※残念ながら2015年12月末を以て閉館されました。
熱海って日本を代表する温泉地のひとつにもかかわらず、どうして日帰り入浴専門の大規模な施設がほぼ無いに等しいのでしょうか(しいて言うなら日航亭大湯ぐらいでしょうか)。熱海再興の起爆剤にはもってこいだと思うのですが、権利や思惑が複雑に絡み合う観光地ならではの面倒くさい問題が横たわっているのかなと邪推のひとつもしたくなります。その一方で、地元民向けの鄙びた小規模共同浴場が何軒か残っていることは、一部の温泉ファンなら周知の事実でして、そのような人間ならたとえ綺麗な温泉施設がオープンしたとしてもそちらには目もくれず、昔からの共同浴場にしか関心を向けないかもしれません。かくいう私もその一人でして、あまり遠出せずに鄙びた温泉に入りたい時には、以前からしばしば熱海へ出かけておりました。しかし近年、伊豆山の般若院にはじまり、渚、そして上宿新宿など、熱海の共同浴場は相次いで閉鎖に追い込まれており、現在残っている浴場もいつ過去帳入りしてもおかしくありません。そこで今回は、そんな浴場の中でも私が大好きな水口地区の浴場二つについて書き綴ってみたいと思います。
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まずは「水口第一共同浴場」から。バラック然としたこの建物を一般の方が見たところで、まさか温泉浴場だとは思わないでしょうね。でもこの外観だからこそ、温泉ファンは街灯の光に導かれる蛾の如くこの浴場へと吸い寄せられてしまうのであります。ひとつの習性でして、場数を踏んでいれば一目見たところで忽ち判別できてしまうのだから、人間の視認能力って面白いものです。
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(↑画像クリックで拡大)
水口地区の二つの共同浴場には共通した利用ルールがありまして・・・
・まず指定の商店へ赴く
・店頭で料金を支払う。その際に店常備の入浴券に日付と自分の名前を申告or記入(店側でも台帳に名前を記録するみたいです)。
・記入済みの券を持参のうえで浴場へと向かう
というものです。両浴場とも無人ですから、無銭入浴を防止するためにこのような措置をとっているものと推測されます。ま、この手順は予習しなくとも各浴場にて掲示されていますから、事前に知らなかったり忘れちゃったとしても問題ありません。指定の商店は各浴場の近くにあり、発行される券は第一第二共通ですから、もし実際に赴いたお店がお休みだったとしても、少々面倒ですが別のお店で買い求めればOKです。
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今回第一浴場で使う入浴券は目の前の小山商店で購入しました。
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第一浴場の入口上には浴場名が記された表札がかかっています。相当古そうですね。またその脇には営業時間などが書かれた板も掲示されているのですが、表面は一部剥がれており、字もかなり薄くなってしまっているため、ほとんど役にたっていません。
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入口の戸はふたつあって、男女別であることは想像に難くありませんが、どちらが男(女)なのか掲示されていないので、不案内な人は迷うこと必至。もっとも入浴券を購入するときに、明らかに余所者とわかる人に対しては商店で教えてくれますが、一応ここでもお伝えしておくと、左側が男湯、右側が女湯であります。常連ばかりのお風呂ですから、いちいち表示しなくても良いのでしょうね。
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こじんまりとした脱衣所は至って単純な構造で、板の間に棚が設置されているばかり。棚の上に置かれているのは常連さんの風呂道具ですね。室内はかなり狭く、同時利用は二人が限界でしょうか。しかしながら扇風機が設置されており、夏には大いに役立つでしょう。なお照明は利用者がON/OFFを行います。
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小窓がついている小箱に入浴券を投入。
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第一浴場には券入れとは別に料金箱も用意されており、券を事前購入しなくても小銭と共に名前を記入した紙を一緒に投入すれば入浴可能のようです。
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脱衣室内に貼られた「禁 無料入浴」という警告。有象無象がやってくる観光地ですから、タダで入っちゃう不届きな輩がいるんでしょう。
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古びた地元民向けの共同浴場にありがちなシンプルな浴室と思いきや、浴槽は人研ぎ仕上げによって造られており、たとえ建屋は質素であっても最も肝心な湯舟には魂を込めているんだという関係者の心意気がひしひしと伝わってきます。また全てが古いわけではなく、たとえば床のタイルは比較的最近貼り替えられているようであり、必要に応じてそれなりの費用を要する改修も行われていることがわかります。
その浴槽は2人サイズ。湯船に身を沈めると、人研ぎ石ならではの懐かしい感触が肌から伝わり、瞑目するとこのお風呂が辿ってきた古き良き昭和の面影が脳裏に浮かんでくるようでした。
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浴槽の上にちょこんと突き出ている蛇口をひねると、熱い源泉が出てきます。利用者は自分の好みに合わせてこれを適宜開閉し、出しっ放しだと湯舟が熱くなりすぎてしまうので、使用後はきちんと栓を閉めてから出てゆくことになります。無色透明なお湯なのですが、熱海の温泉なのに塩味はあまり無く、むしろ石膏の匂いと味がほんのりと感じられました。そして意外にもスベスベ感が明瞭で滑らかな浴感が強く印象に残りました。湯中では白い粉のような微細な浮遊物(湯の華?)がちらほら見受けられます。
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古い共同浴場ですからシャワーなんてものはなく、水道の蛇口が3つあるだけ。しかし蛇口の下の床には出っ張りが設けられており、冷たい水や排水が浴槽側へ流れて行かないようになっていました。設計者の細かな配慮には頭が下がります。画像を見ても一目瞭然ですが、洗い場の傾斜は結構急です。
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梁が剥き出しの屋根。トタンの壁。良く見ると梁は若干撓んでいるようですし、トタンには錆が出ちゃっていますが、この建物はいつ建てられたものなのでしょうか。
鄙びた湯屋が大好きな御仁にはたまらないこの共同浴場。溜め湯式とはいえ実質的には完全掛け流しであり、また熱海の他のお湯に比べて塩分が少なくマイルドな浴感であるのも特徴的です。東京から100km圏内にまだこの手の湯屋が現役であることはとっても嬉しい限りですが、果たしていつまで残っていてくれるのかしら。
温泉分析表の掲示無し
静岡県熱海市水口某所
(場所の特定は控えさせていただきます)
※2015年12月末に閉館しました。
13:00~21:00 水曜定休
300円
備品類なし
私の好み:★★★
熱海って日本を代表する温泉地のひとつにもかかわらず、どうして日帰り入浴専門の大規模な施設がほぼ無いに等しいのでしょうか(しいて言うなら日航亭大湯ぐらいでしょうか)。熱海再興の起爆剤にはもってこいだと思うのですが、権利や思惑が複雑に絡み合う観光地ならではの面倒くさい問題が横たわっているのかなと邪推のひとつもしたくなります。その一方で、地元民向けの鄙びた小規模共同浴場が何軒か残っていることは、一部の温泉ファンなら周知の事実でして、そのような人間ならたとえ綺麗な温泉施設がオープンしたとしてもそちらには目もくれず、昔からの共同浴場にしか関心を向けないかもしれません。かくいう私もその一人でして、あまり遠出せずに鄙びた温泉に入りたい時には、以前からしばしば熱海へ出かけておりました。しかし近年、伊豆山の般若院にはじまり、渚、そして上宿新宿など、熱海の共同浴場は相次いで閉鎖に追い込まれており、現在残っている浴場もいつ過去帳入りしてもおかしくありません。そこで今回は、そんな浴場の中でも私が大好きな水口地区の浴場二つについて書き綴ってみたいと思います。
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まずは「水口第一共同浴場」から。バラック然としたこの建物を一般の方が見たところで、まさか温泉浴場だとは思わないでしょうね。でもこの外観だからこそ、温泉ファンは街灯の光に導かれる蛾の如くこの浴場へと吸い寄せられてしまうのであります。ひとつの習性でして、場数を踏んでいれば一目見たところで忽ち判別できてしまうのだから、人間の視認能力って面白いものです。
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(↑画像クリックで拡大)
水口地区の二つの共同浴場には共通した利用ルールがありまして・・・
・まず指定の商店へ赴く
・店頭で料金を支払う。その際に店常備の入浴券に日付と自分の名前を申告or記入(店側でも台帳に名前を記録するみたいです)。
・記入済みの券を持参のうえで浴場へと向かう
というものです。両浴場とも無人ですから、無銭入浴を防止するためにこのような措置をとっているものと推測されます。ま、この手順は予習しなくとも各浴場にて掲示されていますから、事前に知らなかったり忘れちゃったとしても問題ありません。指定の商店は各浴場の近くにあり、発行される券は第一第二共通ですから、もし実際に赴いたお店がお休みだったとしても、少々面倒ですが別のお店で買い求めればOKです。
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今回第一浴場で使う入浴券は目の前の小山商店で購入しました。
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第一浴場の入口上には浴場名が記された表札がかかっています。相当古そうですね。またその脇には営業時間などが書かれた板も掲示されているのですが、表面は一部剥がれており、字もかなり薄くなってしまっているため、ほとんど役にたっていません。
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入口の戸はふたつあって、男女別であることは想像に難くありませんが、どちらが男(女)なのか掲示されていないので、不案内な人は迷うこと必至。もっとも入浴券を購入するときに、明らかに余所者とわかる人に対しては商店で教えてくれますが、一応ここでもお伝えしておくと、左側が男湯、右側が女湯であります。常連ばかりのお風呂ですから、いちいち表示しなくても良いのでしょうね。
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こじんまりとした脱衣所は至って単純な構造で、板の間に棚が設置されているばかり。棚の上に置かれているのは常連さんの風呂道具ですね。室内はかなり狭く、同時利用は二人が限界でしょうか。しかしながら扇風機が設置されており、夏には大いに役立つでしょう。なお照明は利用者がON/OFFを行います。
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小窓がついている小箱に入浴券を投入。
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第一浴場には券入れとは別に料金箱も用意されており、券を事前購入しなくても小銭と共に名前を記入した紙を一緒に投入すれば入浴可能のようです。
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脱衣室内に貼られた「禁 無料入浴」という警告。有象無象がやってくる観光地ですから、タダで入っちゃう不届きな輩がいるんでしょう。
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古びた地元民向けの共同浴場にありがちなシンプルな浴室と思いきや、浴槽は人研ぎ仕上げによって造られており、たとえ建屋は質素であっても最も肝心な湯舟には魂を込めているんだという関係者の心意気がひしひしと伝わってきます。また全てが古いわけではなく、たとえば床のタイルは比較的最近貼り替えられているようであり、必要に応じてそれなりの費用を要する改修も行われていることがわかります。
その浴槽は2人サイズ。湯船に身を沈めると、人研ぎ石ならではの懐かしい感触が肌から伝わり、瞑目するとこのお風呂が辿ってきた古き良き昭和の面影が脳裏に浮かんでくるようでした。
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浴槽の上にちょこんと突き出ている蛇口をひねると、熱い源泉が出てきます。利用者は自分の好みに合わせてこれを適宜開閉し、出しっ放しだと湯舟が熱くなりすぎてしまうので、使用後はきちんと栓を閉めてから出てゆくことになります。無色透明なお湯なのですが、熱海の温泉なのに塩味はあまり無く、むしろ石膏の匂いと味がほんのりと感じられました。そして意外にもスベスベ感が明瞭で滑らかな浴感が強く印象に残りました。湯中では白い粉のような微細な浮遊物(湯の華?)がちらほら見受けられます。
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古い共同浴場ですからシャワーなんてものはなく、水道の蛇口が3つあるだけ。しかし蛇口の下の床には出っ張りが設けられており、冷たい水や排水が浴槽側へ流れて行かないようになっていました。設計者の細かな配慮には頭が下がります。画像を見ても一目瞭然ですが、洗い場の傾斜は結構急です。
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梁が剥き出しの屋根。トタンの壁。良く見ると梁は若干撓んでいるようですし、トタンには錆が出ちゃっていますが、この建物はいつ建てられたものなのでしょうか。
鄙びた湯屋が大好きな御仁にはたまらないこの共同浴場。溜め湯式とはいえ実質的には完全掛け流しであり、また熱海の他のお湯に比べて塩分が少なくマイルドな浴感であるのも特徴的です。東京から100km圏内にまだこの手の湯屋が現役であることはとっても嬉しい限りですが、果たしていつまで残っていてくれるのかしら。
温泉分析表の掲示無し
静岡県熱海市水口某所
(場所の特定は控えさせていただきます)
※2015年12月末に閉館しました。
13:00~21:00 水曜定休
300円
備品類なし
私の好み:★★★