温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

つがる市(旧木造町) しゃこちゃん温泉

2016年05月24日 | 青森県

つがる市の市役所前にある「しゃこちゃん温泉」は、地域の方々から愛されている公営の日帰り入浴専門施設です。風変わりな名前ですが、寿司のネタや北海道の半島の名前とは関係なく、市内(旧木造町)にある亀ヶ岡遺跡から発掘された遮光器土偶(縄文時代につくられた土偶の一種)に因み、遮光器を渾名っぽくして「しゃこちゃん」と名付けているわけです。



温泉施設名のみならず、平成の市町村合併が行われる以前の旧木造町時代には、竹下内閣時代のふるさと創生事業により、町の玄関口である木造駅の駅舎にも巨大なしゃこちゃんが設えられました。この駅舎はたまにテレビなどでも取り上げられるため、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。今回の記事を書くにあたって、自分で所有しているしゃこちゃん駅舎の画像を探したのですが、なぜか夜間に撮影したものしか見当たらなかったので、止むを得ずあまり写りの良くないこの画像をアップさせていただきました。夜の巨大「しゃこちゃん」はかなり不気味ですね。

さて話を温泉へ戻しますと、20年近い前のことですが、諸般の事情により私は津軽地方で日々を過ごしていたことがあり、その頃には毎月のようにこの「しゃこちゃん温泉」へ通っていました。しかし、当時は温泉に対してあまり興味がなかったため、どんなお湯でいかなる施設だったか、あまり考えずにその日の汗を流していました。
それ以来ここを訪れる機会がなく、どんなお風呂であったかすっかり忘れてしまったので、昨年初夏、久しぶりに再訪してみることにしたのです。

私が駐車場へ車をとめると、いかにも公営施設らしい大きな建物へ、次から次へと地域の老人が湯浴みのために入館しており、ここは本当に温泉施設なのか、もしかしたら老人ホームなのではないかと、自分の目を疑いたくなりました。
広々とした玄関ホールに設置されている券売機で料金を支払い、受付カウンターの上に置かれている箱に券を投入して、浴場へと向かいます。ホールの奥には食堂があり、広々としたロビーはお年寄りの憩いの場となっていました。


 
浴室入口には、浴槽によって温度設定が異なる旨が明示されていました。一応浴槽の用途に応じて湯加減を調整しているようですね。しかしながらどの浴槽でも、実際にはこれより若干熱かったような気がします。



天井が高くて広々としている浴室には、たくさんのカランの他、各種浴槽が据え付けられており、とても320円で利用できる施設だとは思えないほど充実しています。もし同じ広さとバラエティーの多さを有する入浴施設が首都圏にあったら、間違いなく700円以上の料金設定になるでしょう。公営とはいえ、この安さは素晴らしい。さすが温泉天国青森県は、施設の数や泉質のみならず、料金面でも他県より抜きん出ていますね。

洗い場は窓側の壁際を中心にして、数ヶ所に分かれて配置されており、計31基のシャワー付きカランが取り付けられています。


 

湯口から源泉のお湯が注がれておる大きな主浴槽には、部分的に泡風呂装置が設けられており、その勢いもあってか、縁から絶え間なくお湯が溢れ出ているので、入浴客の爺様たちは浴槽周りの広いスペースを活かし、トドを楽しんでいらっしゃいました。洗い場の床でもオーバーフローが流れる部分は、茶色い温泉成分が波紋のような形状を描いてこびりついていました。



主浴槽の手前側には、大空に浮かぶ雲を連想させるような、水色と白のマーブル模様が施されている円形の浴槽が設置されており、通常はジャグジーが稼働しているそうですが、私の訪問日には何も動いておらず、単なるぬるめの温泉槽と化していました。


 
浴室の奥には、熱いお湯の浴槽や打たせ湯、そしてサウナや水風呂など各種浴槽が並んでいます。熱い浴槽は加水を少なくしているのか、お湯の色が他の浴槽より濃く、そして本当に熱いんです。浴室入口の貼り紙には43℃±1℃と記されていましたが、私の体感ではもっと高かったように感じられました。
一方、サウナの前にある水風呂もちょっと変わり種。単なる冷水ではなく、飴色を帯びているのです。おそらく何かしらの成分を多く含んでいる冷鉱泉なのでしょうね。青森県の温泉銭湯では、こうした特徴的な鉱泉を用いている水風呂によく出くわすので、温泉槽のみならず、水風呂も要チェックなのであります。


 
浴室内をコの字形にぐるっと廻った最奥に位置しているのが、この岩風呂です。一見すると露天風呂のようですが、頭上にはガラス張りのとんがり屋根(四角錐)が載っかっており、露天ではなくサンルームのような造りです。隅っこの湯口から滔々とお湯が注がれ、手前側の縁からしっかり溢れ出ていました。この岩風呂を含め、各浴槽とも放流式の湯使いです。

お湯は紅茶のような色を帯びており、浴槽によって若干の差異はありますが、槽の底面が見えないほど濃い色を呈しています。お湯を口に含むとはっきりとした塩味や弱い出汁味が感じられ、湯面からはアブラ臭とヨード臭を足して2で割ったような匂いが放たれています。実際に浴室へ入った瞬間は、薄いながらもこの匂いを嗅ぎ取ることができました。湯船の中でははっきりとしたツルツルスベスベ浴感があり、その滑らかな感覚がとても気持ち良いので、ついつい長湯したくなるのですが、さすがに濃い食塩泉だけあって火照り方が強く、迂闊に長湯すると体力を奪われてバテてしまうかもしれません。私はバテなかったものの、汗がいつまで経っても止まらなかったため、上述した水風呂に入って、体をしっかり冷却した後、お風呂から上がりました。夏場の入浴は体力勝負になりそうですが、厳冬期には体の芯から温まる強力な味方になってくれるでしょう。五所川原周辺で湧出する温泉の特徴がよく現れているお湯でした。


若緑温泉
ナトリウム-塩化物温泉 48.1℃ pH7.6 溶存物質9.348g/kg 成分総計9.348g/kg
Na+:3281mg(95.87mval%), NH4+:11.2mg, Mg++:16.4mg, Ca++:21.4mg,
Cl-:4345mg(84.86mval%), I-:1.7mg, HCO3-:1328mg(15.08mval%),
H2SiO3:170.2mg, HBO2:49.5mg,
(平成27年3月26日)

JR五能線・木造駅より徒歩15分(1.3km)。もしくは五所川原駅より弘南バスの出来島行か南広森行で「しゃこちゃん温泉」下車すぐ。あるいは鯵ヶ沢行きに乗車し「つがる市役所前」で下車してもアクセス可能。
青森県つがる市木造若緑52  地図
0173-42-1277
紹介ページ(つがる市公式サイト内)

4月~9月→9:00~22:00、10月~3月→9:00~21:00 第2・4火曜および大晦日の午後と元日定休
320円
貴重品用ロッカーあり(受付前)・有料ドライヤーあり(10円/3分)、各種入浴グッズ販売あり、

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする