく見られる設備ですね。

 
男女別のお風呂の内部は脱衣所と浴室が一体化している古典的なタイプです。見上げると梁が立派で湯気抜きもしっかりしており、いかにも伝統的な外湯らしい木造のクラシカルなつくりに思わずうっとり。女湯との間は白いスリガラスです(この手法も古い浴場で良く見られますね)。
浴槽は2~3人サイズがひとつのみ。洗い場用のカランはありません。脱衣所と浴室との間には段があるものの、あまりスペースはないので、気をつけて掛け湯しないと脱衣所側がビショビショになってしまうかもしれません(尤も、ここを使うのは組合員以外にいないのですから、そんな心配はご無用なんですが)。

 
源泉溜まりに投入されたお湯が湯口へ落ち、そこから湯船へと注がれています。当然ですが加温循環消毒一切無しの掛け流し。そのかわりお湯は激熱なので水で薄めないと入れません。湯船に体を沈めると、洪水のようにザバーっとお湯があふれ出すので、とっても豪快な気分でした。
お湯は「翠泉荘」と同じ共益会12号ボーリング源泉を引いており、無色透明ですが完全に澄んでいるわけではなく若干靄がかかっているようにも見えます。微塩味+微出汁味+芒硝味、焦げたような香ばしい木粉の匂い+弱い芒硝の匂い。綿埃状の小さく薄い湯の華がチラホラ舞っています。トロミのあるお湯で、弱いスベスベ感があるのですが、「翠泉荘」よりトゲトゲとした肌に刺激を与えるような浴感があったのはなぜなんでしょう(単に熱いから?)。

こちらの共同浴場は夕方6時までは男湯が混雑し、女湯は夜8~9時頃に賑やかになります。つまり旦那は夕食前に一日の汗を流し、妻は食後(炊事後)に家事がひと段落したところでようやくお風呂にありつけるわけです。信州にはまだしっかり亭主関白の生活様式が残っているんですね。一昔前の日本ならごく当たり前な光景なんでしょうが、そうしたものが失われた都市部に生まれ育ってきたので、却って新鮮に見えてしまいました。


共益会12号ボーリング
ナトリウム-塩化物温泉 93.5℃ pH8.46 成分総計1869.4mg/kg

長野電鉄湯田中駅より徒歩10分弱(約700m)
長野県下高井郡山ノ内町湯田中温泉  地図
湯田中温泉観光協会ホームページ

原則地元民(組合員)のみ利用可能(一般開放は毎月26日の昼間のみ)
備品類無し

私の好み:★★

コメント
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湯田中温泉 翠泉荘すぎもと

2011年05月19日 | 長野県
※「翠泉荘すぎもと」は閉館・解体され、現在は「あさひ翠泉荘」として別の経営母体により建て替えられています。


先日、信州・湯田中温泉の古い小さな旅館「翠泉荘」に宿泊しました。楽天トラベルで安い料金が提示されていたので予約したのですが、いざ現地に行ってみると、相当年季入った建物にちょっとたじろぎ、玄関のガラスに「歓迎 ○○様(←私の名前)」と書かれた紙が一枚ペラっと貼られている様子にますます躊躇を覚えてしまいました。「ごめんください」と挨拶しながら玄関の引き戸を開けると、目の前ではソファーに腰掛けているお爺さんが私に一瞥して「おーい、お客さんだよ」と帳場へ声を掛け、しばらく沈黙が流れた後に帳場からお婆さんが出てきてようやく受付となりました。お婆ちゃんは寡黙なお爺さんとは正反対で非常に饒舌、低姿勢。夫婦の愛想というものは大抵二人を足して2で割れば丁度良いもので、その多くは奥さんの愛嬌が旦那の無愛想を穴埋めしている場合が多いのですが、こちらのご夫婦はその典型のようです。


案内されたお部屋は階段を上がってすぐのところ。室内はごく普通の和室です。片隅に布団がたくさん積んであって、終身時にはセルフで敷きました。テレビはいまだにアナログ。もうすぐ使えなくなっちゃうけど、大丈夫かしら。


階段を上がった2階にあるちょっとした寛ぎスペース。昭和30年代から時計が止まったかのようです。

 
浴室へのアプローチ。木枠の窓がいい味出してますね。浴室の手前には、高度経済成長期より以前のものではないかと思われるようなとっても古いタイル貼りの洗面台がいまだに現役でした。模造したものならよくありますが、こちらは本物ですよ。キラキラしたスパンコールみたいな粉が混ざっている土壁も懐かしい。鏡の横には建物の雰囲気に似つかわしくない英文の張り紙があり、どうやら「ドライヤーは洗面台以外で使わないで!」という内容のようなんですが、文法がめちゃくちゃで思わず苦笑しちゃいました。長野五輪の時に貼られたのでしょうか。
脱衣所は壁紙が至るところで剥がれ、養生テープで応急的に繕っていました。


浴室にはシャワー付き混合栓が1基、タイル貼りで扇形の浴槽が据えられており、扇の要の部分にある湯口から源泉をそのまま投入しています。静かながらもしっかりオーバーフローしており、湯船に入るとお湯がザバーっと溢れ出してとっても豪快な気分になれました。
無色透明、綿埃状の小さな湯の華がチラホラ。微塩味+弱芒硝味+微かに焦げたような出汁味、微かに焦げたような香ばしい木粉の匂い+芒硝の匂い。湯加減は丁度良く、マイルドで入りやすく、トロミがある弱スベの浴感です。

深更、就寝前に再度お風呂に入りなおすと、浴室には宿のご主人が入浴中。面倒なタイミングに来ちゃったなと後悔していたのですが、なんとご主人はさっきの仏帳面とは打って変わって、とっても明るくお喋りなのです。あたかも別人かのような様に、はじめは「この人誰かしら」と混乱したのですが、やっぱりご主人なのであります。一度口を開くと立て板に水の如くマイペースでいろんなことをお話くださる。昔の男の人って、女房の前では口をへの字に曲げているが、そこから離れると途端に好々爺に豹変することが多々ありますが、ご主人はその好例のようでして、心開けばとても暖かい人なんですね。頑固で意地っ張りで照れ屋さんなんでしょう。ご主人曰く「うちは小さくて古い宿だけど、お湯は100%そのまんまだから」と、滔々と湯船に注がれるお湯を目の前にしてとっても誇らしげでした。

朝食は食堂でいただくのですが、ビックリしたのが、そこに「鎮座」しているテレビが昭和40年代のナショナル製でして、なんと現役なのです。焼シャケと納豆をいただきながら、40年代のテレビで今日のニュースや天気予報を見るという、なんとも不思議な体験ができました。お湯も良いのですが、リアルなレトロを味わうことが出来たのも、この旅館の面白いところでした。設備面でも、人情面でも。


共益会12号ボーリング
ナトリウム-塩化物温泉 93.5℃ pH8.46 蒸発残留物1864mg/kg

長野電鉄湯田中駅より徒歩10分弱
(約700m)
長野県下高井郡山ノ内町湯田中温泉  地図
0269-33-2108
ホームページ

※「翠泉荘すぎもと」は閉館・解体され、現在は「あさひ翠泉荘」として別の経営母体により建て替えられています。
日帰り入浴可能
時間・料金は問い合わせされたし
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★
コメント (2)
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