「太平洋鹹水温泉」から金崙駅へ戻ってきました。実はこの日の宿を決めていなかったので、これから宿探しをしなければなりません。
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駅前には宿泊施設と地図を掲示している案内板が立っており、ひとまずこれを眺めて思案してみます。駅前の道をまっすぐ進めば宿が点在するエリアに行き当たるようので、とりあえずあてもないまま歩き出すことにしました。ま、なんとかなるでしょう。
駅から緩い坂を登って南廻公路(9号線)に近づくにつれ人家が徐々に増え、金崙の集落へと入っていきます。道路では覇気の無い野良犬がウロウロ。民家からは鍋をふるう音が聞こえ、夕餉の香りが漂ってきます。
夜の帳が下りてどんどん暗くなってゆく金崙。民家はあるものの、田舎らしく質素な建物ばかり。人影もまばら。本当に宿は見つかるのかな…。暗くなるにつれて不安が増してゆきます。
この一帯ではパイワン族が多く暮らしており、集落入口の道路上にはゲートがかかっていました。賓茂社区という名前の集落のようです。道端の店からはカラオケの大音響が聞こえてきます。
やがて目の前にはこんな新しくて立派な宿泊施設が現れました。「太麻里城堡温泉」という温泉民宿で、「空室あり」という看板も出ていました。「もう暗いし歩くのも面倒だから、ここに決めるか」と心が動いたものの、でもこんな
駅から歩くこと約20分で周囲の民家はいよいよまばらになり、これ以上進んでゆくと集落から外れてゆくことは明白。これ以上時間が遅くなると完全に真っ暗になってしまう…。もっと奥に行けば鄙びた温泉民宿がありそうな予感もするのですが、初めての土地で無理をしても良いことはないので、誘蛾灯に導かれる蛾の如く、たまたま目に入った「美の濱温泉渡暇村」の玄関の光に吸い込まれていきました。
玄関に入るとフロントロビーでは経営者夫婦がソファーでテレビを鑑賞中。「今夜一泊したいのですが」と尋ねると、メガネをかけたご主人が対応してくれました。こちらはいわゆる民宿のようですね。料金別に分かれた3種類のお部屋を見せてくれ、そこそこ広くて窓もある真ん中のランクに決めました。
こちらがその客室。ちゃんと綺麗に手入れされており、テレビ・冷蔵庫・冷房も完備されている立派なお部屋です。しかもパスワード不要の無線LANが飛んでいたので便利でした。
お部屋のシャワーとトイレは仕切りが無いため(シャワーカーテンも無い)、シャワーを使うとトイレまでビショビショになってしまう点がちょっと残念。シャンプーやハブラシなどアメニティー類は用意されています。
部屋に荷物を置いてロビーに出ると、ご主人がお茶を淹れてくださったので、摘んだばかりのミニトマトやイカの燻製をつまみにしながら、おばさんを混ぜて3人でしばし語らいのひととき。私の旅のこと、そしてちょうど発生から1年を迎えた東日本大震災にかんすることなどを話題に、虫のすだきやヤモリの鳴き声をBGMにしながら、のんびりとした時間を過ごしました。語らうといっても、私の中国語(普通話)はカタコトにも程がある非常に低レベルなものなので、単語の羅列や筆談を駆使することによって、辛うじてコミュニケーションが図れたのですが、私の稚拙な表現に根気よく付き合ってくれたこのご夫婦のおかげでもあります。こうしたふれあいは民宿ならではですね。
お茶飲み話は1時間ほど続いたでしょうか。まだ私が夕食を摂っていないことをご主人に伝えると、外に停めてある自転車を使っても良いと言ってくれたので、ありがたくお借りして、先程歩いてきた道を戻って金崙の集落へ向かい、9号線沿いに建つ食堂に入って羊肉炒麺とハマグリのスープを注文しました。この店は夫婦で営んでおり、旦那さんはとっても愛想が良く、笑顔を絶やさず接客しているのですが、一方の奥さんは終始憮然としたままでニコリともせず、私が座る卓の前にその奥さんが食事を持ってきたとき、お皿を持つ手をふと見たら、全ての指の爪の間が真っ黒けだったので、ゾッとしてしまいました。ま、火が通してあるから大丈夫かな。夫婦って大抵対照的な性格同士だったりしますけど、ここはその典型かもしれませんね。ちなみに味の方は…。決して不味くはないのですが、麺はベチャベチャだし、スープはお湯みたいだし…。食後は同じく9号線沿いにあるセブンイレブンへ寄って口直しを求めてしまいました。余談ですが、台湾はどんな田舎の集落でもコンビニがあるから便利です。過疎地に対する出店率は、北海道におけるセイコーマートのような感じかもしれません。
宿に戻ってご主人に「SPAは何時まで?」と訊くと、「夜10時まで」とのこと。せっかくですから、夜はこちらのSPAで時間いっぱいまでくつろぎたいので、急いで部屋で水着と水泳帽へ着替えました。
独りで利用するのがもったいないほど、とっても広くて立派なSPA。宿の外観だけでは、こんな広い温泉プールがあるとは想像できません。
ご主人は機械室に立ち寄って電灯やポンプ類のスイッチをONにしながら、私を奥にあるシャワー室へと案内してくれました。
シャワー個室が並んだ室内は比較的綺麗に保たれています。ロッカーやドライヤーもあるので、日帰り利用でも不便を覚えることはないでしょう。
ロッカー部分の壁紙には、コアラのイラストとともに平仮名で「たのしい」とプリントされていました。どういう意味?
大きなプールには41~2℃の温泉が張られています。全体を高い屋根が覆っているので、雨の日でも入浴可能。プールには打たせ湯4本、ジェットバス、寝湯ジャグジーなど、SPAらしい装置が設けられており、いずれもボタンを押せば作動します。
中でもとりわけ目を惹くのが、プール内に4か所ある岩の湯口です。まるで間欠泉のようにボコボコと音を立てながら熱い湯を噴き上げており、お湯の流路には鱗状の析出が付着し、一部は焼けただれたような褐色に変色しています。プール槽内のお湯は上述のように41~2度ですが、この湯口付近は50℃近くあるので、お湯の流れる方向によってはあまり近寄ることができません。でもこの湯口を見た私は思わず興奮してしまい、しばらく湯口の傍から離れることができませんでした。
お湯の見た目は、わずかに白く霞みがかっているもののほぼ無色透明と言って差し支えなく、口に含むと石膏味にほんのりとしま甘味、そして微かな塩味が感じられました。また焼けた石膏のような匂いや硫黄のような匂いがふんわりと湯面から漂っていました。
せっかくご主人が機械のスイッチを入れてくれたので、打たせ湯を作動させてみました。台湾ではおなじみの、体がぶっ壊れそうになるほど強い勢いでお湯が吐き出されるタイプですが、この強さに慣れると病み付きになっちゃうのが不思議です。特に慢性的な肩こり・首筋凝りに悩まされている私にとっては、むしろ日本の打たせ湯だと弱すぎちゃいます。
湯口付近こそ熱いものの、プールの表面積が広いために、程よく冷めて長湯に適した湯加減となっており、いくらでも入浴していられました。静かで鄙びた山間で、ゆっくり流れる時間に身を任せ、絶え間なく噴出するお湯に惚れ惚れしながら、広いプールで温泉を独り占め。しかもそのお湯はしっかりとした質感を有する掛け流しの本格派。温泉ファン冥利に尽きます。こんなに贅沢な時間を過ごしていいのかねぇ。俺、いずれ罰が当たるんじゃないかな…。
プールの傍にはロッジやバーベキュー場などがありましたが、さすがにこの日は利用者ゼロ。
プールサイドには温泉卵をつくる槽らしきものがありましたが、しばらく使われていないらしく、内部はカラッカラに乾いていました。
プールのみならず個室風呂もあります(今回は利用しませんでした)。
部屋の番号札には和室と書かれていますね。畳敷きなのかしら?
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これまでの画像は暗い状態で撮影したため、かなり見難かったですよね。ごめんなさい。
ということで翌朝改めて各所を撮影しました。まずは宿の外観から。
こちらは温泉プールです。
テラスから温泉プールを俯瞰してみました。
析出コンモリの間欠泉的な湯口。何度見ても興奮しちゃいます。温泉プールには誰も入っていないのに、お湯は止まることなくどんどん噴き上がっており、プールは昨夜よりも熱い44度くらいまで上昇していました。表面積が広いプールを熱くしてしまうのですから、湧出量は相当豊富なのでしょう。
温泉プールの隣には冷水プールも。
「児童SPA池」と称する池。この時は、児童ではなく、カエルが泳いでいましたけど…。
離れのロッジは明るい時間に見るとこんな感じ。結構な傾斜地に建てられているんですね。
お客さんが多い日には宿に併設されている食堂がオープンになるのでしょうけど、この日の客は私一人だったためクローズ。そのかわり朝食は宿の隣にある別経営者の食堂でサンドイッチと温かいミルクコーヒーをいただくことに。食堂のおじさんは頻りに「日本一番」と口にしていました。台湾は親日的な方が多くて嬉しいですね。なお宿賃には朝食代が含まれているため、朝食代は宿の奥さんが支払ってくれました。
民宿ならではのふれあい、ゆったり流れる時間、山中の閑村らしい静かで清らかな環境、そして広く本格的な温泉。行き当たりばったりで選んだ民宿でしたが、深く印象に残る一夜を過ごすことができました。道沿いにはこの他にも「遠山功夫民宿」「米之谷温泉民宿」など、自家源泉を持つ温泉民宿が点在しているので、どこかに泊りながら温泉をハシゴしてみるのも良いかもしれませんね。金崙温泉、おすすめです。
南廻線・金崙駅より徒歩20分(約1.5km)もしくは台東市街より鼎東客運山線(バス)の歴丘(いずれの字にも土偏がつく)で賓茂國小バス停下車すぐ
台東県太麻里郷金崙村温泉25 地図
(089)772179
入浴可能時間?~22:00
宿泊1000元~
入浴150元
私の好み:★★★