経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

“逆イールド”に 怯える市場

2019-08-20 08:02:12 | 株価
◇ 景気後退の前触れなのか = ダウ平均株価は先週14日、ことし最大800ドルの下落を演じた。ドイツやイギリスがマイナス成長に陥ったというニュースもあったが、市場が最も警戒したのはこの日に現われた“逆イールド”と呼ばれる現象。具体的には、債券市場で10年もの国債の利回りが1.57%にまで低下し、2年もの国債の利回りを下回ったことを指す。この現象は景気後退の前触れとみられており、00年や07年のときも発生してから1年ほどでアメリカ経済は不況に落ち込んでいる。

ふつう金利は、償還期限が長いほど高くなる。その間に償還不能など予期しない事態が起こりやすくなるからだ。ところが景気後退が近づくと、全体として金利は下がる。債券価格は上がるので、長期債を買っておけば儲かると考えられるわけだ。このため“逆イールド”は、景気後退の前兆になる。市場関係者は、そう信じ込んでいるようだ。

アメリカの長期金利が低下したため、今回は主要国の金利も下げている。その結果、14日にはイギリス、カナダ、ノルウェー、香港でも“逆イールド”現象が発生した。東京市場でも発生しているが、日本の場合は日銀の買い入れで国債の流通量が少なくなっており、景気との関連性を見出すことは難しいらしい。

投資家は景気後退が近づいたとみると、株式市場から資金を引き揚げる。その資金の行き先として、比較的安全な長期国債を考える。すると国債の価格は上がり、利回りは下がる。“逆イールド”が発生する理由としては、こうも考えられるだろう。しかし、そうだとしても、“逆イールド”が、景気後退の前触れ現象となることに変わりはない。

       ≪19日の日経平均 = 上げ +144.35円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 

今週のポイント

2019-08-19 07:56:26 | 株価
◇ 市場の環境は悪化の一途 = ダウ平均株価は先週14日、800ドルの大幅下落を演じた。ことし最大の下げ幅である。10年もの国債の利回りが2年もの国債の利回りを下回る“逆イールド”現象が、12年ぶりに発生。景気後退の前触れだと警戒された。ほかにもドイツやイギリスの成長率がマイナスに落ち込むなど、悪材料が続発した。あと反発した日もあって、ダウ平均は週間411ドルの値下がり。

日経平均も上下動を繰り返しながら、週間では266円の値下がり。これで3週連続の下落となった。ニューヨーク株の軟調やヨーロッパ経済の不調を嫌気したほか、円相場が7か月ぶりに105円に接近したことも売り材料になった。また4-6月期の企業決算発表が進むにつれて、減益幅が拡大してきたことも重荷になってきている。

7月半ば以降の株価は、大きく下げたあと反発するパターンの上下動を繰り返している。だが結局はズルズルと下げる形に。リーマン・ショック時のような切迫感はないので、反発もしている。しかし市場を取り巻く環境は日に日に悪化しているから、株価は上昇し切れない。こうした環境に変化の兆しはなく、多くの市場関係者は「相場は長期的な下降局面に入った」と感じ始めているようだ。

今週は19日に、7月の貿易統計。21日に、7月の訪日外国人客数。22日に、6月の全産業活動指数。23日に、7月の消費者物価。アメリカでは21日に、7月の中古住宅販売。22日に、7月のカンファレンス・ボード景気先行指数。23日に、7月の新築住宅販売が発表される。なお21日からは、日米貿易交渉の閣僚会議。

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

ハラをくくった 中国 : 対アメリカ

2019-08-17 08:13:49 | 中国
◇ トランプの落選を待つ戦略に = 中国のアメリカに対する姿勢が、明らかに変わってきている。トランプ大統領は1日、中国製品のほとんど全部に10%の関税をかける第4弾の制裁措置を発表した。ところが中国側はこの措置を激しく非難したものの、これまでのような報復措置はとっていない。アメリカからの農産物輸入を停止したとも伝えられているが、中国側は無言のままである。

人民元の対ドル相場が5日、11年ぶりに7元を割り込んだ。アメリカ財務省はさっそく中国を「為替操作国」に指定し、厳しく非難した。ところが元相場は、その後も7元を下回ったまま。上海市場の元相場は、人民銀行が毎朝決める基準相場によって左右される。この基準相場が中国側の言う通り「アメリカの関税引き上げで、元の需要が減った」からなのか。それともアメリカの言うように「為替操作」なのかは判らない。しかし中国側が、アメリカの批判を“無視”したことは明らかだ。

これまでの米中交渉で、アメリカは中国に対して「国有企業への補助金政策などを止めるよう」強く要請してきた。しかし中国にとって補助金政策は経済対策の要諦であり、絶対に放棄できない。このため中国側は、これに固執するトランプ政権との話し合いを断念したのではないか。そこで7月末に2か月ぶりに上海で開いた米中間の閣僚交渉でも、全く進展はみられなかった。

時を稼いで、来年11月の大統領選挙でトランプ氏が落選するのを待つ。習政権は秘かに、こういう基本姿勢に転じたのではないか。だからムキにならずに、時を稼ぐ。一方のトランプ陣営もそれを察知していて、「中国は組しやすい民主党の勝利を願っている」と、選挙戦のスローガンに使う。そして中国へは、圧力を強めざるをえない。その結果、世界経済を覆う黒雲は、しだいに濃さを増しながら長く停滞することになりそうだ。

       ≪16日の日経平均 = 上げ +13.16円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】   

最低賃金 901円 の功罪 (下)

2019-08-16 08:50:24 | 賃金
◇ むずかしい中小・零細企業の保護 = 東京都は1013円、鹿児島など15県は790円。今回の改定でも、最低賃金の差は223円もある。大都市と地方では物価や生活環境などが大きく違うから、格差を生じるのは当然という意見もある。しかし格差が大きいと、労働力の大都市集中はさらに進む。地方の自治体がそれを防ごうとして最低賃金を上げれば、こんどは中小・零細企業が人件費の増加に耐え切れなくなってしまうだろう。

すでに大都市との隣接地域では、大きな問題が起こっている。たとえば東京都の東村山市と埼玉県の所沢市は、歩いても15分ほどの距離。ところが東京都と埼玉県の最低賃金は87円も違う。放っておけばバイトやパートの働き手は、みんな東村山に行ってしまう。だから所沢市の企業や商店は、時給を東京都並みにしなければならなくなった。こんな例は全国いたるところで多発している。

バイトやパートなどの不正規雇用は、中小企業や零細企業に多い。たとえば最低賃金が27円上がると、1人当たりの人件費は年間5万4000円ほど増加することになる。10人を雇用していれば、年に54万円の出費増加。経営者にとっては、死活の問題だろう。仮に倒産が増えれば、失業者が増加する。現に韓国では、こうした現象が社会的に大きな問題となった。

このため政府は、中小・零細企業を対象に設備投資に補助金を出したり、減税するなどの対策を講じる方針だ。しかし、こうした保護政策が行きすぎると、生産性がきわめて低いゾンビ企業までが生き延びてしまう。そのうえ10月からは、消費増税の影響も絡み合ってくる。最低賃金の連続的な引き上げが、政府の思惑通り経済の好循環につながるかどうか。予断は許さない。

       ≪15日の日経平均 = 下げ -249.48円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

最低賃金 901円 の功罪 (上)

2019-08-15 07:54:37 | 賃金
◇ 賃金総額は2600億円の増加に = 今年度の最低賃金引き上げ額が決まった。厚生労働省の発表によると、引き上げ額の全国平均は27円。この結果、最低賃金は901円となり、前年度より3.1%上昇した。引き上げ率は、4年連続で3%を超えている。都道府県別にみると、最低賃金の最高は東京都の1013円、次いで神奈川県が1011円。最低は鹿児島県など15県の790円となっている。

最低賃金というのは、法律で義務付けられた最低の時給。労使双方の代表と学者で構成する委員会が、毎年いまごろ改定の目安を作成。それを基に、都道府県が引き上げ幅を決定する。たとえば最低賃金が1円上がったとすると、週40時間働いた場合は40円。今回は平均27円上がったので、一週間で1080円の増加になるわけだ。

過去の実績をみると、12-18年の6年間に最低賃金は125円上昇している。政府の試算によると、これによる賃金支払いの増加額は1兆2200億円。このうち9200億円が、消費支出につながったと考えられている。この試算をもとに今回のケースを推計すると、賃金支払いの増加額は約2600億円にのぼる。

安倍内閣は「賃金上昇→消費の増加→経済の拡大」という好循環を目指しており、できるだけ早く全国平均で1000円の最低賃金を実現したいと考えている。今回も2600億円の所得増加が期待できるわけで、その方向に一歩前進したと言えるだろう。しかし同時に企業の負担も2600億円増えることになる。特に中小企業の対応は、決して楽ではない。

                              (続きは明日)

       ≪14日の日経平均 = 上げ +199.69円≫

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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