蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

高齢者とクスリ  (bon)

2016-05-31 | 日々雑感、散策、旅行

  医師から処方された薬を飲み残してしまう いわゆる“残薬”への関心が高まっています。
75歳以上の高齢者の飲み残し分だけで年間約500億円に上るとの試算もあるといいますから
穏やかではありません。高額の医療費が無駄になるだけでなく、健康にさまざまな危険を及ぼし
かねない・・などの指摘があります。

 しかし、ここでは、これとは逆の発想で、如何に処方される薬を減らすか、特に、高齢者に対して
投薬が多すぎるとの見方で、何とか投薬を減らせないかの活動をされている医師の講演録から
拾い読みで、その要点をまとめてみました。

 

 先ごろ届きました会報に、『高齢者の賢い薬の飲み方・減らし方』と題した講演録(講演は、
昨年12月)が掲載されていました。講師先生は 秋下雅弘氏(東大病院老年病科教授・東大・医・
昭60)で、50歳半ばの まだお若いお医者さんですが、老年病科ということですから、日夜高齢者と
付き合っておられる、まさしくご専門のようです。

       平均寿命(青)と健康寿命(赤)(平成22年)
                (厚労省HPより)
 

 

 日本人は、長寿世界一ですが、健康寿命でも男性 70.42歳、女性 73.62歳で世界一です。
高齢者と一口に言っても、高齢になるほど個人差が広がり。たとえば要介護認定率でみれば、
65歳以上の“前期高齢者”では、4%に対して、75才以上の“後期高齢者”でのそれは、30%超で
あり、この10歳の差で急激に増加しています。 東大病院老年病科に入院した人では、薬物有害事象は
年齢が上がるほど増加し、後期高齢者ではなんと、15%にも上るとのことで、高齢になるほど
薬による副作用が発症しやすいといっています。これは、諸外国でも同様の報告がされていて、
“薬を飲む”ことに、もっと関心を払うべきだと指摘しています。 薬の副作用といえば、
アレルギー、薬疹、薬剤性肝障害、腎障害が上げられますが、高齢者の場合には、“薬の効き過ぎ” 
が多いと指摘されています。

 例えば、高血圧の人が降圧剤で血圧が下がりすぎたとの弊害から、2014年、日本高血圧学会の
治療ガイドラインでは、従来の治療対象の 140/90 以上の患者に対して、後期高齢者については、
150/90 未満とするなど改訂されています。 高齢者の場合、血圧を下げ過ぎると脳の血流が落ち、
脳の機能も落ちると推定されているからです。 また、同様のことが高齢者の糖尿病についても
いえるそうで、糖尿の薬で血糖値が下がり過ぎで意識を失ったとの例もあり、高齢者が病院に
搬送されるほどの低血糖を起こすと、認知症発症リスクは2倍になるといっています。 
 血糖値HbA1cに対して、2013年の国際糖尿病連合(IDF)のガイドラインでは、
従来のその管理基準を一律 6.5%以上としていたのに対して、高齢者一般は 7.5%未満、
健康状態にやや問題アリの高齢者は 8.0%未満、認知症患者などは、8.5%未満などと管理目標が
緩和されているのです。

 多くの高齢者は、慢性疾患を含む複数疾患を抱えているため、それだけ多くの診療科にかかる
ことになり、多くの薬を処方される結果となるのです。中には、長期服用の薬もあるかもしれません。
こうした多剤服用が薬の副作用の発生リスクを高めていることになるのです。しかも、高齢者の場合、
同じ疾患でも若い世代とは症状の発現が異なるため、誤診と誤投薬が多いとも述べています。

 例として、75歳の女性に見られた“歩行困難としびれ”の原因として、一つではなく次のような
たくさんの症状が考えられます。

   歩行困難とシビレの原因
        ・糖尿病性神経症    (糖尿病内科)
        ・閉塞性動脈硬化症   (血管外科、循環器内科)
        ・骨粗しょう症     (整形外科)
        ・脊柱管狭窄症     ( 〃  )
        ・抑うつ        (精神科)
        ・白内障        (眼科)
        ・糖尿病性網膜症    ( 〃 )
        ・廃用症候群      (リハビリ科)

 もし、彼女がこれら診療科すべてにかかったら、それぞれから大量の薬を処方され、大変なことに
なりかねません。 これらの症状全体を包括的に捉えて、“効果のある治療は施し、効果が無い
治療はしない”とするべきだと・・。

 面白い事例が上げられていました。 79歳の男性が妻に先立たれて一人暮らしをしていましたが、
息子夫婦と同居するようになって以降、具合が悪くなったというのです。 彼は、降圧剤を3種類
処方されていて、その内の1つは脈を遅くする作用がありましたが、一人暮らしの時は、飲み忘れが
幸いしていたのが、同居後は、息子夫婦がきちんと服薬管理をするようになった結果が薬が効き
過ぎた・・。

 高齢者は、“何とか薬で良くならないか?”と期待する傾向がありますが、これは薬漬けの
原因でもあると指摘し、高齢者が医師にかかる際、次のことを守ってほしいと述べられています。
①むやみに薬を欲しがらない   ②他院や他診療科で処方された薬を正確に伝える
③処方された薬はきちんと飲む ④薬を止めたい時や減らしたい時は、自己判断せず必ず医師に
相談する。

 

 私は、これまでたまに風邪などで、お医者にかかりますが、“お薬手帳”など面倒で持参した
ことがありませんでしたが、今後、お医者にご厄介になる時は必ずお薬手帳を持参するようにしたい
と思いました。

 

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする