温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

カルルス温泉 鈴木旅館

2012年02月23日 | 北海道

日帰り入浴目的で、カルルス温泉の鈴木旅館にて立ち寄りました。外観は東北の湯治宿のような渋い佇まいですが、立派な車寄せが旅館としての威厳を放っていました。玄関脇には歓迎・日帰り入浴の札が提げられていたので、玉砕(入浴のみお断り)の恐怖感を抱くことなく安心して訪うことができました。



戸を開けると若女将がわざわざ帳場から出てきて丁寧に案内してくださいました。その案内に従い、帳場前の階段を上がって2階へ向かい、矢印に従って廊下を進んでいきます。


 
大浴場は「有生温泉」という名前。



浴室入口に置かれた輪切りの切株には縁起が記されており、その一部を抜粋すると、有生とは「自らの意志に加え神霊の加護に依り生きる事の目的と喜びをもつ事、即ち生命の存在と持続」を意味しているんだとか。



脱衣室は湯治宿以上旅館未満と表現したくなるような渋い雰囲気。



浴室には計5種類の浴槽があるそうですが、それぞれについてどのように温度を設定しているか、湯使いはどうなっているのかを明示した説明が、脱衣室内に貼られていました。一部を除き各浴槽とも源泉を使用しているものの、源泉温度が高いために加水しており、加水の程度によって温度を調整しているようです。



お風呂は内湯のみですが、室内らしくない開放的な空間が広がっており、いろんな浴槽が目に飛び込んできます。



浴槽の多様さに反し、洗い場のカランはシャワー付き混合栓が3基のみ。尤も、共同浴場みたいに客が集中して混雑するようなことはないでしょうから、これで十分なのかもしれません。1基あたりのスペースもしっかり確保されていますから隣の干渉することもないでしょう。



最も入口寄りにあるのが「福の湯」と称する打たせ湯2本。源泉に10~30%程度の湧水を加えて38℃前後の設定にしているとのこと。確かにぬるめの打たせ湯でした。



洗い場に隣接して設けられた、柱を囲むようにドーナツを半分にしたような半円形の浴槽が「かぶり湯」。
源泉に5~20%程度の湧水を加えて40℃前後に設定しているそうです。画像には槽の上に曇りガラスが写っていますが、これは男湯と女湯を仕切る境界でして、曇り加減が弱いのか、向こう側を動く人影がボンヤリながら見えちゃいました。異性の裸体に想像を膨らましてロマンを抱くも佳し、所詮ババア(orジジイ)しかいねぇと端っから気に留めないのも佳し。



一番奥に位置する「泉の湯」は各浴槽の中で最も大きなもの。「かぶり湯」同様、源泉に5~20%程度の湧水を加えて40℃前後に設定しています。普段はしずしずとお湯がオーバーフローしており、人が入るとザバーっと勢いよく溢れだします。各浴槽の中で最も長湯しやすく、且つ心地の良い湯加減だったかと思います。



こちらは「福の湯(打たせ湯)」の隣にある「気泡湯」。気泡といっても温泉由来の気泡が肌に付着するわけではなく、ジェットバスが設けられているから「気泡湯」なんだと思います。加水量は「福の湯」と同じく、源泉に対して湧水が10~30%程度なのですが、実際の湯温としてはここが最もぬるくなっていました。またジェットバス作動のためか、槽内には強烈な吸引口があって、それに気づかず足を吸われた時にはビックリしてしまいました。


 
「気泡湯」と並んでいるこの浴槽は「玉の湯」。こちらは源泉100%で、5つある浴槽の中では最も高い湯温設定の42℃前後。名前の通り玉のような麗しいお湯が楽しめました。源泉そのままであることを証明するかのように、湯口にはコップが置かれており、試しに飲んでみると、弱い金気に土気っぽい味が少々、そして石膏的な知覚が感じられました。その石膏らしさが析出として現れているのか、湯口の岩には棘皮動物のような小さなトゲトゲが出ていましたが、知覚としては味・匂いともに弱く、近所の登別とは好対照の優しく穏やかなお湯です。見た目はごく薄い黄色っぽい(黄金色っぽい)透明。温泉分析表には無色透明と記されていましたが、実際の見た目と分析表には若干の乖離があるようです。


 
このお風呂で特徴的なのはこの木の角材(ウ●コじゃありません)。これは枕として使うものでして…



床に枕を置いていわゆるトドを楽しむわけです。このため、浴室の床は浴槽廻りを中心として木板が張られており、浴槽のお湯をかけながら木の床の上で横たわり、じっくり温浴を堪能できるようになっているのです。こうした湯治的な入浴を推奨しているお宿なのですから、宿全体に漂う湯治宿らしい雰囲気は至極自然なものなんですね。




(上画像クリックで拡大)
現在の浴場こそ昭和55年の普請ですが、歴史そのものは北海道にしては古く、1899年(明治32年)に創業した「寿館」が前身なんだとか。脱衣室入口には毛筆の扁額が掲げられており、そこには「報告」という題名に続いて、明治33年10月13日付で胆振国幌別郡幌別村のペンケネセより湧出している温鉱泉(第21号)を定量分析した内容が記されていました。文中のデータをいくつか抜き出してみますと…
総量0.964
格魯児那篤倫0.1644
硫酸那篤倫0.3312
硫酸加爾叟謨0.1024
重炭酸加爾叟謨0.1684
硅酸0.1570
遊離炭酸0.1526
と書かれています。全て漢字ですから難解ですが、格魯児はクロル(塩素)、那篤倫はナトリウム、加爾叟謨はカルシウムですね。現在のデータを見ますと陽イオンはナトリウムとカルシウムが拮抗しており、陰イオンは硫酸イオンが筆頭になっていますが、明治時代どうやら硫酸ナトリウムが溶存量としては一番多かったようです。遊離CO2が今と昔で全然違う数値となっているのは不明…。

登別とは全く違う優しく穏やかなお湯でゆったり湯治するにはもってこいのカルルス温泉。若女将の丁寧で親切な接客がとても印象に残ったお宿でした。


単純温泉 44.4℃(浴場内浴槽・加水あり) pH7.0 溶存物質0.668mg/kg 成分総計0.676mg/kg 
Na+:85.5mg(46.91mval%), Ca++:79.4mg(49.94mval%),
Cl-:40.4mg(13.87mval%), SO4--:264.2mg(66.91mval%), HCO3-:93.0mg(18.49mval%),
H2SiO3:92.8mg, 遊離CO2:8.8mg

北海道登別市カルルス町12  地図
0143-84-2285
ホームページ

13:00~20:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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登別温泉 観音山聖光院

2012年02月22日 | 北海道
今回はお寺を取り上げます。といっても五木寛之を真似て全国の寺院を巡礼するつもりは毛頭なく、いつものように温泉が主役です。登別エリアには寺院なのに温泉入浴ができるところが2ヶ所もあって、その中の一つが今回の主役「浄土宗観音山聖光院」です(地元では観音寺と呼ばれることも多いそうです)。以前は寺院運営の傍らユースホステルとしても営業していたんだそうですが、現在宿泊営業は中止しており、その名残なのか、事前連絡を要するものの入浴のみ外来利用を受け入れています。私の場合、入浴を希望する日の前日に電話で直接連絡しました。



えてして北海道の仏閣は、和人文化が当地へ流入してまだ百数十年しか経っていないためか、もしくは厳冬の気候に合理的に対応させるためか、本州以南の人間の固定概念を覆す近代的な造りをしていたり、あるいは民家然として所謂お寺らしくない外観である場合が多いのですが、こちらのお寺もご多分に漏れず寺院造とはかけ離れた鉄筋コンクリート造で、初見時は浄土宗ではなく新興宗教の施設なのではないか、変な勧誘されやしないかと、訪問を一瞬躊躇ってしまいました。
場所はパークホテル雅亭の真ん前。車で訪問する場合は半地下の駐車場を使えますが、どういう事情か天井がめちゃくちゃ低く、私がレンタカーで借りたワゴンRでギリギリでした(アンテナは収容必須)。ミニバンだとアウトかもしれません。



玄関ではニャンコのたかお君がお出迎え。お風呂へは奥様が案内してくださいました。館内には食堂などまだユースホステル時代の設備がそのままになっています。玄関からまっすぐ伸びる廊下を進んだ突き当りの左側が浴室。一室しかないため貸切風呂となります。民家のお風呂をお借りしているような雰囲気ですが、元々客商売していただけあって脱衣所は一人で使うなら十分な広さの空間が保たれていました。



壁にはこの温泉が自家源泉であること、夏季は加水していること、熱交換器により温泉熱を給湯や冬の暖房に活用していること、などが説明されていました。余所では入れない自家源泉のお風呂に入れるなんて嬉しい限りですね。事前連絡してお邪魔した甲斐があります。また、こうした説明書きが掲示されているということは、このお風呂が自家用ではなくれっきとした客向けであることがわかります。



実用本位でシンプルな造りの浴室。室内にはグレーの石板が貼られていますが、場所柄墓石に見えてしまったのは私が邪心の塊だからかな。戸を開けた途端に登別らしい硫黄の香りがプンと鼻孔を刺激します。熱めのお湯が注がれているこじんまりとした浴室なのですが、硫化水素ガス対策のおかげなのか、冬だというのに換気状態が良好で、湯気があまり籠っていなかったのは意外でした。



貸切風呂ですが、洗い場にはシャワー付き混合栓が3基も設置されていました。なお水栓の上にはシャンプー類が置かれていますが、おそらくこれはご住職ファミリーがお使いのものでしょうね。私は持参したものを使いました。




 
浴槽は縦に入れば一人、膝を折って詰めて入れば二人入れるサイズ。湯口の上に観音様のレリーフが置かれているあたりは、いかにもお寺らしいところ。かなり熱めの自家源泉は弱いツルスベ感を有し、薄い灰色と黄色が混ざったような色の笹濁りで、底には白い湯の華が沢山沈澱しており、湯船に足を入れるだけでブワッと一気に舞い上がります。鼻をツンと刺激する火山の噴気帯のような硫化水素臭とクレゾールのような消毒液的アブラ臭が絡み合いながら湯面から香り、口にしてみると塩味とともに苦みと渋みが強く舌に残ります。特に渋みが際立っており、唇が痺れて口腔内にしぶとく残るほどです。



こちらは加水用のバルブです。湧出温度60℃以上のお湯が完全掛け流しで注がれているため、当然ながら湯船はかなり熱く、奥様がお風呂へ案内してくださるときには「熱いので遠慮なく加水してくださいね」と仰ってくださいましたが、熱い風呂が好きな私は何回か掛け湯をしているうちにそのままで入れてしまったため、このバルブを開くことはありませんでした。でも普通の方なら薄めた方がいいでしょうね。
いかにも登別らしい主張の強い硫黄のお湯で、入りしなは「熱い上にクドいお湯なのかな」と想像したのですが、意外や意外、火照ってのぼせそうになっても、体が「まだお湯から出たくない」と訴えかけてくるほど後を引く心地よい浴感で、入ったり出たりを繰り返していたら、いつの間にやら1時間が過ぎていました。

湯上りにはご住職と軽くお話しさせていただきましたが、懐の広い人柄が伝わってくるとても穏やかな方で、どこの馬の骨かわからない私のような風来坊にも「また是非お越しください」とおっしゃってくださいました。個性をしっかり主張するお湯を貸切で堪能できる幸せ…。ありがたいお湯でした。合掌。



観音湯
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(硫化水素型) 62.6℃ pH6.3 30L/min(動力揚湯) 溶存物質4.572g/kg 成分総計4.918g/kg
Na+:995.0mg(60.84mval%), Ca++:337.2mg(23.66mval%),
Cl-:2231mg(87.73mval%), HS-:4.8mg(0.20mval%),
H2SiO3:201.6mg, 遊離CO2:319.0mg, 遊離H2S:27.2mg 

道南バス登別温泉行で終点下車、徒歩5分ほど(あるいはパークホテル前下車すぐ)
北海道登別市登別温泉町119-1  地図
0143-84-2359

事前連絡必要(入浴可能時間は17:00まで)
無料

私の好み:★★★
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帯広競馬場(ばんえい競馬)のトロッコ

2012年02月21日 | 北海道
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず


 
世界唯一のばんえい競馬が開催されている帯広競馬場には、鉄道ファンが思わず関心を寄せたくなるものが存在していると聞き、射倖心を満たすついでに立ち寄ってみました。


●ばんえい競馬で賭ける

みなさまご存じかと思いますが、ばんえい競馬のばんえいは漢字で「輓曳」と表記し、一般的な競馬のようにスピードを競うのではなく、農耕馬がおもりを載せた橇を曳くパワーとタイムを争う輓馬のレースであります。入口のインフォメーション前には橇の実物が展示されていました。「こんなに大きいのね」と感嘆したり、あるいは「意外と小さいんだな」と口にしたりと、感想は人によって様々のようですが、私個人として目を惹いたのが橇の下に展示されている蹄鉄です。小さく見難くて申し訳ないのですが、額縁に入った蹄鉄のうち、左右の大きなものがばんえい競馬の馬の蹄鉄、中央の小さなものがサラブレッドのものです。ひたすらスピードを競う繊細なサラブレッドと違い、地面を踏ん張って重い荷物を曳かなきゃいけない輓馬は蹄が大きいのですね。


 
広大なスタンド。ほとんど人影が見られませんが、これでも一応レース開催中ですよ。説明するまでもありませんが、極寒の帯広で好き好んで外へ出ようという人間は観光客の他におらず、観客の皆さんは出走時以外は暖かい館内で、新聞片手に赤鉛筆をペロペロしながらヌクヌクしているわけですね。でもこの日は最高気温がマイナス1℃と、帯広にしては暖かい陽気でしたので、私は屋外をうろうろしておりました。



私が競馬場へ入場したとき、ちょうど第4レースのパドック中でした。せっかくだからこのレースに投資してみることに。最近はすっかりギャンブルから遠ざかっていますが、学○時代から20歳代中頃にかけてはよく馬券を買っていたので(学生時代の悪行についてはもう時効でしょうからご勘弁を)、その時の知識を思い出し、無い知恵を総動員させました。



ゲートに馬が入り始め…



スターターが旗を振ってファンファーレが鳴り響き…


 
さぁ出走です。↑画像はちょうど第一障害を乗り越えようとしているところ。
コースは200メートルの直線で、途中二つの障害が設けられています。


 
各馬第一障害をクリアし、鼻息を荒げながら山場である第二障害へ向けて進んでいきます。「駿馬の疾走」と表現したいところですが、重りを載せた橇を引くばんえい競馬の馬のスピードは人間の小走り程度しかなく、人が走っても十分追い越せちゃうほどです。いや、疾走するどころか、第一障害と第二障害の間の平坦路では、むしろ馬が止まってしまいました。予備知識の無い私は「あれれ、故障発生か?」と勘違いしてしまいましたが、大きなハンプである第二障害を勢いつけて登るべく、一旦手前で止まって、馬の呼吸を整えているんだそうです。もちろんこのタイミングこそ重要な駆け引きとなるわけでして、ここでこそジョッキーの腕がものをいうのですね。


 
第二障害を越え…


 
ゴール。
普通の競馬はゴール線上に鼻先など胴体の一部が達した時点でゴールとなりますが、物資運搬の荷馬が起源のばんえい競馬は、たとえ馬がゴール線を通過しようと橇の最後部が完全にゴール線を過ぎなければゴールにならないという独特のルールがありまして、それゆえゴール線上でバテて止まっちゃった馬を尻目に、他の馬が追い越してしまうという、ゴール線上の逆転劇も起こりうるんだそうです。


 
このレースでは2番の馬が第二障害上でへそを曲げてしまい、その場にクタっと腰を下ろしてまったく動かなくなっちゃいました。しばらくその場で蹲っていましたが、調教師やジョッキーが懸命になだめ、他の馬に遅れること数分、ようやくゴールを切ってくれました。



馬が走り終えるとすぐさま次レースに向けて馬場の整備が行われます。


 
さて結果は1着9番・2着6番でした。見事的中です。でも馬連4点のボックス買い(500円×6組)で、配当が3倍しかつかなかったので、差引1500円のマイナス。


 
斜陽感が強く臭う館内。どの公営ギャンブルにも共通していますが、年配の方が目立ちます。腹ごしらえをすべくカレーラーメンをいただきました。北海道でカレーラーメンといえば室蘭ですが、ここ帯広でも意外と美味かったぞ。


●バックヤードツアー


帯広競馬場で鉄道ファンが関心を抱かずにはいられないモノは、関係者以外立入禁止以外のエリアに行かないと間近で見学できませんが、競馬開催日に実施されるバックヤードツアーに参加すれば、そのエリアに立ち入ることができるため、期待に胸を膨らませながらツアーに申し込みました。申し込みは第5レースの出走まで受け付けており、料金は無料。第5レース終了後(15:30すぎ)にインフォメーション前集合です。点呼を受け、参加者証を受け取り、隊列を組んでガイドさんの引率により、ツアー出発です。



 
事務所でアルコール消毒を受けた後、まず装鞍所を見学です。出走を控えた馬たちが馬具を装着し、公正なレース遂行のために点検を受ける場所です。この時はちょうど第7レースに出走する馬たちが係員の点検を受けている最中でした。装鞍所とはいえ、鞍を着けずに裸馬状態の背中に騎乗するのがばんえい競馬の特徴のひとつ。そんなにスピードは出ないとはいえ、乗馬には相当な技術が求められるんでしょうね。



ジョッキーがレース前夜に「軟禁」される宿舎。不正が行われないよう、外部との接触を遮断することが「軟禁」の目的。でも、あらゆるモバイルギアが普及している今、当事者を隔離することにどれだけ意味があるのか、ちょっと疑問に思ってしまいました。



第6レースの馬がゲートへ向かった直後で、誰もいないパドック。


 
パドック周辺のあちこちに残る蹄のあと。私の足(26.0cm)と比較しても遥かに大きい。


 
パドックの裏手、厩舎が建ち並ぶエリアには練習用のソリがたくさん並んでいました。そのうちの一台を用いてガイドさんが説明中。上述のばんえい競馬薀蓄の多くは、このようにツアー中にガイドさんが実物を用いながら説明してくださったものです。


 
左(上)画像に写っている小さな金属の小箱は騎手重量を調整するためのおもりみたいなもので「弁当箱」と称されているんだそうです。輓馬が負う重さがレースを左右するため、各馬の負荷条件を均すべく、このような細かな重量調整が必要とされるのですね。

なお、このバックヤードツアーはほとんどの場所で撮影が可能という、かなり参加者に優しいツアーなのですが、ツアーがちょうどゴール裏に到達した時間帯に実施される第6レースだけ、撮影が不可能になります。


●競馬場のトロッコ

 
ゴール裏まで来ました。私がツアーに参加した最大の目的は、このゴール裏にあるトロッコ列車を見学することです。競馬場なのに「鉄道」が敷設されているのであります。
そもそも、なぜ競馬場にトロッコが必要なのかといえば、ばんえい競馬の橇はレースの条件に応じて違うものの1台につき500km~1tもの重さがあり、これを全てレース毎に直線コースのスタートまで戻さねばならないため、効率よく運搬するためにトロッコが利用されているのです。約200mの直線の線路上を一台の機関車が橇運搬用の「無蓋貨車」を引っ張りながらレースごとに往復しています。現在ばんえい競馬は帯広のみとなってしまいましたが、かつて開催していた岩見沢や旭川でも同様にトロッコが活躍していました。


 
国鉄のディーゼル機関車を彷彿とさせるセンターキャブの機関車。ここでは「気動車」と呼んでいるそうでして、地元帯広の自動車修理工場で製造されたディーゼルエンジン駆動の本格派です。各部品には自動車用のものが使われているようでした。
運転席が前ではなく後方を向いているのが不思議な点ですが、これは積んだ橇が走行中に落ちないか安全確認しながら運転するための措置なんだそうでして、前方についてはバックミラーを見ながら確認しているそうです(バックミラーで前を見るなんて、ややこしい…)。また、ラジエーターも進行方向ではなく後ろ側を向いていますが、あくまで邪推ですが、これは万一過走して衝突した場合に冷却系のダメージを回避させるためなのかもしれません。
一方、レールや枕木はかつて夕張の炭鉱で使われていたものを転用しており、北海道の軽便鉄道でよく見られた762mmゲージです(この軌間のナローゲージは三岐鉄道北勢線や近畿日本鉄道内部線などでも現役ですね)。


 
線路は地面(コース)より掘り下げられた位置に敷設されており、トロッコの貨車の上面が地面と同じレベルになるよう造られています。


 
これはゴール後の馬がそのままこのトロッコ上を通過し、その際に橇だけ切り離してしまえば、効率よくトロッコ上に載せることができるからです。橇の轍を見れば一目瞭然ですが、馬は橇を引きながら直角に曲がってトロッコ上を通過しているのがわかります。でも貨車上の橇がちょっとはみ出すぎた場合などに行う微調整は人力に頼らざるを得ず、この時も3人ががりで動かしていました。



こちらは格納庫。戦時中につくられた掩体壕みたいですね。

最後に、「気動車」がエグゾーストノートを響かせながら橇を載せたトロッコをけん引する姿を動画でご覧くださいませ。風切音が入ってしまい恐縮です。運転するおじさんのハニカミが素敵ですね。



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天然温泉ホテル鳳乃舞音更

2012年02月20日 | 北海道
音更町の温泉と言えば、北海道遺産にも選ばれている十勝川温泉が有名ですが、今回は道外の観光客には知名度が低そうな音更市街に近い温泉ホテル「鳳乃舞」を訪れてみました。


 
大型ロードサイド店舗が立ち並ぶ国道241号線。交通量の多い郊外の国道で路線バスを利用する人間は少数派なのかもしれません。「鳳乃舞」最寄のバス停である「木野大通18丁目」は、沿道のロードサイド店舗とは対照的に、行き来する車のほとんどが見逃してしまいそうな小さく素朴なもので、所在なさげに半身を雪に埋めていました。


 
バス停付近の交差点には「鳳乃舞」の看板が立っているので、これを見つければ迷うことなく辿りつけるはず。ホテルは国道の西側数百メートルの小高い丘の上に建っており、ちょうどトイザラスの裏手にあたります。川を渡るとすぐに敷地へ登ってゆくアプローチの入口が左へ伸びています。



こちらは名前の通りホテルが併設されていますが、温泉浴場とホテルは入口が別になっており、手前側が日帰り入浴の入口です。駐車場には多くの車がとまっており、宿泊のみならず共同浴場としての利用も多いようです。
広いロビーに置かれている券売機で料金を支払います。受付は入浴利用者専用のようですが、中規模ホテルのフロントのようなそれなりに立派な造りになっていました。



フロント周りのロビーは広くて開放感があるのですが、それに反して脱衣室はちょっと狭く、棚やロッカーの数はしっかり確保されているのですが、それらが室内に詰め込まれるように置かれているためスペースに余裕がなく、私が訪問した時のように混雑していると他客との干渉が気になって少々ストレスでした。
脱衣室内に各浴槽の温度設定が表示されており、温泉の源泉温度が低いためどの浴槽でも加温されているのですが、状況に応じて適宜調整されるようですね。



洗い場にはオートストップ式の単水栓とシャワーの組み合わせが計34基設置されているのですが、ホテル宿泊客もこの浴場を利用するためなのか、あるいは単に利用者サービスなのか、銭湯料金にもかかわらずシャンプーが備え付けられていることには驚かされました。と同時に不思議に思ったのが、シャンプーはあるのにボディーソープは無く、その代りに石鹸が用意されている点。なぜ石鹸? 見知らぬ他人の使った石鹸はあまり使いたくないです…。ちなみに↑画像で右側に映っている浴槽は高温風呂です。



内湯には高温風呂、大浴槽、電気風呂、泡風呂、そして水風呂の計5種類が設けられており、水風呂以外は源泉を加温して使用しています。曇って見にくいのですが↑画像で左側にはサウナ・水風呂・泡風呂が、そして右側には大浴槽が映っています。各浴槽とも御影石板貼り。大きなガラス窓のおかげで、室内には陽の光がさんさんと降り注ぎ、明るく開放的です。


 
こちらは大浴槽。10人サイズで、やや深めのつくりです。このお風呂の中では最も容量が大きいのですが、大とはいえ特別に大きいわけでもなく、特別な装置が施されているわけでも温度設定に特徴があるわけでもないので、ごく一般的な主浴槽という意味だろうと思われます。アンモナイトのような形状の湯口から源泉が注がれ、浴槽縁の切り欠けから排湯されていきます。加温の上、塩素消毒されているものの、放流式の湯使いです。

お湯は薄い山吹色透明で、薄い黄色っぽい半透明の湯の華が沢山浮遊しています。知覚的には土気と微かな甘味、そして弱い土気のような匂いを有しています。塩素消毒に関してはほとんど気になりませんでした。泉質名だけで捉えると周辺地域で湧出する温泉と同様に重曹泉ですが、MgイオンやCaイオンが多いためか、帯広周辺や十勝川温泉のようなモール泉とは一線を画す特徴を有しており、ツルスベ感は乏しくて寧ろ引っかかる感じの方が強いように感じられました。


 
露天風呂は6~7人サイズで、こちらも加温されたお湯が注がれて切り欠けから排湯されてゆく放流式の湯使いです。大浴槽と同じく、一般的な浴槽より若干深めに作られていました。頭上には屋根が被さっていますが、前方視野は開けており、木立が広がる前庭を眺められる開放的な環境です。


 
露天風呂の湯口。露天に限らず各浴槽の湯口をはじめとして浴室各所にはメルヘンチックなレリーフが埋め込まれており、特に露天の仕切り壁は同じ作者による大型のレリーフによって装飾されていました。

私が訪問したのは平日午前中でしたが、そんな時間帯だというのに館内は多くの客で賑わっており、この温泉の人気の程がうかがえました。近隣には私の大好きなモールの温泉が多いため、そうしたお湯と比較してしまうと、相対評価としてお湯に関してはあんまり印象に残るものではありませんでしたが、多種な浴槽が利用できて使い勝手も良く、頻繁に係員の方が清掃に来ることからもわかるように、館内はよく手入れされて清潔感が保たれているので、日常使いの温泉浴場としては評価が高いのだろうと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩温泉 36.6℃ pH7.2 320L/min(自噴) 溶存物質1.083g/kg 成分総計1.127g/kg 
Na+:168.0mg(62.59mval%), Mg++:21.5mg(15.15mval%), Ca++:34.0mg(14.55mval%),
Cl-:61.6mg(14.59mval%), HCO3-:612.6mg(84.65mval%),
H2SiO3:152.6mg, 遊離CO2:44.6mg,

帯広駅から北海道拓殖バスの鹿追・新得・然別湖方面行(十勝バスの上士幌・糠平行でも可だが本数少ない)で木野大通18丁目下車、徒歩5分
北海道河東郡音更町木野西通17丁目5-13  地図0155-43-5191
ホームページ

6:00~23:30(受付23:00まで) 年中無休
400円
ロッカー(下足箱・脱衣室ともに100円リターン式)・シャンプー&石鹸・ドライヤーあり

私の好み:★★
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帯広市街 ふく井ホテル

2012年02月19日 | 北海道
 
今回は帯広駅前のビジネスホテル「ふく井ホテル」を取り上げてみます。帯広駅前に林立するホテルの一部は「天然温泉」を謳った大浴場を売りにしていますが、この「ふく井ホテル」は他のホテルとはちょっと違う。何が違うかと言えば、温泉が自家源泉で掛け流しであるという点であります。他のホテルはバリバリの循環かあるいは遠隔地からローリー運搬の上でさらに循環という惨憺たる湯使いですので、泉質重視という観点から考えると、そうしたホテルは眼中に入ってきません。ということで、これまで私は何度も帯広で宿泊していますが、いまでは定宿としてこちらを利用しています。



まずは客室から。この時はシングル1泊朝食付で5000円ぽっきりのプランを利用しました。11.5㎡の部屋にシングルベッドと一通りの備品が詰め込まれており、まさに寝るためだけの空間といってよいでしょう。おそらくこのホテルでは一番狭い部屋ではないかしら。もっとも、私はチェックイン後も外出してひたすら市街の温泉銭湯をハシゴし、街でお酒をひっかけたあとは、大浴場に入ってただ寝るだけなので、狭くても全く問題ありません。


 
ビジネスホテルに必須の備品類はちゃんと揃っています。お部屋のメンテナンスもよく行き届いており、安宿にありがちな手抜き感はありません。無線LANが全客室で使えるのが嬉しいところです。

写真は撮っていませんが、このホテルは朝食がとっても美味い。バイキングではなく、和定食と洋定食の選択制なのですが、十勝の食材を中心に採り入れてしっかり作られており、ボリュームもあって本格的なのです。私は洋定食が好きでして、おかわりできるパンの他、ホクホクのポテトや畜産王国ならではのソーセージ類は十勝の誇る味であり、廉価な宿泊代金なのにあの食事がいただけるとは、かなりコストパフォーマンスが優れているのではないでしょうか。



大浴場は地下一階。EVホールの目の前には暖簾がかかっています。



脱衣所は特に広いわけではありませんが、ホテルらしくよく手入れされており綺麗で、洗面台にもアメニティ類が一通り揃っています。床が畳敷きなので足元爽快。



積んであるタオルは使い放題。


 
浴室の中央には小判型の大きな浴槽が据えられており、その浴槽を囲むようにシャワー付き混合栓が22基設置されています(カランのお湯は真湯)。換気状態がよく、地下なのに湯気があまり籠っていないのはありがたいです。


 
柱に湯口が開いており、加水や加温は一切ない源泉そのままのお湯がドバドバ絶え間なく注がれています。見た目は赤っぽい綺麗な紅茶色透明、芳しいモールの香りに弱い金気臭とタマゴ臭がブレンドされて湯面から立ち上り、口にすると卵黄味と弱金気味がミックスされて感じられます。また、湯面には気泡が浮かび、湯中の肌には細かな気泡が付着します。ツルツルスベスベのとても気持ち良い浴感で、病み付きになりそうなほど後を引くお湯には感激。17万都市の玄関口である駅前とは思えない良質の温泉です。



お湯はふんだんに浴槽の縁からオーバーフローしていきます。ビジネスホテルの大浴場は、たとえ源泉使用でも循環されるのが当たり前ですが、こんな掛け流しの湯使いをしている施設は滅多にお目にかかれないのではないでしょうか。

帯広駅前ではいろんなホテルに泊まってきましたが、私でしたら「十勝ガーデンズホテル」か「ふく井ホテル」の二択ですね。なお「ふく井ホテル」では立ち寄り入浴は受け付けていないので、宿泊しないと入浴できません。



アルカリ性単純温泉 45.8℃ pH8.8 200L/min 溶存物質0.672g/kg 成分総計0.672g/kg
Na+:159.3mg(97.74mval%),
Cl-:92.2mg(34.76mval%), HCO3-:269.5mg(59.09mval%),
H2SiO3:84.9mg, 遊離CO2:0.0mg, 腐植質:4.2mg

JR帯広駅前
北海道帯広市西1条南11丁目19  地図
0155-25-1717
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立ち寄り入浴不可
宿泊者は15:00~翌朝10:00利用可能

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