今年は戌(イヌ)年で、先ごろ、1月4日から2月12日まで、鳥取県立博物館で企画展
「戌(いぬ)にまつわる植物」が、開かれていました。福岡市植物園でも今年の初めに、
イヌにちなんだ植物が紹介されていたようです。
植物の名前に「イヌ」がついた植物は、意外と多いようです。 身近な動物だから・・
とも思われますが、本物のワンちゃんにちなんだ名前よりも、そうではなく“にせもの”
とか“役に立たない” ということでつけられた名前のほうが多いようです。
にせもの、役に立たない・・などといえば、お犬様には大変失礼千万なことですが、
これは、「犬(イヌ)」ではなく「否(イナ)」がなまって「イヌ」に変化したのだと
ありました。 ワンちゃんにしてみれば、いい迷惑なことですが、だから、イヌとつく
植物の名前が多いのでしょうね。 つまり、似たような植物がたくさんあって、しかし、
本物とは違っている‥そんなとき、“イヌ〇〇”と名付けてしまうのかもしれませんね。
で、どのような植物があるかといえば、
本物の犬に似た部分を持つところから名づけられたもの
・イヌノハナヒゲ、オオイヌノハナヒゲ カヤツリグサ科、ミカヅキグサ属の多年草で
湿地に生えている、30~100㎝くらいのヒョロヒョロとした草だそうです。 犬の鬚に
似ているのでしょう。 仲間に コイヌノハナヒゲ、イトイヌノハナヒゲ、ミヤマイヌ
ノハナヒゲなど どれも似ていて区別しにくいそうです。
・イヌノフグリ、オオイヌノフグリ オオバコ科、クワガタソウ属の越年草、道端に
よく見かける雑草ですね。 イヌノフグリの果実が犬の陰嚢(フグリ)に似ているとこ
ろから、牧野富太郎博士が命名したとあります。 近年、外来種のオオイヌノフグリに
その生育地を奪われたそうで、環境省では絶滅危惧II類 (VU) に指定しているそうです。
オオイヌノフグリの果実はあまりフグリには似ていないそうです。
イヌノフグリ 花 実 (花と共にネット画像より)
・エノコログサ 狗尾草と書き、子犬のしっぽに似た形からその名がつけられています。
イネ科、エノコログサ属の一年草で、道端によく見かける雑草です。別名、ネコジャラ
シといえば、よくご存じのあの雑草ですね。 子犬のしっぽが猫じゃらしとは面白いで
すね。
似たような名前に、和名「イヌハッカ」と呼ばれている植物が、英名では猫が好む
香りのあるハッカという意味で「キャットミント」という名称で親しまれているとか。
一方、イナから変化してイヌと呼ばれている、にせもの、似たような、役に立たない・・
などの意味からつけられた植物は、以下のようにたくさんあります。
・イヌムギ ありふれた、どこにもあるイネ科の雑草です。一見麦みたいな穂先があり
ますが、全く違った、何の役にも立たない雑草です。南アメリカの帰化植物だそうです。
・イヌホオズキ ナス科、ナス属の雑草で、ホオズキやナスに似たところがあることから
名づけられていますが、何の役にも立たない 別名“バカナス”ともよばれているそうで
す。 日本全国に分布して、民家の庭先などに生えて家主を悩ませている雑草の一つだ
そうです。 花言葉は「嘘つき」とあり、どうも敬遠されているようです。
・イヌニンジン せり科のイヌニンジン属の一年草で毒草です。こちらも帰化植物だそ
うで、ハーブに似たところがあるが、毒があり食べられない。 葉っぱがニンジンのよう
でもあるところからこの名がついたと思われますが、セリのほうがより似た感じです。
イヌニンジンのほかに、同じせり科の有毒なドクニンジンというのがあるそうです。
・イヌサフラン イヌサフラン科の植物で、園芸種はコルチカムと呼ばれています。
サフランによく似た花が咲きますが、アヤメ科のサフランとは全く別の植物なんだそう
です。 トリカブトよりも毒性が強いといわれているようです。
イヌサフラン
(ネット画像より)
・イヌツゲ モチノキ科の植物の一種で、ツゲ科の柘植とは全くの別植物なのだそうです。
見た目には、小さな丸みを帯びた厚みのある葉が密集した低木で、ツゲみたいに見えます。
植え込みなどにはこちらのイヌツゲが多いかもしれないとありました。
イヌツゲ
(ネット画像より)
このほか、イナ(否)から転じたイヌの意味の植物はたくさんありました。
名前だけ列記してみます。
イヌタデ、イヌマキ、イヌガシ、イヌエンジュ、イヌシデ、イヌウメモドキ、イヌザクラ、
イヌショウマ、イヌリンゴ、イヌハギ・・などまだまだあるようです。