温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

真湯温泉 真湯温泉センター交流館

2017年06月03日 | 岩手県
 
岩手県の一関から厳美渓を経て栗駒山や須川高原方面へ向かう国道342号は、その途中で一気に本格的な山道へと様相を変えるのですが、その変化を見せる地点こそ今回取り上げる真湯(しんゆ)温泉です。こちらは公営の温泉施設であり、今回取り上げる「温泉交流館」のほか、宿泊用のコテージやアウドドア施設などが一体になっている公営の複合施設です。以前は「真湯山荘」という名称でしたが、2011年の夏にリニューアルオープンし、お風呂の造りや温泉の湯使いなどが良くなったという情報を得ていたので、満を持して今回伺うことにしました。


 
尖り屋根の共用玄関から館内へ入り、「多目的スペース」と称されている廊下のような空間を歩いて、受付があるロビーへと向かいます。


 
受付ロビーから今度は浴場入口ホールへと進むと、正面奥にカーペット敷きの小上がりが設けられており、それを挟むように右手が女湯、左手が男湯と分かれていました。
リニューアルオープンからまだ5〜6年しか経っていないので、脱衣室は綺麗な状態が保たれており、使い勝手も良いのですが、風情よりも機能性を重視した誂えになっているので、どちからと言えば温泉というよりはスポーツジムの更衣室のような雰囲気です。


 
内湯も実用性や機能面を優先したような造りであり、妙に明るくて床面積も広く、壁や床には白いタイルが、そして浴槽にはスカイブルーのタイルが用いられているため、お風呂というよりプールのような印象を受けます。
洗い場にはシャワー付きカランが7基設置されていました。


 
窓下に設けられた主浴槽は、スペードを半分に割って逆さにしたような曲線を描く形状をしており、収容可能人員は不明ですが、なかなかの広さを有しています。そして洗い場側は浅い造りになっていました。露天風呂出入口付近に湯口があり、洗い場側の湯尻にオーバーフローを受ける排水口が設けられていますが、浴槽内にもお湯の供給口と吸引口があるので、お湯の循環が行われているようです。しかしながら、湯尻の排水口からは、湯口からの投入量に見合うだけのお湯が溢れ出ているので、浴槽のお湯を循環消毒しながら、源泉の投入も同時並行で行う、循環放流兼用の湯使いなんだろうと推測されます。


 

小さな副浴槽は4〜5人サイズ。湯口からチョロチョロとお湯が落とされており、その影響なのかぬるめの湯加減になっていました。なお浴槽縁の切り欠けの外側(床側)には、オーバーフローのお湯が床に流れていかないよう、ガイドが取り付けられていました。

この内湯の主浴槽と副浴槽に用いられているお湯は「3号源泉」と呼ばれるお湯で、見た目は無色透明ですが、主浴槽の湯口には白い析出が少々こびりついているほか、浴槽底面のタイル目地が虹色に輝いて見えたり、湯面で陽光を青白く反射したりと、無色透明の硫酸塩泉らしい視覚的特徴が確認できます。また湯口から吐出されるお湯からは仄かながらはっきりとしたタマゴ臭が嗅ぎとることができ(湯口のみで、浴槽のお湯からは匂いません)、石膏感も得られました。


 

一方、露天風呂は櫓の下に浴槽が設けられたような趣きで、この櫓状の構造物により頭上は完全に覆われてしまっていますが、側面は柱以外に視界を遮るものはなく、周囲の森の緑に囲まれ、温泉浴と森林浴を同時に楽しめるような環境になっていました。
この露天風呂。明らかに内湯とお湯が異なっており、無色透明だった内湯とは対照的に、橙色に強く濁っています。それもそのはず、内湯とは別の源泉(鹿の湯源泉)を使用しており、しかも内湯と違って循環消毒のない放流式(いわゆる掛け流し)の湯使いを実践しているのです。季節によっては加温されることがあるそうですが、私が訪れたのは夏でしたから、加温も無い完全掛け流しの状態だったと思われます。


 
露天の湯口まわりには析出物がびっしりとこびりついていました。この湯口から注がれる時点でのお湯は無色透明で50℃近くありますが、外気に触れたり温度が下がったりするうちに、強い濁りを呈するようになるのでしょう。循環ろ過をしていないため、湯船のお湯は濁りや膜などを形成することがあり、事情を知らないお客さんのために、そうした事象についての説明が掲示されていました。


 
浴槽の底には沈殿がたくさん溜まっており、私が湯船の中を歩くと、真夏の積乱雲みたいにその沈殿がモクモクと舞い上がって、濁り方がますます強くなりました。浴槽内にはステップが設けられていたり、処々に岩が置かれていたりと、いろんな「トラップ」が仕掛けられているのですが、お湯の濁り方があまりに強いために、湯舟の中がどうなっているか目視することができません。このため受付で「お風呂では足元にご注意くださいね」と説明を受けましたが、なるほどその注意の通り、湯舟では慎重に歩かないと足指をどこかにぶつけて「痛てぇ」なんて叫んでしまいそうです。

上述のように湯口では50℃近くありますが、湯船では42℃前後というちょうど良い湯加減に落ち着いていました。加水なしでこの温度に保たれているのですから、湯量をコントロールすることで湯加減を調整しているのでしょうね。湯口のお湯をテイスティングしてみますと、まず金気味が口の中に広がり、遅れて芒硝や石膏の風味も感じられました(なお金気の匂いは弱めでした)。湯中ではギシギシと引っかかる浴感があり、細かな浮遊物が肌のシワに入り込んでまとわりついてくるような感覚すら得られます。お風呂はちょうど良い湯加減であるにもかかわらず、温泉由来の温浴パワーが強いのか、肩まで浸かって間もなく体がガツンと重くなり、長湯することができなくなりました。また、この露天風呂から上がってタオルで体を拭うと、タオルがオレンジ色に染まりました。内湯とは対照的な、あまりに個性的なお湯にビックリです。

癖のないお湯をご希望の方は内湯へ、いかにも温泉らしい濁り湯をご希望の方は露天風呂へと、使い分けできるのが面白いところですね。一回で二度美味しいこの温泉施設、私が訪れたのは平日の昼間でしたが、それでも常時5人前後のお客さんが利用しており、人気の高さが窺えました。


【屋内風呂】
真湯温泉(3号泉)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 51.2℃ pH8.7 溶存物質1088.4mg/kg 蒸発残留物1166mg/kg 
Na+:195.4mg(57.74mval%), Ca++:120.1mg(40.69mval%),
Cl-:8.5mg, HS-:0.4mg, S2O3--:0.3mg, SO4--:699.0mg(95.03mval%),
H2SiO3:37.8mg,
(平成24年7月31日)
循環・消毒あり(浴槽衛生保持のため)
加温・加水なし

【露天風呂】
真湯温泉(鹿の湯)
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 53.8℃ pH7.1 溶存物質2.294g/kg 成分総計2.310g/kg
Na+:210.2mg(27.57mval%), Mg++:35.2mg, Ca++:417.3mg(62.80mval%), Fe++&Fe+++:5.6mg,
Cl-:3.3mg, SO4--:1446.0mg(93.77mval%), HCO3-:114.8mg,
H2SiO3:56.2mg, CO2:15.6mg,
(平成17年8月16日)
加温する場合あり(入浴に適した温度にするため)、加水循環消毒なし

JR一ノ関駅より岩手県交通の須川温泉行き路線バスで「真湯山荘」バス停下車すぐ
岩手県一関市厳美町字真湯1  地図
0191−39−2713
ホームページ

10:00〜19:00(受付18:30まで)
600円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥州平泉温泉 そば庵しづか亭

2017年06月01日 | 岩手県
 
どこまでも田園風景がつづく岩手県平泉付近。


 
水田と山林がモザイク模様を成す景色の中を走りながら、路傍に立つ幟や看板を目印に路地へと入ってゆくと・・・


 
今回の目的地である「そば庵しづか亭」に到着です。こちらは名前の通りそば処ですが、温泉旅館でもあり、宿泊はもちろん、お食事をすれば付帯している温泉浴場にも入れるので、今回の訪問先に決めたのでした。なお入浴のみの利用は不可なんだそうです。


 
民芸テイストな館内に入ると、スタッフの方が手際よく対応してくださいました。食事と入浴の順番はどちらが先でも良いのですが、私はお風呂を先にし、食事を後にすることにしました。まず帳場で食事の注文を決めて料金を先払いし、その際にお風呂から上がる時間をスタッフの方に伝えておきますと、その時間に合わせて料理を用意してくださいます。
というわけで、注文と支払いを済ませてから、「ゆ」と記された大きな暖簾をくぐります。



その先では、番傘と向き合うように、紺と紅の暖簾が掛かっていました。


 
さすが旅館でもあるので脱衣室はきちんと手入れされています。室内には入浴に関する注意書きが掲示されており、これによれば、お湯が熱い時はまず湯もみをしてみると良いんだとか。


 
広い浴室にはガラス窓を通じて陽光が降り注いでおり、その明るさが手伝って実際の床面積以上に広く感じられます。また浴室の床の上をオーバーフローのお湯が常に流れて漱いでおり、温泉成分の付着によって床は漆器を彷彿とさせるほど黒光りしていました。


 
洗い場にはシャワー付きのカランが5基並んでおり、シャワーから出てくるお湯は温泉のようです。


 
浴槽は一辺が3m+αの正方形。縁は石材で内部はタイル張りです。地下500mから汲み上げられているこの温泉は、源泉の温度が33.5℃なので加温されていますが、加水循環消毒を行わない放流式の湯使いを実践している点は大変素晴らしい。源泉100%の温泉が湯口から滔々と注がれており、この豊富なお湯が存分にかけ流されて、床に溢れ出ていたのでした。



ドアを開けて露天風呂へ。四方を高い塀で囲まれているため、正直なところ開放感はいまひとつですが、浴槽のまわりは日本庭園風に設えられており、塀の上から目に入る周囲の緑が借景となるので、ネガティヴ面を補って余りあるほどの趣きが感じられました。


 
石造りの露天浴槽は、内湯より一回り小さい2.5m四方の正方形。石樋からお湯が注がれており、その温泉成分によって浴槽内は薄い褐色に染まっていました。お湯は内湯と同じ源泉であり、加温した上での放流式である点も同様です。

お湯の見た目はほんのり褐色を帯びた透明で、テイスティングしてみると、非鉄系の金気味と微かなモール泉的な風味が得られました。所謂モール泉と称するタイプに属するお湯と捉えて良いかと思います。加温の影響なのか、泡付きなどは見られませんが、モール泉の大きな特徴であるツルツルスベスベの滑らかな浴感が大変気持ち良く、入浴中は体への負担が軽くて、上がり後には心地よい爽快感に包まれました。入浴に適した温度にするため加温している訳ですが、是非とも源泉そのままのお湯にも入ってみたいものです(暑い時期には非加温のお湯の方が絶対に気持ち良いはず)。いずれにせよ、なかなかの良泉であることに違いありません。


 
さて私が今回注文したのは冷やしのとろろそば。美味しくいただきました。私はこのお蕎麦だけでしたが、この日は日帰りの懐石コースを注文するお客さんが多く見られ、皆さんゆったりと味覚と温泉を楽しんでいらっしゃるようでした。


めぐみの湯
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 33.5℃ pH7.8 溶存物質1.012g/kg 成分総計1.012g/kg
Na+:277.8mg, Mg++:0.8mg, Fe++&Fe+++:0.1mg,
Cl-:205.6mg, HCO3-:413.8mg, CO3--:2.0mg,
H2SiO3:78.7mg, CO2:9.7mg,
(平成10年12月14日)
加温あり:入浴に適した温度に保つため

岩手県西磐井郡平泉町平泉長倉10-5  地図
0191-34-2211
ホームページ

ランチタイムの入浴時間10:30〜15:00
ランチメニューを注文すれば入浴可能。入浴のみの利用不可。なお入浴代は不要ですが入湯税は別途要します(1人75円)
貴重品受付預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする