温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

特急ロマンスカー「あさぎり」 松田駅の硬券と371系

2011年11月25日 | 旅行記
※今回は鉄道記事(しかも凡庸な小ネタ)のみです。温泉は登場しませんのであしからず。


勤労感謝の日の昼さがり、都内某所でランチしながらボンヤリしていたとき、どういうわけか「硬券(の鉄道切符)を手にしたいなぁ」という鉄ちゃん的な衝動に駆られてしまい、どこか近所で苦労しないで手に入らないところはないかと、思案しているうち、特急ロマンスカー「あさぎり」の存在を思い出したので、ただその列車の切符を欲しいがためにJR御殿場線の松田駅へと向かいました。

2012年3月でJR東海の371系が特急「あさぎり」の運用から撤退してしまうそうです。小田急沿線に30年以上も住みながら、私は「あさぎり」をほとんど利用してこなかったのですが、葬式鉄で混雑する前に乗っておきたかったので、思い立ったが吉日、硬券入手のついでに、どうせ乗るなら371系で運行されている「あさぎり6号」が良いと思い、早速実行へ移すことにしました。


15:50頃に小田急の新松田駅を降り、御殿場線のガードを潜って、駅の北側を線路と平行に伸びる松田駅前の商店街を歩きます。典型的な地方の斜陽な商店街。活気は失われ、歩いている人の姿も見えず、ここを歩いているだけで悲しくなってきそう。

 
松田駅北口に到着。ローカル臭ぷんぷんの駅舎。
駅舎には「ひかりストアー」なる小規模な食料品店が併設。ひかりという名前やオレンジ色主体の看板が、いかにも東海らしい。


駅舎の中に入って窓口へ。「今度の16:22発のあさぎり、新宿までグリーン車で1枚、乗車券も一緒にお願いします」と申し出たら、駅員さんはあっという間に発券してくれました。マルスで指ノミ券を出したうえで硬券を発券するため、てっきり面倒な作業になるのかと思いきや、ものの数秒という早業でした。

なおJR東海・御殿場線の松田駅で特急「あさぎり」関連の乗車券や特急券を購入すると、鉄道会社の事情により硬券の切符が発券されることは、マニア界ではかなり有名なことでして、なぜこのような現象が起きるのかについては、マニア諸氏の各サイトやブログにおいて細かく説明されていますから、まだご存じない方は「あさぎり 松田駅 硬券」みたいな感じでググってみてください。多くのサイトで紹介されているので、当記事では説明を省略させていただきます。


まず乗車券。日付はダッチングです。いまどきのJRでダッチングマシンが現役な駅なんてあったんですね。しかも我が神奈川県に。知りませんでした。松田駅から乗車するのに「新松田から」と表記されているのが面白いところ(運賃計算上ではこれで問題ないわけです)。



つぎにマルスで発券された指ノミ券。下車駅(新宿)で無効印捺してもらうの忘れたので画像を一部加工しました。裏にホチキスで硬券の特急券と背中合わせに留められた上で、手渡されました。料金表示が\***となっているところがミソですね。券の右肩に小田急MSR端末券みたいな番号が付いていたり、キャンセルコードの桁数が多かったり、左上にはPOS券みたいに□海と印字されているところも、普通のマルス券とはちょっと違って面白いところ。


 
さてさて今度は特別急行券・グリーン券の表と裏。こちらも無効印捺してもらうの忘れたので画像を一部加工しています。わざわざご丁寧に「特急券」ではなく「特別急行券」と省略しない名称を未だに用いているあたりは、小田急の鉄道会社としての矜持なのかもしれません。
マルス券が実質的な座席指定券であるのに対し、こちらは単なる料金券みたいなもんですね。一般の方にはなんでいちいち座席指定券と料金券を分けているのか、理解に苦しむことでしょう。そのあたりの複雑な事情こそ、裏事情を探究するのが大好きなマニアのハートを鷲掴みにしているわけですが…。
マニアの皆さんがこの「あさぎり」絡みの硬券を取り上げる時、意外とスルーしちゃうのが券面の赤い斜線です。小田急では昔から、上り特急券の硬券の表に赤い斜線を入れる伝統があり、この券もまさにその伝統に則って印刷されているわけです。私が子供のころはまだまだ硬券の活躍機会が多く残っており、親や親戚と一緒にロマンスカーを利用した際には、この赤斜線が入った特急券には何度もお世話になったものですが、さすがに今となっては、この松田駅か或いは元箱根案内所ぐらいでしかお目にかかれないのではないでしょうか。

ところで、この券って、JRの駅でJRの端末と職員によって発券されていながら、運賃や料金上は小田急のみでJRが全くからんでいないケースなわけですが、素朴な疑問として、JRには何らかのマージンは発生しているのでしょうかね。つまり小田急からJRへ発券手数料みたいなものがあるのか、もしくは無いのか…。

さ、硬券を入手できたので、本日の目的は達成されちゃいました。
あとは、残すところ半年あまりで小田急から姿を消す371系にちょっと早めの惜別乗車です。


 
松田駅1番線は「あさぎり」専用ホーム。


あさぎり6号の出発時間の15分前からホームにいたら、山北方から313系の普通国府津行が2番線へ入線。
。ちなみに私は鉄道写真に関しては全くのド素人で超下手糞ですから、アングルや映りに関しては大目に見て下さい。


それから約15分後、あさぎり6号が到着しました。およそ3分遅れ。
遅れを回復すべく、乗務員交代を済ませた列車はすぐに出発。
「あさぎり」っていつの間にか車内販売が無くなっていたのね…。
席に座って買ったばかりの文庫本を読み耽ってうちに、いつの間にやら新宿到着。だって小田急の車窓は毎日通勤で嫌になるほど眺めてますから、いまさら見たって面白くもなんともないのであります。

 
1+2列のゆったりシート。座り心地といいゆったり感といい、最高ですね。登場当初はシートテレビやオーディオサービスがありましたけど、もうとっくに昔に消えたみたいです。シートテレビでは衛星放送が視聴できましたが、実体験を思い出すと、アンテナ感度が悪かったのかいまいち受信状況が良くなくて画面が見辛く、丹沢や御殿場線区間に入るとトンネルが連続して全く受像できていなかったように記憶しています。それを鉄道会社側もわかっていながらテレビを実装したんですから、時代はバブルだったんですね…。


このボックスってマガジンラックだったよなぁ。いまでは単なるデッドスペースと化しているみたい。


パッと見はまだ全然使えそうなんですが、よく見ると、内装デコラに煤けた汚れが薄らながら万遍なく付着していたり、いろんなところが色褪せていたりして、やはり20年という歳月の間に経年劣化が相当進んでいることがわかります。内装でこの有様なんだから、曲線を多用している車体(外板など)なんて相当草臥れていそうですね。

 
371系が登場して小田急新宿駅のホームでその姿を初めて見たとき、JRのロゴやグリーン車のマークが入っている車体がコテコテの私鉄である小田急に入線しているという状況に興奮し、大東急時代以来電動車はデハである小田急にクモハやモハ表記の車が乗りいれてくることに固定概念を打ち砕かれ、そして関東私鉄の雄たる小田急の線路上で、国鉄・JRの象徴ともいうべきAW-2ホイッスルの響きを聞いた時にはびっくりたまげて腰抜かしたのも、今となっては遠い想い出…


均整がとれた女性的な曲線美、カッコイイなぁ。JR東海も相当金を掛けただろうな。この外観は今見ても常に新鮮感があって惚れ惚れします。余談ですが、このフォルムを見て宇宙刑事ギャバンあるいはシャイダーを連想してしまうのは私だけでしょうか。


コメント (9)
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えちご川口温泉

2011年11月25日 | 新潟県

強烈な個性のお湯に入れると聞いて、新潟県中越の旧川口町(現在は長岡市と合併)と地元JAの出資による第三セクターが運営する温泉入浴施設「えちご川口温泉」へ行ってきました。魚野川と信濃川が合流する箇所を見下ろす眺めの良い丘の上に立地しており、広大な敷地面積を有し、構内には「ホテルサンローラ」という宿泊施設も併設。こちらのような、実質的には公営のセンター系施設は、民間ではありえないような好立地を確保し、えらく立派な上モノを聳え立てていることが多いですよね。


受付で下駄箱の鍵と引き換えに館内精算用のカードが手渡されます。館内は妙にだだっ広く、綺麗で立派なのですが、かといってラグジュアリ感があるわけでもなくゴージャスでもなく、ベージュを中心とした無難で没個性なカラーコーディネートやロビー前に陳列されているお土産品などが田舎趣味で空虚さを漂わせているようであり、せっかくの立派な建物やその館内空間を無駄にしているようで、いまひとつ物足りなさをおぼえました。尤も下手に小洒落ると却って当館の客層のニーズと乖離しちゃうので、これがベストなのかもしれませんが。

 
ロビーから右手へ延びる無駄に長い廊下を延々歩いた先に浴室への入り口がありました。男湯と女湯は入れ替え制なのでしょうか。両浴室の中間には温水プールがあるのですが、訪問時は営業期間外だったので(営業期間は7月下旬から8月下旬まで)、プールには人っ子一人いませんでした。これだけ立派ならば、遊ばせておかないで通年営業すればいいのに…と思うのは私だけではないはずですが、もしかしたら夏以外に営業させちゃうと経費ばかりが膨らんでしまうのかもしれませんね。

 
脱衣所も広くて綺麗で立派、使い勝手良好です。お手入れもよく行き届いており実に清潔。プールのロッカールームも兼ねているため、夏の繁忙期に備えてロッカー数をたくさん用意しているようですが、あまりにその数が多すぎるため、せっかくの空間をロッカーが圧迫しており、室内面積の割には自由に広々と使えないのが残念なところです。
受付で渡された館内精算用カードはこのロッカーでも利用します。ロッカーは任意のところが使えますが、カードをロッカーの裏側へ差し込むことによって施錠が可能になります。



(↑画像クリックで拡大)
浴室内には幾種類かの浴槽があるのですが、それぞれにおける湯使いについて図を用いながら説明しているのは、非常に良心的ですね。

 
浴室内にはガラス窓に面している大浴槽の他、それに並んで寝湯、水風呂、サウナと続き、反対側には腰掛け式流水浴や上がり湯、その間に8角形の電気風呂浴槽といったように、いろんな浴槽が設置されていました。どこから入ってよいか迷ってしまいます。なおこれらの浴槽の内、温泉を利用しているものは大浴槽・寝湯・腰掛け式流水浴の3つで、いずれも加温循環消毒されており、夏季は加水も行われているんだそうです。
循環消毒云々は更衣室内の説明プレートにより事前に分かっていたので、内湯のお湯にはあまり期待していなかったのですが、浴室に入った途端にはっきりとわかるアブラ臭が鼻を突き、お湯の色も濃い黄色の透明で、かなり塩辛い味を有していました。循環湯ですらこの知覚の強さなんですから、源泉そのままだったらどうなっちゃうんでしょう。こんな濃いお湯を循環させて、機械はぶっ壊れないのかしら。
なお洗い場のカランは一つ一つのブースが仕切されており、お隣さんの飛沫が飛んでくる心配が無いので、快適に利用できました。24基用意されています。


内湯から屋外へ出てみました。露天風呂の浴槽は2種類あり、手前側は源泉風呂、奥が展望の良い露天の主浴槽です。

 
まずは展望が優れている露天の主浴槽へ。小高い丘の上に設けられているお風呂からは、目下の旧川口町市街、そして魚野川と信濃川が合流しながら大河を形成しつつ悠然に流れてゆく様を一望することができます。目の前に視界を遮るものが何一つないので、素晴らしいパノラマです。一部に屋根がかかっているので雨天時の利用もでき、また屋根が無い部分も広いので、晴れていたら空の広さを存分に楽しめます。お風呂自体も広いので、実に爽快です。

  
こちらの浴槽で使われているお湯は内湯の大浴槽と同様に、加温循環消毒(夏季は加水)されているため、その特徴やフィーリングは内湯と同じでした。浴槽容量が大きいためか、循環されている量も多いようで、底面吸引されている箇所の真上の湯面では、強力な吸引により渦が発生していました。もちろん真上を歩くと足裏を思いっきり吸われてしまいます。

 

さて今回の本来のお目当てである源泉風呂へ。いままで紹介したこの施設のお風呂は長いプロローグにすぎません。実質的に公営の入浴施設だけあってさすがに塩素剤による消毒の洗礼は免れないようですが、この浴槽だけは循環が行われていない放流式の湯使いが実施されており、実物を見ればわかるのですが、同じ源泉なのに状態が全然違うのです。

まず見た目は黄色透明だった循環のお湯が、ここでは赤っぽい橙色に濃く濁り、透明度は30cm程度。とてつもなく塩辛く、アブラ臭(石油的な臭+タイヤが焦げたような臭い)もかなり強く漂い、群馬県の「くらぶち相間川温泉」を髣髴とさせる凶暴な知覚。温泉そのものの匂いが強烈なので、たとえ塩素を入れていても消毒臭なんて完全に存在感を失っています。強い塩分のため、お湯に入るだけで肌がピリピリと沁みてきて、もし傷口でもあろうものなら痛くて飛びあがっちゃうかもしれません。ナメクジだったら即死だな、こりゃ。そればかりでなく、火照りも半端じゃないので、とても長湯していられません。すぐにのぼせて体力を奪われ、たちまちヘロヘロになってしまいました。
湯上がりもお湯に浸かった後ろ髪からはアブラ臭がプンプン香り、お肌はピリピリが続いた上にベトベト感も残り、更にはツッパリ感すら覚えます。濃い液体に浸かった後ですから、肌がカピカピしちゃうわけですね。

見た目・味・匂い、いずれも比類なき個性ですが、浴感、特に入浴中のパワフルな火照りや、湯上がり後の肌への凶暴さは半端じゃないかと思います。それゆえ、普通の方ならお風呂から上がる前に真湯をかけて、余計な温泉成分を落としちゃった方がよろしいかもしれませんが、マゾな私は掛け湯なんてせずにそのまま上がって、全身からアブラの臭いを放出しつつ、とめどなく噴き出てくる汗を垂れ流し、肌のツッパリ感に耐えながら、この浴場を後にしました。
温泉は掛け流しが良いに決まっている、というのが世間一般の評価であり、私もその大原則に則って湯巡りをしていますが、ここみたいな濃厚すぎるお湯は、機器を通して若干マイルドにした方が、結果的にはお客さんのためには良いのかもしれず、つい長湯したくなる展望露天風呂に循環のお湯が用いられているのは、とても理に適っているのかもしれない、と一人で勝手に合点した次第です。いずれにせよ、公営の綺麗な施設ながら、お湯の個性は他に比肩する温泉がなかなか思い浮かばないほど強く、そして良い意味で大変アグレッシブであるので、体力自慢の格闘マニアには是非一戦を交えていただきたいお湯であります。新潟県って油臭がする温泉の宝庫ですね。


ナトリウム-塩化物強塩泉 54.3℃ pH7.6 396L/min(動力揚湯) 溶存物質17660mg/kg 成分総計17670mg/kg
Na:6078mg(93.30mval%), Cl:10630mg(97.74mval%)

新潟県長岡市川口中山2515-5  地図
0258-89-4511
ホームページ

10:00~21:00
700円(17時以降は600円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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