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蔵王の川原湯からS字カーブの坂道を登ってスキー場へ向かう途中にある「岡崎屋旅館」へ、湯めぐりこけしを利用して立ち寄り入浴してきました。訪問したのは週末の午後でしたが、ゲレンデに近いためか館内は多くのスキー客で賑わっていました。
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いかにもこけしの産地らしく、ロビーにはこけしのコレクションがずらり。
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ロビーや玄関は2階に位置していますが、浴場は1階。階段またはEVで下へ降り、そこから廊下をまっすぐ進んでいくつかの戸を潜った突き当りがその入り口です。浴室は内湯「雪見の湯」と露天「お釜の湯」、および内湯「雪影の湯」と露天「ドッコの湯」がぞれぞれ組み合わせとなっており、男湯は「雪見の湯」と「お釜の湯」でした。他の方のブログを拝見しても、私の時と同じお風呂に男湯の暖簾がかかっていたようですが、日によって暖簾替えが行われるのでしょうか、あるいは固定されているのでしょうか。
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脱衣所は広々しており、床は茣蓙敷きなので足元快適。棚の数も多く、ひとつひとつの大きさも十分です。
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内湯「雪見の湯」。大きなガラス窓に面しており、子どもだったら泳ぎだしたくなるような、プールを思わせる大きな浴槽がひとつ据えられています。余裕で10人以上は入れるでしょう。縁が石板で内部はタイル貼り。そのタイルは温泉の硫黄が黄色く付着しています。窓は大きく採光も十分なのですが、硫黄による腐食が進んで壁面の色がくすんでいるためか、室内はあまり明るいように感じられませんでした。これを単なる腐食劣化と捉えるか、強い硫黄のパワーによる独特の味わいと受け止めるかは、お客さんの感性次第といったところ。なお洗い場にはシャワー付き混合栓が7基設置されていました。水栓金具は硫化により黒く変色しています。
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宿の名前には「扇の館」という言葉が冠されていますが、湯口には扇を象ったと思しき石が置かれ、「源泉 天然温泉」という文字が誇らしげに彫られています。そして、その下から滔々と源泉が完全掛け流しで浴槽へ注がれています。私がこちらを訪れた理由は、こちらで使われているお湯は自家源泉であることを知ったからでして、湯船に浸かりながら「他ではお目にかかれないお宿独自のお湯を楽しんでいるんだ」と実感すると、温泉ファンとしては感慨もひとしおです。
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こちらは露天風呂「お釜の湯」。ガラス窓の向こう側の庭にポツンと置かれたこの浴槽は、蔵王大石を刳りぬいて造ったもので、文字通り蔵王のお釜をイメージしていのるんだとか。お宿の説明によれば、この岩はもともと黒い材質なのですが、お湯が表面を嘗めて付着することにより白く染まっているとのこと。おそらく相当の手間を経てつくられたのだろうと想像しますが、こじんまりとしている上に、浴室からちょっと離れた湯船まで、寒い中を裸で行くのがちょっと虚しく、更には外気で冷やされてお湯がぬるくなっていたため、今回は利用しませんでした。
さて肝心のお湯についてですが、見た目はほぼ無色透明で、コロイド状の白く微細な湯の華が舞っています。訪問時は独占状態で他客によるお湯の攪拌が無かったために澄んでいましたが、多客時には薄ら白く混濁するかと思います。また浴室内部の壁面や水栓を腐食劣化させてしまうほど強い硫黄臭が室内に充満しており、その匂いはまるで蛆虫殺しのような刺激を伴いながら漂っています。口にすると強烈な酸味やえぐみ・渋みが口腔を収斂し、すぐに真水で口を濯がないと口の中がおかしくなってしまいそうなほどでした。加水もなされていないとのことで、その湯加減はやや熱め。強い個性と熱い湯加減のため、温泉があまり得意でない人にはパンチが強く感じられるかもしれません。でもこの個性的な知覚こそ温泉ファンにはたまらないのではないでしょうか。
岡崎屋源泉
酸性・含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉
47.6℃ pH1.40 蒸発残留物3075mg/kg
Al+++:226.9mg, Fe++:65.7mg,
Cl-:683.7mg, HSO4-:2375mg, SO4--:1763mg,
H2SiO3:228.9mg, 遊離CO2:584.6mg, 遊離H2S:5.6mg,
山形駅より蔵王温泉行バスで終点下車、徒歩約10分
山形県山形市蔵王温泉48 地図
023-694-9222
ホームページ
湯めぐりこけし利用時のみ立ち寄り入浴可能(14:00~17:00)
(以前は現金500円でも利用できたように記憶しているのですが、HPでは日帰り不可と案内されています)
貴重品帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★