経済なんでも研究会

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新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-07-01 08:05:50 | SF
第4章  錬 金 術 と 太 陽 光

≪39≫ 道路革命 = 帰りの車では、改めて高速道路の状態を観察した。もう何回となく走っているが、これまでは遠くの景色を眺めていたことが多い。車の上半分は強化ガラスで造られているから、外はよく見える。でもスピードが速いので、近くのモノには焦点が合わない。

高速道路は片道3車線で、幅は20メートルほど。両側には高さ1メートルぐらいの壁が続いている。その壁には点滅する小さなライトが、いくつも並んでいた。走る車の真下には鉄道のレールのような黒い線が見え、はるか遠くまで延々と伸びている。これがダーストニウム合金で、車を浮かせて誘導しているに違いない。

ぼくたちを送り出しながら、シュベール博士がつぶやいた言葉は印象的だった。
「100年ぐらい前までは、自動車にカメラや赤外線装置を積み込んで、人や障害物とぶつからないようにする。その技術ばかりを追求していたんじゃ。この自動運転車はかなり進歩したんじゃが、やっぱり人間が運転席におって注意していないと事故が起きてしまう。

そこで技術者たちは、考え方を一変した。自動車ではなく、道路に車をコントロールさせる。この革命的な発想の転換で、いまの交通方式が完成した。人間は全く関与しない完全自動車で、事故は皆無。だが本当は道路革命と呼ぶべきだと、私は常々思っておるんじゃ」

ぼくが地球を飛び出したころ、日本でも自動運転車の開発が進んでいた。車が障害物を感知して、ブレーキをかける。この技術のおかげで事故はかなり減ったが、皆無というわけにはいかなかった。やはり発想を転換して、道路に主導権を持たせた方がいいのかもしれない。

路面を利用した太陽光発電にも、感心せざるをえない。日本では建物の屋上とか、田舎の休耕田に発電パネルが敷き詰められていた。それより道路にパネルを敷いてしまえば、景観も損なわれない。送電線を張る手間もなくなる。日本もそうしたらいいと思ったが、そのためにはダーストニウム合金が必要であることに気が付き、ちょっとがっかりした。

国家機密である新合金の製法は、教えてもらえそうにない。だが、その存在やその弱点を、どうしてぼくに教えたんだろう。いくら考えても判らない。彼らは結局「あの男が地球に戻ることはない」と考えて、安心しているのだろうか。

                             (続きは来週日曜日)


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