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先日取り上げた「院内余温泉」の湯船に浸かりながらお客さん達とお喋りしていると、常連さんから「そういえば、上恵良温泉って最近行ってないなぁ」「俺もだよ。どうなってるんだろうね」という話題が上がりました。曰く、かつて皆さんは同じ院内町にある上恵良温泉へよく行っていたそうですが、お風呂を管理しているおばあちゃんが体調を崩して以来、最近は皆さん足が遠のいてしまったんだとか。その温泉の名前は私も存じ上げており、ネット上でも温泉ファンによって多くのレポートが上がっていることも目にしていましたが、皆さんの言葉が気になったので、実際に訪れてみることにしました。
国道387号から県道409号に入って南下してゆくと、程なくして沿道の左手に上画像の大きな湯屋が目に入ってきました。駐車場の片隅には球体の大きなタンクも建っており、切妻のおでこに温泉マークを掲げる木造の湯屋と相まって、いかにも温泉施設らしい風情を醸し出しています。
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県道を挟んだ反対側には、食料品などを扱う酒屋さん、そして温泉名を掲示した「休憩所」なる建物が、まるで長屋のように連なっているのですが、この酒屋さんこそ温泉の運営主体であり、「休憩所」は文字通り休憩所としての他、素泊まり専用の簡易宿泊施設としての機能を兼ね備えているんだそうです。しかしながら私が訪問した時、酒屋さんの店内には誰もおらず品数もわずか。休憩所も長い間にわたって閉ざされているような気配が感じられ、現在でも宿泊業を行なっているかは不明です。
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湯屋の玄関を入ってすぐのところにある番台にはどなたもいらっしゃいません。しかしながら、カウンターの上には電話機が置かれており「温泉入浴のお客様 電話の受話器を取って1か2を押して下さい」と案内されていましたので、その説明に従って内線電話をかけたのですが、受話器から呼び出し音は鳴っているものの、全く応答が無い…。どうしたものかと酒屋さんの方へ行ってみますと、酒屋さんや休憩所が並ぶ建物の右側に立派な母屋があり、そこからセニアカーに乗ったお婆ちゃんがゆっくりとやってきたのでした。「院内余温泉」の常連さんが話していたように、温泉を管理するお婆ちゃんは本当に体調を崩したそうで、今では元気になったものの、足腰が衰えてしまい、セニアカーのお世話になっているようでした。お婆ちゃんは笑顔で対応してくださり、お風呂まで案内してくださったのですが、そんな事情を存じ上げなかったとはいえ、お婆ちゃんには余計な手間をとらせてしまい、申し訳ないことをしてしまいました。お婆ちゃん、ごめんなさい。なお、お婆ちゃん曰く、お風呂に入るだけなら、わざわざ呼び出さなくても番台の上に湯銭を置いて勝手に入って良いんですよ、とのことです。
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板の間の脱衣室はまずまずの広さ。独立した部屋というより、後述する浴室の一角をパーテーションで仕切っただけのような造りですが、ロッカー・洗面台・ドライヤー・扇風機など、ひと通りの備品も揃っており、使い勝手に問題ありません。
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浴室は外観から受ける想像をはるかに上回る広さがあるのですが、そもそも内湯として建築したというよりは、大きな露天風呂の上に屋根を載せたような感じで、しかも手作り感が強く、浴室全体にそこはかとないB級感が漂っています。広い室内の床はコンクリ打ちっ放し。浴槽の向こう側には田園風景が広がっているのですが、浴室と屋外を隔てているのは、窓ガラスではなく、畑の温室で使うような農業用の透明ビニールシートが用いられており、このビニールシートがB級感をより一層高めていました。季節によってシートを取り払って露天風呂っぽくするのかな?
この窓ガラス代わりのビニールシート下には、広い空間を活かした大きな浴槽が据えられており、浴槽自体はコンクリ造ですが、岩で縁取られており、いわゆる岩風呂のような風情です。そして後述するように三分割されており、それぞれ温度が異なっていました。
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浴室の広さに反して洗い場は小さく、シャワー付きのカランが3基のみ。カランから出てくるお湯は温泉です。
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3分割されている浴槽のうち、最も西側の槽は5〜6人サイズで、この浴槽には水平方向に伸びるパイプから温泉が投入されていました。湯口における温度は54.6℃というなかなかの高温であり、このお湯を直接受けているため、湯船は私の体感で43℃前後の湯加減になっていました。
お湯は淡いジャスミンティーのような色を帯びた透明で、ご近所の「余温泉」と同じくミシン油のような風味があり、塩味は無いものの、少々のほろ苦味を有していました。そして感動するほどではないにせよ、湯中ではしっかりとしたツルスベ浴感が得られました。
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左(上)の画像に写っている2つの浴槽は、湯口からお湯が直接供給されている熱い槽、そしてそこから流れてくるお湯を受けている真ん中の槽です。熱い浴槽以外には湯口が設けられていないらしく、しかも流量が少ないためか、受け湯オンリーの真ん中の槽では35℃くらいにまで下がっていました。
右(下)の画像は3つのうち最も大きな浴槽なのですが、お湯の流れとしては最下流にあたるため、私の訪問時には思いっきり冷めており、体感でも30℃あるかないかという入浴に適さないぬるさで、残念ながら無用の長物と化していました。
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コンクリ打ちっ放しの広い室内には、上画像のような空っぽな浴槽もあったのですが、現在は使われておらず、観葉植物が置かれているばかり。
というわけで、浴室は広く、浴槽も大きいのですが、実質的に入浴に適しているのは、湯口から直接お湯が注がれている5〜6人サイズの浴槽ひとつだけ。せっかくのスペースや規模を持て余しているようでした。
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湯屋の内部には、上述の大浴場のほか家族風呂もあり、中を覗いてみると立派な岩風呂がお湯を湛えていました。窓ガラス代わりにビニールシートが張られている点は大浴場と同じですが、広い室内には岩が屹立した大きなお風呂が設けられており、家族風呂にしては随分立派です。でも松竹梅とネーミングされた各部屋のうち、お湯が張られていたのは「梅」のみで、他の部屋はカーテンが閉められていました。また、画像には写していませんが、これら松竹梅の他、通路の奥には「めじろ」「うぐいす」といったさらに別の貸切風呂もあったのですが、こちらは空っぽで、しかも長年使われていない様子でした。
お身体が思う通りに動かなくなったおばあちゃんにとって、これら広いお風呂の管理は厳しいものがあるのでしょう。それゆえ、お客が使える範囲を縮小しているのかもしれません。邪推かもしれませんが、「余温泉」でお会いした常連さんの足がこちらから遠のいてしまったのも、そのあたりに理由があるのだろうと推測されます。私が訪問したのは、本来ならば1日の汗を流しに来る客で賑わってよいはずの夕方でしたが、私の他には客が来ず、始終独占できてしまいました。お湯は決して悪くないのですが、斜陽な雰囲気を濃く漂わせているその寂しさに、一見の客の私でも一抹の不安を覚え、この温泉の先行きに暗雲が立ち込めているような感を拭うことができませんでした。是非とも形勢逆転となるような契機に恵まれることを祈っています。
単純温泉 50.0℃ pH8.2 58.2L/min(動力揚湯・掘削700m) 溶存物質0.746g/kg 成分総計0.747g/kg
Na+:224.0mg(90.35mval%), Mg++:2.3mg, Ca++:6.3mg,
Cl-:210.1mg(58.48mval%), SO4--:29.0mg, HCO3-:155.9mg(25.25mval%), CO3--:22.9mg,
H2SiO3:69.7mg, CO2:1.6mg,
(平成10年9月17日)
大分県宇佐市院内町上恵良780 地図
0978-42-5875
夏→11:00〜21:00、冬→11:00〜20:00 木曜定休
300円
ロッカー(有料100円)・石鹸・ドライヤーあり
私の好み:★★