この日は台湾東部最大の温泉地である知本温泉を目指します。
金崙温泉の「美の濱温泉渡暇村」をチェックアウト。目の前にある「賓茂國小」バス停から鼎東客運(山線)バスの台東行に乗車です。
バスは金崙の集落から南廻公路(9号線)を北上。胸がすくほど美しい紺碧の海岸線に沿って走ります。この道は険しい断崖が連続する地形に沿っているため、急なカーブ急勾配が連続し、しかもバスの運ちゃんはアグレッシブなハンドル捌きをするので、シートに座っていても体が前後左右へ頻りに動き、ちょっとした絶叫マシーン状態でした。台湾のバスの運転ってどこでも攻撃的なんですよね。
台東までは行かず、途中の崎仔頭というバス停で下車。ここは台東~金崙方面と台東~知本温泉方面の路線バスがクロスする接続点なのです。 (地図)
崎仔頭は知本温泉の麓にあたる街で、商店や行政機関などが集まり、それなりの規模の市街が形成されています。日本も昭和30年代まではこんな感じだったんだろうな、と想像させてくれる懐かしい佇まいの街並みです。
セブンイレブンのATMで現金をおろして本日の旅の準備も万端。
三叉路には石敢當が置かれていました。沖縄と台湾は文化的に一続きであることを教えてくれます。
知本温泉行のバス停はセブンイレブンの前にありました。約20分待って、台東からやってきたバスへ乗り換えます。
マイクロバスの車内。
乗客は老人ばかり。
橋を渡って川を遡りながら温泉地の奥へと進んでゆきます。
知本温泉の温泉街はこの知本渓という川に沿って細長く分布しているのですが、下流側の外温泉と上流側の内温泉の2エリアに分かれており、↑画像に写っているのは大規模旅館が建ち並んでいる外温泉地域です。外温泉には日本人観光客にも人気のある「知本老爺大酒店」などがありますが、今回はパスしました。
崎仔頭から約15分バスに揺られ、終点の内温泉で下車。
最初に訪れたのは、日本人の温泉ファンが多く訪れ、お湯の良さが絶賛されている「龍泉山荘」です。
受付ではおばあちゃんがソファーに座って気持ちよさそうに夢の国へお出かけ中。起こすのは忍びなかったのですが、無銭入浴するわけにもいかなかったので、声をかけて起きてもらい、入浴をお願いしました。おばあちゃんは日本人客の対応に慣れているのか、片言の日本語で説明してくれました。
壁には料金表が掲示されていました。入浴料の数字が訂正されていますが、ネット上の情報では100元と紹介されていましたから、最近値上げされたみたいです。
玄関脇の外階段で2階へ上がります。途中カラオケ場の跡と思しき部屋を通るのですが、しばらく使われず放置されたままのようで、ボロボロの吹きっ晒し、廃墟同然の惨憺たる状況でした。B級感どころかC級感たっぷりです。本当にここは営業中の施設なのかねぇ。
カラオケルームの廃墟を通り抜けたら一旦屋上に出ます。この屋上も荒れ放題、廃墟ビル状態でした。
屋上の向こうにあるエリアが浴室の入口。通路の両側に3室ずつ個室風呂が並んでいますが、突き当たりにあるのは、もしかして小便器じゃないの?
個室はどこも同じような造りをしており、任意の場所が使えるみたいなので、最も状態が良さそうな部屋を選びます。といってもどこも大差ないのですけどね。室内は台湾の個室風呂でよく見られるスタイルでして、1人サイズのタイル貼り浴槽があるだけの至ってシンプルな構造です。この室内で更衣を掛け湯を行うのですから、台湾スタイルの入浴に慣れない人には窮屈で不衛生に思われるかもしれません。尤も、私は他に誰もいないのをいいことに、広々とした屋上にすべての荷物を置き、日光降り注ぐ開放感たっぷりの環境ですっぽんぽんになって、伸び伸びとお風呂へと向かいましたけど。
浴槽のタイルはうっすらと温泉成分の白い析出でコーティングされていましたが、しばらく利用されていなかったのか、槽内はカピカピに乾いており、お湯のコックを捻ってもしばらくは冷たい水しか出てきませんでした。数分出しっ放しにしていると、徐々に温度が上がって熱くなり、温度計を突っ込んでみたら47.5℃。ここまで上がれば問題ありませんから、浴槽に栓をしてお湯を溜めます。小さい槽なのですぐに溜まりました。
浴槽が浅いお皿のような形状をしているため、腰を落とした時の安定感が得られず、肩まで浸かろうとするとお尻が浮いちゃうところが難点ですが、お湯のクオリティは聞きしに勝る素晴らしいもので、見た目は無色透明、ほんのりとした塩味とともに重曹味や石膏味が感じられ、アルカリ性泉にありがちな微かな収斂も感知できました。そしてここを訪れた日本人温泉ファンが誰しも絶賛するヌルヌル浴感も実感できました。建物も風呂もボロいけど、お湯はホンモノですね。このギャップこそ温泉ファンを惹きつける魅力なわけです。
でもお湯の質感に対して見られるネット上での絶賛には、素直に首肯できないところがあり、そんなに強烈にヌルヌルするほどでもなければ、個性的な味や匂いがあるわけでもない。成績表で例えれば、評価としては確かに「優」であるけど、施設面のB級感を一切無視したとしても、100点や95点ではなく、80点ギリギリなのではないかと個人的には思いました。もしかしたらこちらのお湯のコンディションには波があって、私の訪れたタイミングが悪かっただけなのでしょうか。
敷地内には展望台があり、記念撮影用のプレートが置かれていました。
展望台の上からは知本渓を一望。河原では重機やダンプが忙しそうに河川整備工事の真っ最中。
「龍泉山荘」は知本渓の谷の急傾斜面に建てられており、玄関があるのは実は建物の上層階だったんですね。展望台からはマンションのような建物の全容、そして沢山並ぶ客室が見られました。
こちらのお湯に感動した方の記事を拝見しますと、宿泊して客室に備え付けられているお風呂を利用している場合が多いようです。同じ源泉を用いていても、湯使い・浴室構造・配管方法などによってお湯の質感が変わってしまうことは多々あるので、個室風呂よりも客室の方がお湯が良いということは十分に考えられます。宿泊しないと本当の価値がわからないのかな。
台東市街や知本駅から鼎東客運(山線)バス・知本温泉行バスで終点下車、徒歩1分
台東県卑南郷温泉村龍泉路216 地図
(089)513930
入浴受付時間不明
入浴150元
備品類なし
私の好み:★★